旅人切手と星蜜カフェラテ
「珀、旅人切手ある?」
依頼品であるポーションの瓶詰作業をしている僕に向けて溟の声が飛んできた。作業の手を止めて扉の方を振り返り返事をする。
「ある、ちょっと待って」
雑多に瓶を並べた棚の一番下のドアを開け、本型の缶を取り出した。その辺りで手紙を片手に持った溟が部屋に入って来た。
「どこまで?」
「鉱物時計の町までだよ」
缶の中を漁って鉱物時計の町が描かれた旅人切手を探す。旅人切手は住所と名前を書いた手紙へ貼り付けると、手紙が鳥の形に変わり描かれた場所まで飛んで行ってくれる便利なものだ。近場なら家の窓からそのまま出せるし、遠くの町へ出すなら郵便屋さんに持って行って護りの魔法をかけて貰うのがいい。鉱物時計の町までの旅人切手は最後の一枚で、沢山の旅人切手の中から見つけるのに手間取ってしまった。また買い足さないといけない。
「はいどうぞ」
「ありがと」
溟は宙の靑で染めた封筒に切手を貼って出来たと嬉しそうに掲げて眺めた。鉱物時計の町は名前の通り鉱物から作る時計で有名な町。確か溟の友達が住んでいた筈なので、相手はその人だろう。
「郵便屋さんとこ行ってくる」
「ついでに近くの喫茶店から星蜜カフェラテ二つ買ってきて」
「あ!限定のやつだね、わかった!」
手紙の他にスマートフォンと財布を持った溟は元気にいってきますと言って部屋を出て行った。星蜜カフェラテを頼んだ事だし、帰って来たら2人でホットケーキを食べたい。おやつをするには良い時間だ。そう思ってコートハンガーに引っ掛けていたエプロンを手に取ってキッチンへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます