第14話 反撃の狼煙

「何、空中から、魔物が、」


 空には、巨大な魔物が浮かんでおり、翼の生えた悪魔達が運んでいる。昨日、全ての砦を一気に壊された。想定より早く、防衛の準備が完了する前で、一気にやられた感じだ。首脳陣としては、内壁の結界と、砲台が最終ラインと定めて、戦略を立てているので致命的ではないが、想定外のスピードで、攻略されて頭を抱えているところだ。現在の防衛ラインである外壁部はとにかく長い為、戦力が分散し、砲台移動用のレーンは用意しているが、集めるには若干の時間がかかる。今飛んでくる魔物を撃ち落とすのは間に合わない。


「中級火魔法 烈火弾」


 俺が放った魔法は、高く飛んでいる魔物には届かなかった。魔物はそのまま俺の上を通過し、外壁の内側に落とされた。外壁の内側、外壁と内壁の間は、外街と呼ばれている。工房や、近郊農業、集合商会、集合住宅等が立ち並んでいる。現在市民は一切居らず、内壁に避難しており、いるのは騎士、兵士、冒険者、役人くらいなものだ。俺は落とされ暴れている魔物を見て、敗戦を覚悟した。


 騎士達がそんな気持ちの中、暴れ回っている魔物を城壁の上で見守っていると、激しい金属音と共に、大量の砲台が集まってきた。


 砲台が揃って、砲撃の準備が出来た時には、騎士達が魔物と戦いを始めたが、魔物は多分ランクが高いベヒモス、下級騎士が最近身につけた中級魔法では倒せない相手だ。騎士達は暴れ回って街が崩壊するのを抑えつつ、身を守る為距離をとって戦っていた。


「おお」


 大きな声を聞き、ふと振り返り壁の外側を見ると、無数の大きな魔物が、空飛ぶ魔物に運ばれて近づいて来ていた。騎士達からしたらこの世の終わりに見えたのだろう、普段冷静な者たちを砲台手にしていたが、冷静さを失い指示を待たずに砲撃を始めた。


 光の砲弾が、空飛ぶ魔物を撃ち、持っていた巨大な魔獣を、一緒に抱えていた空飛ぶ魔物は支えきれず巻き込みながら落としていく、砲台から絶えず砲弾が飛び出し、巨大な魔物を次々と落としていくと、轟音と共に巨大な砂煙が立ち上がっていく。どんどん視界が不良になっていくと、やがて撃ち漏らして、外壁と目と鼻の先まで近づき、


 ドーン


 近くの外壁に巨大な魔物が墜落し、外壁が崩壊していった。俺たちは必至で、防戦を繰り返していったが、その崩れた外壁から魔物の侵入を許してしまった。


「もうダメだー!」


 誰かがそう叫んだ時、上空から一人の男が降りてきた。そして一瞬にして数十体の魔物を切り刻んでいった。


「大丈夫ですか?」


 男はそういうと、剣を鞘に納めた。気づくと、その男の周りには多くの戦士が並んでいた。


「カイン・・・・」


 そう、彼は、白き薔薇団のカインと、白き薔薇団の精鋭だった。白き薔薇団が防衛に加わったことで、何とか踏みとどまっていくものの、巨大な魔物達に防戦一方となり、ジリジリと前線が下がっていき、夕方には、内壁近くまで押し下げられ、外壁には大きな通り道が複数出来上がっていた。俺達の被害も大きかったが、敵の被害も大きかったらしく、魔物達は一時撤退し、俺達は、態勢を整える為に、内壁の場内に戻っていった。




 翌日は、魔物達が継続的に攻撃を続いていたが、本格的な交戦でなく、俺達の体力を奪うための戦いの様であった。そんな中、十数騎の天馬に乗った騎士達が、内壁になだれ込んできた。


「ベルファースト王国王子ロシュフォールです。公爵閣下へのお取次ぎを・・・。」


 最も気品高いイケメン騎士が、叫ぶと、上級騎士達が、武器を預かり、場内へ連れていった。公爵の謁見の間は、戦前と変わらず、落ち着いた様相を示し、公爵閣下は、鎧を着こまず、ザ貴族と思わせる服装だった。


「ベルファースト王国王子ロシュフォールです。」

「アリアの婚約者候補殿か?如何した。アリアは、今ダンジョンを潜っている。そろそろ出てきてもいい頃なのだがな。」

「いえ、アリアさんにお会いしに来たのではありません。」

「ではなんと・・・。」


 公爵は、ロシュフォールを興味深めに睨んだ


「我が国は、アリア様に救われました。父が対応に当たっていますが、御恩を報いる為、アリア様に加勢に参りました。父に男として、命をかけ、ベルファースト王国のプライドを見せてこいと、部下と、天馬を預かり参りました。戦列に加えて下さい。」

「そうであるか・・・・。かたじけない。」


 そう言って、ロシュフォール達も戦列に加わった。


「でだ、どうするか?」

「閣下、」

「カインか・・・。」


 カインが、公爵の前に出ると、膝を立て、頭を下げた。


「閣下、敵の大将の暗殺許可を。」

「暗殺だと・・・。対象の魔王には、通常の武器は効かないのでは?」

「そうですが、実は・・・。実は、アリア様達から受け取った武器は、魔王に効く素材でできていることが分かりました。」

「なに・・・。」

「アリア様には、迷宮に魔王に効く武器があって、詳細を話していないのですが、鍛冶師に聞いたところ、有効な武器でした・・・・。」

「なんと・・・・。アリアは、無駄に、命の危険を冒して・・・。」


 公爵は茫然自失となっていた。


「閣下、ですので、暗殺を・・・。」

「だめじゃ・・・。そもそも・・・・少し時間をくれ」


 そう言って、公爵は、一旦下がった。それを見たカインは


「閣下すみません。」


 そう言って、カイン達クラン精鋭メンバーは、アリア達から受け取った武具を装備し、夜の暗闇に紛れて魔王討伐に向かった。魔王軍はそこここで宴を開いており、本陣が分からなかった為、カイン達、一番大きな宴の場所を、パイソン達は、僅かに光が見える砦に向かった。


 パイソン達が向かった砦には、殆ど兵士がいなかった、パイソン達が、一気に砦に乗り込み、兵士や悪魔達を切り裂きながら、上へ、上へ、砦主の寝室まで入り、扉をぶち破った。その部屋では、一人の若者と、二人の女性が裸で寝ていた。


「な・・・。」


 扉を突き破った音で起きたが、3人ともに腰を抜かし動けないでいた。


「外れか・・・。」


 パイソンがそうつぶやくと、一緒に乗り込んだ冒険者達は、男を捕まえるためにベッドへ駆け寄った。一人の冒険者が剣で男に切りつけると、横に寝ていた裸の女を盾にして、防いだ。盾にされた女は、斜めに真っ二つに切り捨てられた。


「何て男だ。」


 一瞬、冒険者が唖然となると、男は立ち上がり、逃げようとして、もう一人の女を、押し付けてきた。冒険者は、一閃でその女を切り捨て、男に切りつけた、男は、体をそらし、剣戟を必死で避けたものの、大きくなっていた急所をスパッと切り捨てられ、その痛みで、男は気絶してしまった。とりあえず情報を聞く為、唯一生き残った男の、傷口を魔法で閉じて出血を抑え、猿轡を付け、体を縄で縛り、砦の倉庫の台車に乗せた。その時、砦の周りは、光の柱で囲まれた。

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