32話 中谷朝日

みんなと解散した後、朝日がうちに泊まりにきている。


お母さんに報告する前に、朝日ちゃんはもちろんだけど、他の子もちゃんと幸せにするのよ!と言われたけど、この人はどこから情報を仕入れているんだろう…。


というか、四人と付き合うの肯定派だとは思わなかったよ…。



それはさておき、なぜ朝日が泊まりに来ているかと言うと、朝日にとっての思い入れのある場所がうちみたいで、みんなを待たせたら悪いからと言っていた。


うん…。


ということは、今日キスするんだよね…。


私が、すでに緊張していると、ベッドを背に隣で座っていた朝日が、私の肩に頭を寄せてくる。


「あのね…かずき…」


「う、うん?」


「今日はありがとね」


「ううん。お礼を言うのは私の方だよ…」


本当にそう思う…朝日とみんなのおかげで私の今があるんだから…。


「ちがうよ。私の方だよ…。だって私のせいでかずきをたくさん悩ませることになっちゃって…」


朝日はまだ最初の告白の時に言った、諦めないということを気にしているみたい。


「私が優柔不断だったからだよ…。それに、朝日とみんなのおかげで決めることが出来たし…。ほんとにありがとね」


「うん!これからみんなで幸せになろうね!」


「そうだね…!」


私は改めて思う。


みんなと幸せになりたい。


誰も悲しむことがないようにありたいと。



それから、しばらく二人で無言でいると朝日が言う。


「かずき…キス…しよっか…」


「う、うん…」


私はついにこの時がきたと思い、緊張しながらも二人で向き合った。


朝日と見つめ合う。


自分の胸の鼓動が早くなっているのがわかる。


顔が熱くなってくる。


朝日も緊張しているようで、頬を赤く染め、目が潤んでいる。


そんな、朝日は本当に色っぽくも、かわいくもあり、目が離せなくなる。


朝日の髪を撫でる。


すると、朝日が目をつぶる。


初めてのキスだったので勝手がわからなかったけど、とにかく優しくと考える。


私は朝日の肩と首に優しく手を当てると、自分の顔を近づける。


徐々に近づくにつれ、胸の鼓動が早くなる。


朝日も緊張しているようで、震えていた。


唇がつくまであと数センチ。


あと少し顔を動かせば唇と唇が重なるところで目をつぶる。


そして、顔を動かす。


すると、唇に気持ちの良い、柔らかい感触を感じる。


いつまでもこの感触を感じていたかったけど、唇を離す。


二人で見つめ合う。


「かずき…好きだよ…」


「朝日…私も好きだよ…」


お互いの気持ちを伝えると抱きしめ合った。


こうしてお互いのファーストキスを終わらせた。




「えへへ…初めてのキスしちゃったねぇ…」


「うん…しちゃったねぇ…」


二人でキスの余韻に浸っていると朝日が言った。


「かずきの唇…柔らかくて気持ちよかったなぁ」


そう言い自分の唇を指でなぞる朝日。


「あ、朝日!?やめてよぉ…」


私は朝日の感想を聞き照れながら、キスのことを思い出す。


朝日の唇も柔らかかったなぁ…と。


「あ!ねぇ…かずき…!」


「うん?」


私が朝日の方に顔を向けると朝日が、えいっ!とキスをする。


突然の不意打ちにドキドキしてしまう。


「えへへ…またしちゃった…」


「もー!びっくりするじゃん…!」


「あー!かずき赤くなってるー!」


「な、なってないよぉ…」


こうしていると、改めて朝日と恋人になったんだなぁ…と実感する。


キスはまだまだ恥ずかしかったけど、それ以上に嬉しかった。



それから、そろそろ寝る時間になり、ベッドに横になりながら朝日と話した。


「えへへ…かずきーかずきー」


「ちょ、ちょっと朝日!なにしてるの!?」


朝日が私の胸に顔を埋めてぐりぐりしている。


「んー?テスト期間で補充出来なかった、かずき成分の摂取〜」


なんか前にも聞いたような…。


「くすぐったいからやめてよぉ…」


「うりうり〜」


「あははははは…や、やめてぇ…」


「ぷは〜!補充完了〜!」


私はそのくすぐったさからやっと解放されると、息をはぁはぁ切らせていた。


「かずきもする〜?」


そう言いバンザイする朝日に恥ずかしさから背を向ける。


「し、しない!もう寝るよ!」


「かーずーきー!ごーめーんー!こっちむいてよー!」


「しらない!」


「むー…」


それから、朝日がなにも言わないので、いじけちゃったのかなと、様子を見ようと思っていたら…。


「かずき…好き」


突然耳元で、ささやかれ顔が赤くなってくる。


「かーずーきー…すーきー」


私が動かないでいるとさらに追い打ちをかけてきた。


「もぉ…やめてよぉ!」


私は耐えきれず朝日の方を向くと、顔になにか柔らかい感触を感じた。


朝日が、きゃっ…と声を出す。


私はわけがわかっていなかったけど、その声を聞き理解すると慌てた。


「ご、ご、ごめん…!」


「もー!かずきのえっちー!」


「ち、ちがうよ…そんなつもりじゃ…」


「触りたいなら言ってくれればいいのにー!」


ほらほらー!と自分の胸を近づけてくる。


「さ、触らないよ…!」


そう言いまた背中を向ける。


「先輩のは触ったくせにー!」


「あれは流れで…」


「ふん!いいよーだ!」


朝日がそう言い終わると、朝日も背中を向けるような音が聞こえる。


それから、無言だった為、気になり振り返ると、やっぱり背中を向けていたようで朝日に話しかけるけど、ふーんだ!と言いこちらを向いてくれない。


「嫌いになっちゃったの…?」


「なってないけど、ふーんだ!」


「えぇ…」


「後ろから、ぎゅってしてくれないと、ふーんだ!」


照れながらも、朝日のリクエストに応えると、こちらに身体を向け、えへへー!かずきー!と抱き返してくれる。


それがすごくかわいかった。


そしてそのまま、二人でキスをすると眠ることにした。



なんだか、朝日が前より甘えん坊になってる気がするけど気のせいだよね…。

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