世界が凍りついたから異世界に逃げ込もうと思う。〜天才科学者による並行異世界、同時最速救済プラン〜

千八軒@瞑想中(´-ω-`)

神域の大森林編

序 世界の終わり

「地球オワタ」


 俺は呆然ぼうぜんと呟いた。

 モニタに示されるのは、避けようもないコースを描いた太陽系外から飛来した小天体。

 いわゆる巨大隕石だ。


 かつては地上で繁栄を極めていた恐竜たちを滅ぼしたそれ。

 その時は米国のユカタン半島に墜ちたらしい。

 

 だけど、6600万年ぶりに飛来した直径10km越えの隕石の衝突予定地はアジアの端。つまり日本だった。



「Oh,MyGOD!」

「aaaaaaahhhhh! Help! Help me!」

「さようなら、お母さん。僕は地球を守れませんでした……」



 米国と連携してことに当たっていた日本のぼう宇宙開発機構の対策室の中は阿鼻叫喚あびきょうかんだった。


 全人類の希望を載せて放った核弾頭入りのロケットは見事大外れ。

 宇宙の彼方に飛び去ってしまった。第二射を撃ち込む時間はもう無い。


 仮に間に合ったとしても、もう近すぎた。

 破壊された破片が燃え尽きないのだ。


 やれたとしても、爆発で粉砕された隕石の破片が雨あられと地球に降り注ぎ、広範囲で致命的な破壊が訪れるだけだ。


「ヘイ、フミナ……。今までありがとう。君の仕事はもう終わりだ。あと24時間以内に地球は滅ぶ。残された時間、家族や恋人と過ごすといい」


 ブルース・ウィリスにそっくりな、プロジェクトの総責任者エドワードが俺に言う。彼も今すぐ家族の元に戻って一緒に過ごすという。


 嘆いていた他のスタッフも、次々に姿を消した。


 手を振り、握手をし、名残惜しそうに解散する。

 みんな、避けられない終末を受け入れた穏やかな笑顔をしていた。



 そしてがらんどうになった対策室内。





「――え、ちょっと待ってくれ」


 なぜ、そんなにあっさり諦めるんだ?


「待てよ……俺、家族も親しい人も、ましてや恋人なんていないんだけど……」


 俺の周りはいつも知らない人ばかりだった。

 幼い頃から【千年に一度の大天才】と褒められ、言われるままに海外の大学で学び、飛び級であっさり卒業。日本に帰ってきた後は、研究所で宇宙開発に携わった。


 日々大人に混じって、議論を交わしていて、年相応の人生なんて送ってなかった。


 家族だってそう。

 父さんと母さんにあたる人は、小さい時に死んでしまった。

 それからは、さっき去っていったエドワードが後見人だった。


 だからこの終末、一緒に過ごす友達も、家族も、恋人もいるわけない。




 俺の名は草薙史名くさなぎふみな。18歳。

 千年に一度の天才と呼ばれた、宇宙物理学のホープ。


 でもそんな肩書、滅亡する寸前の地球でなんだっていうんだ?

 

「う、うああああああ!! まだ死にたくない! こんなところで、終わるのは嫌だぁぁああ!!」


 魂の咆哮は無人のモニタルームに空虚に響くのだった。


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