第45話「異界トイレ」

「…え?渚ちゃん入りたいの?」


オカルト部の部室で渚ちゃんも来ていたので理由がわかった


「うん。私は霊感ないけど、いつも助けてくれたじゃない?恩返しをしたいんだ」


恩返ししたいからって入部希望かあ…


「別にいいわよ」


え?妙子ちゃんは即決で言った


「本当ですか!ありがとうございます!」


「良かったな!渚!」


既にメンバーに入っている美優ちゃんは喜んでいう


「ただし…美優もそうだけど渚は絶対前に出ないように。後、何かのオカルトがあるなら私たちに報告すること。それが条件よ」


「わかりました!ルールを守ります!」


渚ちゃんは用意された机と椅子でぺこりとお辞儀する


「…となるとこの部、6人になるの?しかもカップルだらけ?凄いことじゃない」


「はい。仲間がこれほど増えて思いも寄らず、ですね」


雅先輩と桃子先輩がいう


「とりあえず…無理するなよ?アタシは前に公衆電話から変なの来たからな」


「私だって呪術が来たり霊のストーカーがあったり人間に襲われそうになったから十分なホラー経験してるよ」


そこが危ないんだよなあ…と私は思った


「渚は今後美優と同じく情報を集めてほしいわ。もちろん無理はせず。特に貴女はVチューバーだからそういう噂を集めるの得意そうだし」


そうだ。渚ちゃんVチューバーやってたんだ。覚えてたのに忘れてた


「任せてください先輩!リスナーさんに聞いてみます!ちょっとした方向転換ってことでやってみますね!」


笑顔で言う渚ちゃんだ


「いや~。アタシだけじゃ情報集めるの難しいかな~って思ってたんす!渚がいれば十分ですよ!」


これまた笑顔で言う美優ちゃん


「情報収集…私なんか何も情報がないまま呪物のゲーム買って大変なことになったからねえ」


その話聞いた。妙子ちゃんめちゃくちゃ怒ったらしいし


「わたくしなんて線路歩いたら『者』に出くわして危なかったですから…」


それも聞いた。塩が無かったら最悪なことになっただろう


「私も異世界エレベーターなんかやろうとしたら本当に大変だったです…」


そう。私もやらかしている。みんなある程度はやらかしている部分はある


ここまで来ると本当に危ない経験をしてないのは普段から冷静な妙子ちゃんのみ。除霊する者として完璧なのだろう


ふと、渚ちゃんを見るとスマホで何かをしていた。会話アプリだろうか?


「どうした渚?」


「うん。私と同じVチューバー仲間で何かオカルトないってメッセージ送ったんだ」


「…ということはここらへんの話、かしら?」


私たちは近辺は結構除霊したりほっといたりしてる箇所はある


「えーと…この学園の近くのトイレに使用してない女子トイレの個室があってそれは異界トイレなんて呼ばれる…ですって」


…なによそれ


「なにそれ?トイレの花子さんの違うバージョン?」


「例えばそこに子供がいたずら目的で入ろうとすると消えてしまう…という場所みたいです」


私が前にやってしまった異世界エレベーターと変わらないことだろうか


そう思っていると妙子ちゃんは考える。お、その考えるしぐさが凄いかっこいい


「その噂が本当なら…ウチらでも危険というのがわかるわ。それのせいで行方不明になるのは正直まずいわね」


「対処法、ありますか?」


桃子先輩が言うと、妙子ちゃんは立ち上がる


「…行ってみないとわからないわ」



私たちは早速そのトイレへと向かう


近場の公園だった。まだ夕焼けではないので子供が遊んでいる


ざっと見た感じ何も感じない公園だ。だが、妙子ちゃんは既に臨戦態勢と言っていい顔をしていた


「えーと。そのトイレは…あった!」


奥に進むとそれらしきトイレが見つかった。これが異界トイレ?


もちろんそこは女子トイレ。男性ではない。障害者用トイレもあったが関係ないだろう


女子トイレに入ると公園独特のにおいがする。そこは我慢しよう


そして億の個室トイレに張り紙があり『使用禁止』と書かれている


「ここからどうやってこのトイレに入るのかしら」


雅先輩は不思議に思う


「…子供だからね。かくれんぼしてこのトイレに入ってしまったのでしょう」


妙子ちゃんはいつの間にか水晶玉を用意してかざした。すると光ったわ


「光っている。まさか霊がいるんじゃ…!?」


「まさかの地縛霊の可能性が高いわ」


またかあ…地縛霊多いね


「行方不明になってしまった子供いるのですね」


「どうする妙子ちゃん?これは塩や聖水では意味ないかも?」


妙子ちゃんは何も思わずカバンから取り出した。それは前に見たものだ


「ホーリーキャンドルだ」


「前に言ったでしょ?地縛霊はこれが効くって。だからこれを置けば呪いが解除されて吸い込まれる危険はないかもしれないわ」


マッチをすり、蠟燭に火を灯してトイレの隙間に置いた。これでいいのか?


「あとは…待ってみましょう。地縛霊のいたずらならこれでいいわ」


妙子ちゃんは私の方向に向いた


「さ、終わり。公園で遊ぼうかしら?」


こうして本当に効果があるか疑問だが終えた。でも除霊蠟燭だけど効くのかなあ…?




家族でごはんを食べていたらニュースがあった。それは、紛れもなく今日行った公園のことだった


夕方過ぎに大人が散歩したらちょっとした森に子供3人は倒れていたのを発見した


大人は警察と救急車を呼ぶ。警察は発見した大人の事情を聴き、子供たちは病院に行った


子供は気絶していたが、命に別状はなかった。まだ寝ているが今後回復してから話を聞いてみるとのことだった


まさかあの異界トイレ、除霊蠟燭が効いて、閉じこもっていた子供ではないだろうか?


私たちが無理に入ろうとしたらきっとあの異界トイレに取り込まれていたのでは?


更に詳しく見てると行方不明になって捜査願いを出していた子供だったという


妙子ちゃんの力が無かったら、きっとあの子たちはずっと閉じこもったままなのだろう



良かった。除霊蠟燭が効いて…


親御さんも安心しただろう…



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