貧乏高校生の成り上がり探索者~あの運命の出会いから俺の人生が変わった
柊オレオン
第1章
第1話 運命の出会い
遥か昔、突如として現れた聳え立つ大穴は世界すべての人々の目に止まった。
その塔は『ダンジョン』と呼ばれ、黄金の
「稼がないとー」
俺の名前は
今年高校に進学した見習い探索者。
今の時代、高校生になると同時に
いわゆる小銭稼ぎに近いかもしれない。
歳にして15歳を迎えると
適正検査をサラッとやるだけで取得でき、15歳以上であれば誰でも取得する権利がある。
そう、スキルのない俺でも取得できるのだから。
「はぁはぁはぁはぁ」
暗い洞窟の中、俺はがむしゃらに走る。
後ろから聞こえてくる足音。
「こっちにきやがれぇ!」
強がり丸出しな声が洞窟内で響き渡る。
後ろをちらっと覗くと、右手に西洋風の剣を携え、頭には甲冑をかぶっている。
「ぎゃぎゃぎゃぁぁ!!」
コボルトだ。
数は3匹、なりたての探索者でも、問題なく倒せる低レベルの魔物だ。
そう、俺を除いて。
しばらく、コボルトから逃げ回ると、俺は瞬時に足を止めて、身体の正面をコボルトに向ける。
すると、コボルトも足を止め、周囲を警戒する素振りを見せる。
きっと、罠を疑ったのだろう。
「そう簡単にはうまくいかないよな」
コボルトは足場を気にしながら、こちらに近づいてくる。
(ちっ、罠を警戒するとか、頭がいいことで)
するとコボルトが不自然なでこぼこの地面に気づくと、こちらを見ながら、醜悪な表情を浮かべた。
「ぎゃははぁぁぁぁ!!」
突如として、不快な声で叫びながら、不自然な地面をよけて、俺に向かって走り出した。
すると。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
スッとコボルト3匹の姿が消えた。
「引っかかったな。あんなわかりやすい罠を張るわけないだろ!」
俺はわざと不自然に設置した罠を作り、逆の道に誘導。
誘導した道に本命の落とし穴という誰でも作れる画期的な罠を張ったわけだ。
「このまま順調なら今年の学費は払えそうだな」
俺がなぜ、誰でも簡単に倒せるコボルトに苦戦しているのか、それは俺がスキル『なし』だからだ。
そもそも、俺が
もちろん、命にかかわるので、遊び半分で行くのはどうかと思うけど、そう思ってダンジョンにもぐってしまうのには理由がきちんとある。
それがスキルという超人的な力だ。
スキルは一人につき、一つまでが常識。
これで分かったと思うけど、スキルという力はコボルトなんて簡単に倒せてしまうわけだ。
なんなら、ダンジョンの5層までだったら、スキルを鍛えなくても、戦えてしまう。
今の世の中は、どれだけ強力なスキルを持っているかで、決まる縦社会なのだ。
そんな世界の中で俺は。
「スキル『なし』……」
スキルは
だけど、その時俺は受け取ることができなかった。
本来なら、有り得ない話だ。
なぜなら、今までスキルが貰えないという前例がなかったからだ。
「本当に世の中理不尽だよな」
でも、スキルがないからと言ってクヨクヨしている場合ではない。
俺にはお金が必要だ。
高校に通うとための学費に妹の学費。
だから、俺は今、命がけで
スキルがないなら、ないなりに頭を使って戦うしかないのだ。
「おっ!今日の魔石は大きいな。高く売れそう」
魔物は魔石という輝かしい宝石を落とし、それはもうめちゃくちゃに高く売れる。
大体相場だとコボルトで5万から10万ぐらいだ。
この金額は学生からしたら、かなりの金額だし、高レベルの
もうわかるだろうけど、
これがまた、夢があるというもの。
まぁ、スキルのない俺には関係のない話だが。
「よし、これで全部だな」
落とし穴に落ちたコボルトの魔石を回収した俺は、ダンジョンの出口へと向かう。
ここはまだダンジョンの1層、いわゆる初心者が来る
この区域に生息している魔物は主にコボルト、たまにジャイアントコボルトが出現するらしいが、その確率は極めて低い。
「コボルトの魔石でこれだけ稼げるんだ。本当に探索者って儲けれる仕事だよな。俺ももし、スキルを持っていたら……なんてな」
そんな、もしもなんて言葉を
「なっ、なんだ!?」
とても大きな足音、その音の分厚さから、かなり大きな魔物だと、容易に推測できる。
目先の奥、影で見えない部分から、うっすらと、足が見えた。
「あ、あ……う、うそでしょ」
全長は4メートル以上あり、右手には大きな
「ぎゃごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ダンジョンに轟く叫び声、それをを聞くだけ、腰が抜けそうになる。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなぎゃ)
それで頭がいっぱいになり、ジャイアントコボルトと視線を合わせる。
俺は、逃げることを最優先に考え、すぐさまに走り出すが、後ろをチラッと見ると、追いかけて来る様子はない。
(不自然だ、嫌な予感がする)
「ぐるるるるるる」
牙を剝き出す前のような表情。
体が震えあがり悪寒が走った。その瞬間、俺の体が今すぐに逃げろと叫んでいるの感覚的に感じ取る。
「え?」
ジャイアントコボルトの姿勢。
それは追いかけるではなく、
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
大きな
それは、直感的によけられない速さだと分かる。
考える時間すら与えず、
が、気のせいかもしれない。
一瞬、風が通り過ぎたなんて。
すると棍棒が一刀両断されるのを目の前で見た。
そして目を何回か瞬きすると、次に視界に映ったのは、ジャイアントコボルトの胴体が両断されている姿。
俺は、何が起きたのか、理解することが出来なかった。
腰が抜け、地面に尻餅をつくと、ほっとしたのかそのまま、倒れこんだ。
「はははは」
腑抜けた笑い声しか出なかった。
(生きている)
その実感が、体の体温の熱で感じる。
「トントントントン」と軽い足音。
「だ、大丈夫ですか?」
視界に絶世の美女だけが飛び込んでくる。
学生服を着た細身の体。
右手に持つレイピアの先端には血が滴っている。
銀のように輝く腰まで伸びた銀髪は、女神を思わせた。
俺を覗く瞳の色は銀色と灰色が混じりあったような色。
「あ……」
銀髪をなびかせ、右手に持つ冷たい冷気を漂わせるレイピアをもつ
最少年でレベル・6に到達した
【冷徹】
「き、聞こえてますか?」
呆然としてしまう。
彼女の剣技、それは美しく、まるで一人静かに舞うお姫様のようだった。
この気持ちは何だろう。
そう自分に問いかける。
しかし、答えは返ってこない。
けど、胸の心音が異常なまでに高鳴っているのが分かる。
この気持ちをどう表せばいいのか、分からない。
駆け巡る思考の末に、辿り着いた結論。
それは。
『すげぇ』
の一言だった。
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