第14話 デート
「ヨウカは何が食べたい?」
「待ってください。くんくん、あっちです!あっちからいい匂いがします」
「行こうか」
俺とヨウカはファミレスの前にたどり着いた。
「行きましょう!」
ヨウカと一緒に店に入ると全員がヨウカを見た。
美人のコスプレ装備は目立つ。
席に案内されると、メニューを見せた。
「どれがいい?」
「絵を見ても分かりません……隣からいい匂いがします」
隣の席で食べているハンバーグセットか。
「ハンバーグセットな。甘いものと塩の効いたもの、どっちが食べたい?」
「どっちも食べたいです」
「適当に頼むか」
俺は店員さんを呼んだ。
「ハンバーグの和食セットと、ロースかつ膳、ミートソース、シーフードピザ、マロンケーキ、フルーツパフェ、フルーツあんみつ、クリームパンケーキをお願いします」
「他にもお客様が来られるのですか?」
「いえ、俺大食いなんです」
「……かしこまりました」
「う~ん、いい匂いがします」
「そうだな」
「ふふふ、こうやって二人でいるの。なんかいいですね」
「喜んでもらえそうで安心した。そう言えば、欲しい物はあるか?」
「お酒はありますか?」
「買って帰ろうか」
「はい!」
俺は魔道スマホを眺めた。
たくさんのメニューを頼んだから、会計を済ませれば残金は1万円を切るか。
酒を買うと金が無くなる、間に合うかな?
「やっぱりギルドに行って素材を売って、挨拶をしてから酒を買いに行こう」
「はい!」
メニューが運ばれてきた。
ヨウカは目の前に置かれたメニューを『おいひいです』と言って平らげていく。
ヨウカはかなり目立つ。
俺がロースかつ膳を食べているとヨウカがカツに目を向ける。
「美味しいですか?」
「食べてみるか?」
「食べさせてください」
そう言ってヨウカが口を開けた。
ヨウカにロースカツを食べさせる。
「美味しい、凄いです!こんなの初めてです!」
ヨウカはとにかく目立つ。
俺は落ち着かないままファミレスで食事を済ませた。
【ギルド】
俺はヨウカを外で待たせてギルドに入った。
「あら、お早いお帰りですね」
「ですね。素材の換金をお願いします」
俺は手加減して素材を出した。
「多く、無いですか?」
「一カ月以上遭難していましたから、1日換算に直すとそこまで多くは無いでしょう」
「それはそうですが、Fランクでこの量は多いですよ」
「自衛官の方が投げて渡してくれた武器を使いました。防御魔法を何度もかけて武器で斬れば考えられない数字ではないでしょう」
「う~ん、ですがFランクファイターが使っても攻撃力は」
「自衛官の武器は凄いんですよ!1発当てるだけでモンスターが黒い霧に変わるんです!」
「高ランク装備なら、ありえなくは、無いかも、です」
「そうなんですよ!モンスターに当てさえすれば倒せます!凄い武器ですよ、あれは」
「……仙道さん、後でランクアップ試験を受けて見ませんか?」
受付嬢がジト目で俺を見た。
「後で受けますね。ありがとうございます。入金の方は早めにお願いします。すぐに買い物に行く予定があるので」
「はい、出来るだけ早く決済を済ませますね。またのご利用をお待ちしております」
外に出るとヨウカが男に囲まれていた。
「いいじゃん!連絡先、教えててよ!」
「いえ、私は、あ、ユウヤさん、行きましょう!」
ヨウカが俺の腕に絡みついた。
「何?お前この子の彼女か?」
「横取りは良くないっしょ!」
俺は無視してヨウカをお姫様抱っこした。
そして手加減して走る。
話をしても無駄だ。
ヤンキーが追い付けず、それでいて目立たない速さで逃げた。
「逃げ切ったか」
ヨウカを下ろすと残念そうな表情を浮かべた。
「もっとして欲しいです」
「後でな、あかりに連絡してから買い物に行こう」
魔道スマホで連絡する。
すぐにつながった。
『もしもし』
『おにいちゃん!』
『あかり、俺、生きて帰ったから』
『うえええええええん!!』
『あかり?』
あかりが泣き止まない。
俺は落ち着くまで待った。
『今すぐに、会いたい』
『今どこだ?』
『学校だよ』
『……ですよね。今は学校があるか。今すぐ学校に行く』
俺は学校に向かった。
校舎に入る前にあかりが走って来る。
窓を見ると生徒が俺達を見つめる。
今授業中だと思うけど、皆窓に集まっている。
生徒のざわつく声がするが皆が話し始めて何を言っているのか分からない。
あかりが俺に抱きついた。
「お兄ちゃん!」
あかりが俺に抱きついた。
「よかったよ~。うえーん!」
「心配、かけたな」
先生が外に出てくる。
「無事だったか!お前!心配したんだぞ!もう駄目かと、ぐう!」
「心配をおかけしました。運よく、生きています。でも、色々あってしばらく休みます」
「そんな事は、どうでもいい、生きているなら、ぐう、ううううううううううう!」
あかりが泣き、先生が泣き、窓から俺達を見つめる生徒は様々な表情を浮かべる。
嫉妬の目を向ける者、感動する者、実に様々だ。
あかりが泣き止むと、俺の斜め後ろにいたヨウカに目を向けた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「誰?」
「ヨウカか?」
俺が名前で言った瞬間にあかりの機嫌が悪くなった。
「誰誰!誰なの!?」
「ユウヤさん、そろそろ行きましょう」
ヨウカが俺の腕を引っ張った。
ヨウカは満面の笑みを浮かべているが俺を引く力が強い。
「お兄ちゃん、その人誰!?」
「世話になった人だ。恩返しをしたい」
「行きましょう」
ヨウカが俺にの後ろに抱きついた。
早くおんぶしてあっちに行こうと言っているように感じた。
その圧力を感じる
「今修行中でもあるんだ。落ち着いたらまた連絡する!じゃあな!」
俺は手加減して走り去る。
「お兄ちゃん!速くなってる!」
俺は走ってスーパーマーケットに向かった。
「これはぶどう酒ですか?」
「ワイン、そうなるな」
ヨウカはお酒を真剣に見つめる。
もう1時間は経っている。
あかりから何度もメッセージが届いたが、気づかない振りをした。
後で謝ろう。
「ヨウカ、安い酒は全部買おう」
素材の入金は終わり、魔道スマホを見ると100万円以上入金されている。
「え?いいんですか!?」
「いろいろ買ってみないと分からないだろ?」
「ありがとうございます!」
「それと、食料を大量に買い込む」
俺はレジの会計を済ませて生活魔法で収納し、また買い物かごに入れてレジを済ませる作業を10回以上繰り返した。
店員さんは俺をちらちら見ているしヨウカも目立つ。
異界で食べ物が無くなり死にかけた。
飢えるより恥ずかしい方がマシだ。
死ぬ事に比べれば、周りの目は大したことが無いのだ。
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