やんごとなき愛情

かわら なお

 

「死ねばいいのよ あんたなんか‼‼」

「ごめんなさい いなくならないで」

「殺してやる」

「あいしてるわ」

「だから


夢を見た

私がまだ乙女だった頃の

あの人に無邪気に駆け寄った

幸せだった

あの子が生まれるまでは


わかっていた

あの子が何も悪くないことも

あの人のせいなのも

だけど


私はあの人を愛していた

あの人といられれば幸せだった

あの人の隣に立てなくてもあの人と一緒にいたかった

そばにいたかった

でも


あの人は酒乱だった

あの人はタバコを吸う人だった

あの人はだらしがなかった

あの人は子供が嫌いだった

あの人は私だけを愛していた

あの人は


だから私はあの子を連れて逃げたのだ

あの人がいないところに

あの人に見つからないように

あの人から守れるように


でもだんだんと苦しくなって

辛くなって

何もかもがあの子のせいな気がして

あの子がいなければ

私はあの人と一緒にいられたのに

私は幸せなままでいれたのに

私はこんなに苦しまずにすんだのに


「だから もう終わりにしましょう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る