第16話 再び帝都へ
「アリア、ありがとう。」
セイレーン公爵は、迷宮から戻ってきたアリア達を水精宮殿の謁見の間で立って出迎えた。謁見の間には、文官達と、セイレーンの防衛を担当する武官だけが残っていた。
「父上、武官の皆様は?」
アリア達は、最悪の事態を想定して、覚悟した。
「ハハハハ。心配せずとも良い。魔王も討伐し、各軍反撃の出兵をしていったわ。」
「そうですか、よかったです。」
アリア達は安堵した顔をした。
「皆のおかげだ。そうそう、ソーラレイって誰が出したのだ?」
「アレックスがそればかり引いてました。」
「悲しかったです。すみません。引いたのは即-ソーラー・レイって書いてありましたが。」
アレックスは、申し訳なさそうにしていると、
「いや、ソーラレイのお陰で、魔王軍や、敵軍を駆逐できた。本当にありがとう。」
セイレーン公爵が深々と頭を下げたのに、アリア達は驚いた。
「「「「え?」」」」
「なに?ソーラレイって何か知らなかったのか?」
「太陽光?」
アレックスが、ボケた様な受け答えをすると、
「まぁ、太陽光だが、太陽の光を集めて照射するものだ。」
「暖かいだけでは?」
アリア様がそんな感想をいうと、スノーは、アリアの方をみて、
「そうか、うーんと、アリア、太陽の光を集めて照射すれば、木を燃やすことができるの知ってるわよね。」
「うん、まあ、」
「そんな光が大規模に降り注げば、人も悪魔も、地面さえも燃え尽きるでしょう。」
「えっ、そんな強力なるの?」
「なるの。」
スノーの言葉に、アリア様はびっくりしていた。
「そうだ。1筋の巨大な光で、バルザック王国軍を飲み込んで全滅させた。各方向で光の柱が見えていたから、どこまで壊滅させてか分からないが、少なくても、魔王以外の悪魔を全滅させたのは、アレックス君、君の功績だ。」
「えっ、あっ、ありがとうございます。」
アレックスは、公爵に誉められ、ドギマギしていた、アレックスとしては、全部外れくじを引いて凹んで帰ってきたので、複雑な心境だった。
「それと、勝手だが、アクアクランの下部組織を勝手に使わせて貰っている。武器、馬車、道路敷設、魔導具等だ。各前線まで高速馬車を走らせながら、簡易的に真っ直ぐな道をドンドン轢かせている。フル規格で無いから、狭いが、とにかく早く轢ける。魔導具師達が頑張り、轢くための魔導具も進化し、効率も良くなった。馬車もドンドン効率的になっていっている。預かった魔石はほぼ使い切ったが、各国攻略までは何とかならそうだ。」
「それは、父上。」
「費用は、どうにか払うよ。」
「いや、費用のことは、最終的に調整すれば良いこと。スノーはともかく、アレックスは、無茶は言わないでしょう。」
「アリア、私も無茶は言いませんよ~。」
「スノー。」
アリアに対し、場所をわきまえずすごい剣幕で怒るスノーに、涼しい声で、アリアが言うと、スノーがキョロキョロし赤面した。
「申し訳ございません。」
「ガハハハハ。ありがとう。」
公爵が大声で笑い、和やかな空気に変わったところで、秘書官が、公爵に小さな声で合図をした
「閣下。」
「そうだな。アリア、スノー、アレックス、ロッシ。4名に頼みがある。まずは、ロシュフォール王子。」
「はい。」
そう言うと、脇の扉が開きロシュフォール王子が入ってきた。
「ロッシュ先輩?」
アリアは、急に入ってきたロシュフォール王子にびっくりしてしまい、呆けた顔を見せた。
「アリア、ロシュフォール王子は、お前に恩を返す為に、この戦場に援軍として来てくれたんだ。」
「えっ。」
「お前の婚約者候補の中でもロシュフォール王子だけだ。援軍に来てくれたのは。」
公爵の言葉に、アリアはの顔は少し引き締まった、言葉の中に含むものを感じ取ったからだろう、セイレーン公爵家の外から見える状況を正確に理解し、お祖父様の存在で、決まった婚約者候補達が、その重しが無くなった瞬間にどう行動したかも・・・。政治的な婚約者候補であり、仕方がないことであるが。それに対し、ロッシュ先輩が、援軍として命を懸けてこの戦場まで馳せ参じてくれたことに、信頼感と、人としての誠実さを感じた。
「いえ、閣下、私は受けた恩を。」
「その心意気と、カインと一緒に魔王討伐に向かってくれた男気をかっている。戦後落ち着いてからになるが、ロシュフォール王子を第一候補として考えさせてもらって良いか?アリア。」
「はい。父上に任せますわ。」
公爵は、恥ずかしがっているロシュフォール王子と、心を決めたアリアを見てほのかに笑みを浮かべた。
「わかった。それで、本題だ。アリア、お前の元婚約者、バルザック王国のベイスターン王子を捕らえた。どうしたい?」
アリアは、一瞬考えた、将来の夫として思っていた男であり、公衆の面前での婚約破棄をやった男の処遇である。単なる戦争なら、捕虜の取り扱いに一定のルールがあるが、悪魔を使った侵略行為に対する処遇である。どの様な拷問も、処刑も許されるであろう。
「五体満足なんですか?」
「いや、五体は満足だが、生殖能力が低下している。」
「そうですか。では、イフリート公爵令嬢にお返ししましょうか?」
アリアが、笑顔でそう答えたことに、一同びっくりした。憎き侵略者でもあり、公開処刑か、拷問をおこなうものかと思っていた。
「「「「何?」」」」
「人質なので、幾許かの金に替えたらどうかと。あの男には、それだけの価値しか無いかと。」
「そっ、そうか。バルザック王国を落とす前の方が価値があるだろうな。アリア達4人には帝都に、行ってもらおうと思っていたが、ベイスターン王子も連れていって貰えるか。もちろん、ロシュフォール王子達とも一緒に。」
「はい。わかりましたわ。で、帝都では?」
「イフリート公爵家は、この戦で敗れたと知った時に、何をしでかすかわからない。帝都の戦力を増強しておきたい。高速馬車道は復旧しているはずだ、一緒に一部隊を連れて行ってくれ。」
「はい、わかりましたわ。」
アリアが、4人を代表して答えると、アレックスが、少し考えた、公爵の前に出た。
「アレックス、如何した?」
「閣下、帝都に、他にも何人か同行させてよろしいでしょうか?」
「構わん。どちらにしろ、この高速馬車道は、アレックスお前が築いたものだ、儂が何か言うものではない。あと、お主らの魔導具師達が、イヤリング型の携帯用の連絡魔導具を作った、各軍には持たせたが、帝都の端から端くらいまでは連絡可能らしい、ガイアス殿下にも届けてくれ。他にも面白そうな魔導具が量産されているらしく、材料が足りないと叫んでいたぞ。皆工房にいるはずだから、寄っていってやってくれ。」
「はっ。」
アレックスが、頭をさげると、公爵は、満足そうな笑みを浮かべた。
「では、無事にいってこい。帝都をよろしくな。」
アリア達が、翌朝帝都に出発した。・・・・その2日後、帝都で大規模の破壊とクーデターが起きた。
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