第36話 休日の朝方にモーニングコールで起こしてきたのは(4)

「週明け学校行ったらクラスがどうなってるやら怖い感じがするよ」

 恐らくエリナの死は全員に知れ渡っているだろう。それに対してどんな反応があって教室はどんな空気に包まれるのか。そしてしょう子含めて日奈達の立場はどうなるのか、想像するだに頭が痛い。そこへ香言葉を挟む。

『エリナ……。なんで死んじゃったんだろうね』

 唐突にというべきかそれともいよいよそこへ踏み込んできたというべきか。ついにその言葉を彼女は口にした。

「そうだね、どうしてだろうね」

 でも私としても答えを持ち合わせてはいない。が、

『トーコは警察からなんか聞かされてる?』

 香は私の気持ちを知ってか知らずか踏み込んで聞いてきた。

「何かって、基本的には私が聞かれる方だったよ。香は違った訳?」

『私も知ってる事を答えただけ。でもさ、彼女、そこまで思い詰めるような事があったのかな』

『んー、どうだろうね』

 彼女の質問にも未だ曖昧に返してしまう。ただ香の口ぶりから察するに彼女はエリナの死を自殺だと考えているらしい。

『ねえ、エリナってさ。誰かとつきあってたりしたのかな。彼氏がいるとかってきいたことある?』

「わからないな。少なくとも私は聞いてないよ」

『じゃあさ、真田君と麻衣の事は聞いてる?』

『麻衣が真田君に告白しようとしたって話だよね。いや、昨日警察から聞かされたばかりだよ』

『そか、じゃあ大体は聞いてるんだね』

『まあ彼がエリナを好きになるのはわからないでもないよ』

『確かに、誰にでも好かれる人だったしね。でも、だからこそ好意を持っていても皆告白したり出来ない雰囲気だった』

 抜け駆けする形にもなるし、相手にされる可能性は低いからだ。

「そうだろうね。彼女は他人に垣根を作る事は無かったけど、特定の相手と親密な関係を築こうとはしてなかったからさ』

『うん。真田君だって本来はエリナに気持ちを伝えるつもりはなかったみたいなんだよ』

『でも、エリナに伝わっちゃった訳ね』

『それどころか麻衣がエリナに真田君をどう思ってるのか詰め寄る形になっちゃった」

 当然、エリナは別に何とも思ってないかった。ただ、その返答に麻衣はムカついた様だ。自分が好きな相手に好きな相手がいる。その相手であるエリナが彼には興味がないという事は喜ばしい……とはいかないのが乙女心の複雑さか。

 日奈達のグループはただでさえ、エリナに対してコンプレックスを抱いていた筈だ。明らかに自分よりも上の立場だと思ってすり寄った。

 そのエリナが真田君を何とも思ってないと言った。という事は、麻衣にとって自分が好きなものを否定された様な感覚になった訳のだろうか。

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