5分だけ

香崎 莉愛

5分だけ

「私たち、もう終わりにしよう。」

空から大粒の雨が降り注ぐ中、私は冷え切った部屋で、そう呟いた。1人で練習をした後、大きなため息を零す。

指先に力が入る。

スマホを強く握りしめた後、見慣れたトーク画面が目に入る。

背景には、今の状態に似合わないあの頃の二人の影。

トークを見返せば、少しずつ変わっていった二人の関係が。溝が。よくわかった。


本当は、ずっと前から気付いていた。

私たちはもうずっと前から限界だった。

君との幸せな思い出はどれも遠い過去の話だ。

君の頑張っている姿が好きだった。

君の夢を追いかける姿勢が好きだった。

君の堂々とした立ち振る舞いが好きだった。

私の前では無邪気に笑う姿が好きだった。

子供のような好奇心旺盛なところが好きだった。


でも、いつからか、君は頑張ることを辞めてしまった。

周りの「あたりまえ」に呑まれて、

「自分」を信じなくなった。

「夢」を忘れてしまった。

それは確かに正しい選択なのかもしれない。

でも、私にはそんな君の姿を見るのが少し辛かった。

そんな君が私はどうしても許せなかった。

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