初めまして、死神です

凪都

初めまして、死神です

「初めまして、死神です。あなたの命を頂きにきました」

 


 そんな耳を疑うような言葉を発したのは、私よりも頭一つ小さい女の子。タチの悪い冗談は止めてくれと、私は取り落としたバケツを拾いながら彼女を睨み付ける。

 


「ふざけてるの?」

 

「いえ、冗談じゃないですよ。あなたがもうじき死ぬことはもう決まっていますから」



 彼女はそう言うと、コートのポケットから一枚の紙を取り出した。いや、それは紙というには材質が違うような気がして……何だろう? 黒い色をした半透明な何かだ。その表面には赤い文字で『池田唯奈』と書かれている。



「ほらね?これあなたの名前でしょう?」

 

「っ、……あんまりおかしなこと言ってると警察に通報しますよ」



 私がそう言っても彼女は全く動じないどころか、楽しそうな笑みを浮かべるだけだ。


 

「まぁ、信じてもらえなくてもいいんですけどね。信じなくたってあなたはどうせすぐに死にますし」

 

「なっ……」



 その無礼な態度に怒りを覚えて言い返そうとしたところで、私の身体に異変が起きた。急に頭ががんがんと打ち付けるように痛くなったかと思うと、目の前が白んでまっすぐ立てなくなる。



「……ごめんなさい。さっき少しだけ嘘をついちゃいました」



 蹲って苦しむ私の耳元で、彼女は楽し気に囁いた。



「死ぬんじゃなくて、私が死なせるんです……あなたのことが好きだから」



 その言葉を最後に、私は意識を失った。

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