28話
七日目、今日はカフェじゃなく夏海のお家で勉強することに。
現在は夏海と待ち合わせの約束をした場所で、夏海が来るのを待っている。
「かずっち…おまたせぇ…。遅れてごめんねぇ…」
「ううん。大丈夫だよ!」
それじゃあいこ…、と言う夏海はなんだか元気がなく心配になり聞いてみることにする。
「夏海、元気ないみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫だよぉ…。元気元気ー…」
そう言う夏海はやっぱり元気がなさそうだったけど、これ以上聞いてもなにも教えてもらえなかったので、とりあえず夏海のお家に向かった。
夏海のお家はマンションの一角で、中に入るとリビングにいた夏海のお母さんに挨拶をして、夏海のお部屋へと向かう。
ちなみにゆえちゃんがお昼寝中だった為、起こさないように静かに。
夏海のお部屋はかわいいぬいぐるみが、たくさん並べられており、まさしく女の子のお部屋だった。
「わぁ!かわいいぬいぐるみが、たくさんだねぇ!」
「えへへ…ぬいぐるみ好きなんだぁ…。ゆえのもあるんだけどねぇ…」
「そうなんだね!ゆえちゃんと同じお部屋なの?」
「ううん…部屋は別々だけど、置ききれなくなったのがねぇ…」
私は、なるほどねぇ!と返事をすると、やっぱり夏海はどこか元気がなかったので、質問する。
「夏海…ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だよぉ…。勉強しよー…」
うーん…。
ほんとに大丈夫かなぁ…。
心配だけど、とりあえず今は勉強をすることにした。
夏海は元気はなかったけど、ちゃんと集中し、勉強をしていた。
そして、時刻は15時頃。
夏海が突然立ち上がる。
私が驚いていると、ちょっとまっててね、と言って部屋の外に出ていく。
私は、急にどうしたんだろう、と思ったけど、考えてもなにもわからないので、とにかく待つことにした。
しばらくすると、戻ってきた夏海の手には大きなお皿に乗せられた、ホールのショートケーキがあった。
私はわけがわからず唖然としていると夏海がテーブルにケーキを置いて座る。
私は戸惑いながら質問をする。
「え?え?なに?誰かの誕生日!?でも、私は3月だし、夏海は9月だよね!?え?ゆえちゃん?」
「ちがうよー!これは勉強を教えてくれた、かずっちへの感謝の気持ち!」
笑顔で答える夏海はさらに続けた。
「ほんとはテストが終わったら二人で打ち上げして、お礼したかったけど、みんなとも打ち上げしたいからね!だから少し早いけどそのお礼だよ!」
夏海がケーキを切り分け私の前にお皿を置く。
「え…だって私…勉強…教えただけだよ…?」
私は夏海の気持ちが嬉しくて泣きそうになっていた。
「ううん。かずっちは勉強を教えるだけじゃなく、私にやる気を出させるためにご褒美まで用意してくれた。見捨てないで最後まで面倒を見てくれた。それがすごい嬉しかったよ。ほんとにありがとね!」
「そんな…そんなこと…こんな…私こそありがとうだよぉ…」
夏海の言葉を聞き、夏海の気持ちが嬉しくて、私はついに泣き出してしまう。
そんな夏海は私を優しく抱きしめると、泣き止むまで頭を撫でてくれていた。
私がやっと泣き止むと夏海が言う。
「昨日は買い物一緒に行ってくれるって言ってたの、断っちゃってごめんねぇ。ケーキの材料買いたかったからさぁ」
それを聞きケーキをよく見てみると、少し形が崩れていることに気づいた。
まさか、と思い聞いてみる。
「これって…もしかして…手作り…?」
「う、うん…。ゆえの誕生日で作った時よりは上手に出来たと思うけど…。あ、でも味は保証するよ!ゆえもおいしいって言ってたし!それに愛情もたっぷり入ってるからね!」
私がまた泣きそうになっていると夏海が続けた。
「実は今日元気なかったのは朝からケーキ作りしてて、寝不足だったからなんだ…。心配させちゃってごめんね…」
「ううん…いいよ。夏海ほんとにありがとね…」
夏海の気持ちが本当に嬉しかった。
そして、二人でケーキを食べる。
夏海の気持ちが込められたケーキはおいしく、私はゆえちゃんとお母さんの分を残し、ほとんど食べてしまった。
夏海が、太るよー!と言ってたけど、なにも聞こえなーい!
その後はまた勉強を再開して、夕方くらいに帰宅する。
これで、私達の大変な一週間は終わり。
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