第34話 2-16


 温かい湯船になみなみと入ったお湯に、アタシとチヒロは浸かっていた。

 アタシの体の上にチヒロが乗って、そのまま温まっている。

 チヒロの背中がアタシの胸に、彼女のお尻がアタシの太ももに当たって、あー、いい触感ねー。

 お湯も気持ちいいし。太陽系にいる頃はシャワーばかりだったけど、お風呂もいいじゃん。そう思えてくる。

 こればかりはグライシア-Ccの寒さに感謝ねー。

 それにしても。

「アタシが入っているところに入ってくるなんて~。なんでよ~」

 アタシがちょっと困った声で問いかけると、

「だって、サーティの裸を見たくなったから。サーティと一つになりたかったから」

 そうチヒロは恥ずかしそうな声で応えた。

 そんな理由で。って。

「アタシの裸を見たくなったって、なんていう破廉恥な……!」

「ごめんなさい。でも、悪い気はしないでしょ? こうして二人でいるんだから」

「そうだけど~」

 嫌な思いはしていないと言うか、どこかでこういうことになることを期待していた様な気もしていたから、今こんな風になっているんだけど~。

 なんだか面倒くさい娘ね、チヒロって。

 でも、そこが可愛い。

 二人だけの時間。

 アタシ達はホログラフィックスクリーンでAC達が作り出したTV番組をのんびりと観ていた。

 情報世界内に作り出された名所などをめぐりながら、風景を眺めたりご飯を食べたりするバラエティ番組だ。

 AC達が旅をしながら、他愛のない話をしている。

「アタシ達も、こんな風に旅ができたらいいのにね~」

「アルカちゃんからこの惑星にも色々と名所を見つけたと聞きましたし、あの虫達がいなくなればそういうところにも行けるようになるんじゃないですか?」

「えー、そのためにはアタシは殺虫活動頑張らなきゃいけないじゃーん」

「頑張ったご褒美だと思えば良いんですよ」

「そうなのかなあ~?」

「そうですよ」

 なんだか丸め込まれたような気もする。

 さて。

「さて。体も温まったし、体洗いましょ」

 と言うか、ちょっとチヒロの体、重い気がする。

 と思っていたら。

「あたしの体、重いんですか? いいですよ。出ましょう」

 チヒロにそう言われて、彼女は浴槽から上がっていった。

 えっ、心読まれている?

「そ、そんなわけないよ~」

 あたしは口で言いながら後を追う。

 カイジュウのように風呂から出ると、水面が嵐のように揺れた。

 風呂から出たアタシ達は向かい合った。

 まるでボクシングの試合のように顔を近づけたアタシ達はお互いの体を見合う。

 アタシはお互いの体を上から下まで隅から隅まで見やる。

 その中で、特に相手の胸に注視する。

 アタシの胸は自慢するわけじゃないけどおっきいとは思う。

 でも、チヒロの胸は……。

 アタシ達はしばらく見合っていたけど。

 やがて。

 チヒロの口の間から、一言漏れた。

「くっ」

 勝った! これもひとえに、毎日ミルクと肉を食べているせいね!

 と思っていたら。

 チヒロが顔を背け、グスンと、声を漏らした。

 あっ、あらっ? な、なんか泣かしちゃった?

 思わず困ってしまって、しゃがんで彼女の顔を覗き込む。

 すると。

「嘘ですよ」

 そう言って彼女は両手でアタシの胸を鷲掴みにした。

 そして、そのまま胸をもみしだく。

 ち、ちょっ!

 胸が痛いっ!

「やめ、て!」

 思わず声が漏れてしまう。

 なにか反撃をと思いつつ、自分もチヒロの両腕の上側から自分の腕を相手の胸に入れて触れて揉みしだく。

「ぐっ」

 チヒロの歯の間から声が漏れる。

 しかし思ったより効いてない?

 というかチヒロの胸揉みが強すぎてっ。

 ついにアタシは音を上げた。

「やめやめやめてギブアップ~!」

 アタシが腕を離すと、チヒロも揉みしだくのを止めて、

「あたしの勝ちっ」

 笑顔でそう言って、くるりと振り向く。

 胸を抑えながら何をするのかと思っていたら、彼女はシャワーヘッドを手にして水栓をひねり、シャワーヘッドから温かい湯を出した。そのままアタシに熱湯を浴びせる。

 ちょっ、何!

 思わず目を閉じてしまう。

「サーティ、可愛い」

 チヒロはあたしに構わずお湯を上から下に浴びせる。

 特に、女の子の大事なところを念入りに。

 あ、ちょっと、やめて~。

 か、感じちゃう~!

 抗うにも抗いきれない感じでいたら、突然熱湯が止まった。

 え、え?

 アタシが戸惑いながらうっすらと目を開けると、今度はチヒロは横を向き、何かを手にして何かを始めた。

 それは、ボディーソープをタオルに擦り付ける行為だった。

 その行為をし終えるとチヒロはこちらを向き、満面の笑みで、

「じゃあ洗っちゃおうかな」

 そう言ってタオルをアタシの体につけ、こすり始めた。

 泡立ったボディーソープに染まった白色のタオルがアタシの体をこすると、なぜかアタシの女性的な悦びがムクムクと湧き上がる。

「あっ、いやっ、やっ、やめて」

 思わず声を上げてしまう。

 その声を聞いたチヒロが、じゃあやめる? とちょっと不安そうな表情で聞いてきたけど、ううん、嫌なわけじゃないの、わかってるでしょ。そんな事を思いながら、

「ううん、続けて」

 アタシは応える。するとチヒロは両目を細めて、

「じゃあ、続けるわね」

 そんなちょっと気持ちよさそうな意地悪な表情になって、また体をこすり始める。

 体、胸、右腕、右手、左腕、左手、右足、左足、そして背中、尻。

 タオルで強くこすられるたびに、アタシは強く感じてしまって、体が震えてしまう。

 そして、残るは。

 アタシの局所だけになった。

 チヒロがアタシの目の前でしゃがむと、ふふん、とまたちょっと意地悪そうな顔になって、

「じゃ、ここ、洗うわよ」

 そう言って大事なところをにタオルを触れ、洗った。

 その瞬間、そこから脳天に電流が走った。

「ひゃんっ!」

 次の瞬間、アタシの視界は真っ白になった。


「……ティさんっ、サーティさんっ」

 アタシが目を開けると、目の前全面ににチヒロの心配そうな表情があった。

 背中に感触がある。

「アタシは」

「あそこを洗ったらサーティさんが気絶しちゃったんですよ。あたし倒れる前に抱きかかえて」

「そっか……」

 アタシ、イッちゃったのね。

「ごめんごめん。あたしもびっくりしちゃったよ~」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。ほら」

 言いながら起き上がる。全身まだ泡だらけだ。

「ごめんなさい。あたし、サーティがそんなにあそこが弱いこと知らなかったので」

「良いってことよ。じゃ、体洗って」

 良いわけないんだけどね本当は。

 アタシが立ち上がると、チヒロも立ち上がり、もう一度シャワーヘッドを手にしてお湯を出す。

 そして、今度は慎重にお湯をアタシの体にかける。

 あらら。そんなに慎重にしなくてもいいのに。

 こういう時、日本のことわざではなんていうんだっけ。検索、検索っ。

 そうそう、『羹に懲りて膾を吹く』ね。

 弱いのはあそこだけなんだから、体は別にいいのよ、もうっ。

 アタシはシャワーを体に優しくかけるチヒロの姿を、生暖かく見守るのであった。

 しかし。やられたからには、やるしか、ないわよね。

 ふふっ。


 その後アタシはめちゃくちゃチヒロにお返しをした。

 その様子は、一言でいうと、「もう、だめぇ……」と息も絶え絶えに浴室の床に座り込んだチヒロの姿をご覧になれば、おわかりいただけるでしょうね~。えへっ。


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