毎月300字小説企画参加作品(2023年~)

虚影庵

いざ出陣(第26回 お題「誘う」)

 「お困りかな?」

 振り返ると、案の定にやにやと笑う男がいた。

 「困ってなんか」

 「パートナー同伴でないと入れないのを知らずに来て、焦ってると思ったが違ったか」

 それじゃ、と離れていきそうな男をつかまえる。

 「誘ったのはアンタなんだから責任持ちなさいよっ」

 「俺は情報渡しただけだ」

 「がっつりタキシード着てきてそれ言う?」

 中に入るためには、この男を協力させるしかない。

 「報酬は稼ぎの四割でどう?」

 「五割、だな」

 「……………了解」

 にやにや笑ったままの男が私をエスコートするのに歯がみしながら入口へと向かった。

 そこは富裕層相手のカジノ。腕利きのディーラー相手にイカサマを仕掛けに行く。

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