ハイスペックなイケメン主人公は、平凡なツンデレ幼馴染女子を溺愛する

軽井広💞キミの理想のメイドになる!12\

第1話 幼なじみに振られた

「菜穂、俺と付き合ってほしい」


 夕日の射す放課後の教室。俺の告白に、幼馴染の女の子は首を横に振った。


「何度も言ってるけど、わたしが公一と付き合うなんて、できないよ」


 綺麗な凛とした声で、容赦なくばっさりと断られる。

 まあ、予想はしていたことなのだけれど。


 教室にいるのは、俺の他には一人だけ。俺が告白した相手。つまり、幼馴染の神宮寺菜穂だ。幼稚園の頃から高校一年生の今日まで、家族ぐるみの付き合いがある。


 そして、俺は菜穂のことが大好きだった。


 菜穂の良い点はもちろん容姿だけじゃないけれど、容姿だけ取り上げてもとても可愛い。少し茶色に染めたショートカットの髪が雰囲気によく似合っている。


 制服のセーラー服もバッチリ似合っていて、スカート丈は短めだけれど、おしゃれの範囲内。中学の頃は清楚な雰囲気の女の子だったけれど、今は少しギャルっぽい雰囲気にイメチェンしたみたいで、正直、どちらも好みだ。


 というのを、全部、菜穂に口で言ってみた。

 菜穂は顔を真っ赤にして、その白い指先をびしっと俺に突きつける。


「ば、馬鹿じゃないの! お世辞を言っても意味ないんだから!」


「お世辞じゃなくて、本気で可愛いと思っているから付き合ってほしいんだけど」


「……っ! と、ともかく、わたしは公一と付き合うことはできないから。わたし、公一のこと、全然、好きじゃないもの」


「うーん。好きになってもらえるところ、たくさんあると思うんだけど、ダメかな?」


「たとえば?」


「自慢じゃないけど、俺は成績も学年上位。球技も陸上競技もスポーツ万能で、中学では野球部のエースで全国大会出場。手先も起用で絵も得意だし、雑学にも詳しい。あと見てくれも悪くないという保証付き。けっこういいところがあると思うんだけど」


「……公一って自信家だよね」


 菜穂がちょっと呆れたように言う。俺もわざと大げさに言ったところはある。ただ、自信家なのはそのとおりだ。

 俺は微笑む。


「実力相応の自信を持っているつもりだよ」


「幼なじみだから……公一にいいところがたくさんあるのは知ってる」


 菜穂は最後の方をとても小さな声で言った。

 俺はなるべくかっこいい(と自分が思っている)表情で笑みを浮かべた。


「そう。菜穂はいつでも俺のことを誰よりも理解してくれるよね。だから、俺は菜穂のことが好きなんだよ」


「公一……えっと、ほんとはわたしも……」


「だから、結婚しよう、菜穂」


「……するか! 公一のアホ! バカ! 変態! 女たらし!」


 菜穂は言葉の限りを尽くして俺を罵倒(?)すると、怒って教室から出て行ってしまった。

 俺は肩をすくめる。


「五回目の告白も失敗か」


 俺は机の上のカレンダーを眺める。最初に菜穂に告白したのは、中学三年生の2月。それから半年も経たない7月の今日まで、菜穂には五回告白して五回とも失敗した。


 まあ、今回も断られるとはわかっていたのだけれど、それでもショックはショックだ。

 もっとも、それでも俺は諦めるつもりはない。


 もちろん、菜穂が本当に俺を大嫌いなら別だけれど、なんやかんやで菜穂は俺と一緒にいてくれる。

 家ではわざわざ俺と交代で夕飯を作って、一緒に食べてくれる。学校でだって、放課後には二人きりの映画研究部で映画を二時間きっちり鑑賞していた。


 それに、「公一は優しいよね」なんて言って優しく笑って、ときどき俺に甘い表情を見せてくれる。

 最初、告白したときは断られるとは思わなかった。両思いだと思っていたし、周りの友人達も菜穂は俺を好きだと思っていたらしい。


 でも、結果は五回の告白で撃沈というのが現実だった。それでも、菜穂のそばにいられれば、俺は幸せなんだけれど。 


 教室の扉が開く。菜穂が戻ってきてくれた!と期待したら、入り口にいたのは別の女の子だった。


 銀色のロングヘアの清楚完璧な美少女だ。すらりと背が高い。


「冬見くんもこりないよねー」


 くすくす笑いながら彼女は言う。冬見、というのは俺のことだ。冬見公一が俺の名前。

 そして、目の前の美人は塩原詩音さん。俺のクラスメイトだ。


「盗み聞きとは聖女様らしくないね」


 俺がおどけて言うと、塩原さんは困ったように銀色の眉を上げる。


「その呼び方、やめてよー。私は聖女なんかじゃないよ」


 塩原さんは有名人だ。なにせクラスで一番可愛いし、銀髪碧眼のスウェーデン系美少女。


 俺も成績優秀な方だが、塩原さんはさらにその上を行く。おまけに品行方正で、人格も円満。名古屋の名門企業のご令嬢で、幼い頃から習っているピアノも天才的な腕前だとか。

 

 それでついたあだ名が「聖女様」というわけだ。多くの男子と女子は憧れをこめて、一部の女子はやっかみから、塩原さんを聖女様と呼びたがるわけだ。


 もっとも、本人はそのあだ名を苦手としているらしいけれど。


「それにしても、神宮寺さんも素直じゃないよね。本心では冬見くんのこと大好きなのに」


「そうだといいんだけどね」


「そうだよ。私だったらかっこよくて優しい冬見くんの告白を断ったりしないんだけどな」


「からかわないでよ。聖女様は、誰に告白されても決してなびかないんだよね?」


「あっ、また聖女様って呼んだ! まあ、冬見くんなら、いいけどね」

 

 塩原さんはふふっと笑った。

 

 聖女様は毎日のように男子から告白されているけれど、全部断っているみたいだ。だから、今のところ付き合っている彼氏は無し。

 どんなに魅力的なイケメンの先輩に告白されてもOKしないんだから、俺の告白も当然、断るだろう。


「まあ、万一、塩原さんに告白されても、俺には菜穂がいるから」


「あーあ、振られちゃった。神宮寺さんが羨ましい」

 

 塩原さんがいたずらっぽく青い瞳を輝かせた。お互い冗談で言っていると分かっているので気楽なもんだ。


 塩原さんは俺の友人である。俺たちは中高一貫校に通っていて、去年の中等部三年のころに親しくなった。


 塩原さんは常に大勢の男子から好意を向けられている。だから、逆に塩原さんは俺を信用できたのかもしれない。


 なにせ俺は菜穂にしか興味はないから、塩原さんを好きになる可能性はない。友達付き合いできる数少ない男子というわけだ。


 もちろん、塩原さんが俺を異性として意識することもない。そのはずだった。

 ところが、今日は少し雲行きが怪しかった。


「私は盗み聞きをしていたわけじゃなくてね。冬見くんに用事があったの」


「へえ。もしかして我らが映画研究部に入会届とか。それなら歓迎するけど」


 俺は軽口を叩いた。この教室は旧校舎の外れにあり、放課後は映画研究部の部室として使われている。

 といっても、映画研究部の部員は二人しかいない。俺と菜穂だ。


 昔は自主制作映画も撮っていたらしいけれど、今の活動内容はU-NEXTでひたすら映画を鑑賞するだけ。

 ちなみにここ数日で見たのは『ダイヤルMを廻せ』『ガス燈』『グランドホテル』。どれも半世紀以上前の映画だけど、俺も菜穂も古い洋画が大好きなのだ。


 こんな趣味を共有できる同年代の女子は、菜穂ぐらいだ。まあ、もともとは菜穂の趣味なのだけれど、俺も菜穂と一緒にいるうちにハマってしまった。


 とはいえ、他に部員が入るような活動内容ではない。かつて野球部のエースだった俺も、可愛く明るい菜穂も、事情があって、こんな変な部活に所属していた。


 ところが、塩原さんはちょっと恥ずかしそうにこくりとうなずいた。


「そう。入部届を持ってきたの」


 塩原さんは一枚の紙を差し出した。たしかにそれは入部届だった。

 俺は目を瞬かせた。いったい、どういう風の吹き回しだろう。


 塩原さんは帰宅部だが、ピアノの練習が忙しいはずだ。将来は音大に入ってピアニストになれるかもしれないぐらい、真剣に取り組んでいると聞いた。


 そんな塩原さんに、映画研究部で映画鑑賞に費やす時間はないはずだ。


「……理由を聞いてもいいかな?」


「きっと冬見くんは、私がこの部活に入りたい理由を想像できるよ」


 塩原さんはそう言って、少し顔を赤くした。






<あとがき>


幼なじみとの純愛ラブコメ新作です! あくまでメインヒロインは幼なじみ!


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<あとがき>

新作ラブコメ×ローファンを投稿中です!


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