第266話 明るいとすごく楽


 俺達は明るくなった洞窟を進んでいた。

 かなり明るいため、昨日とは印象が変わっている。


「明るいだけで歩きやすいわね」

「そうですね。昨日はこけそうでちょっと怖かったですけど、今日は大丈夫です」


 ナナポンは奥を透視しないといけないから特にだろう。


「これならラフィンスカルが出てきても……出たよ……」


 遠目にだが、何かが浮いている。


「エレノアさん、ラフィンスカルです」


 目の良いナナポンが教えてくれる。


「ここで待ってなさい」


 そう言うと、剣を取り出し、駆けていく。

 そして、青い目を光らせながら笑っているラフィンスカルを一瞬にして両断した。

 当然、ドロップ品である骨が落ちるが隅っこに蹴り飛ばす。


 その場で待っていると、3人がやってきた。


「あんた、足が速すぎ」

「ものすごいスピードで駆けていきましたね」

「師匠は足も速いんですね」


 かけっこは自信がある。

 というか、身体を動かすこと自体は好きだし、得意なのだ。

 頭は……ね?


「行くわよ……あれ?」

「エレノアさん、あそこにもいます」

「死になさいっ!」


 俺は再び、走り出すと、バカにしているように笑っているラフィンスカルを両断した。

 その後も進んでいき、何体かのラフィンスカルを倒すと、広間の前までやってきた。

 ここまでかかった時間は昨日よりもかなり短い。

 やはり明るいと進みやすく、進むスピードも上がるのだ。


「広間も明るいわね」


 クレアが広間を見渡しながらつぶやく。


「そういう魔法なんでしょ。ナナカさん、どれがサンドドラゴン?」


 広間は広いが、そこら中に怪しい巨石がある。


「……全部です」


 は?


「もう一回言って」

「見えている巨石は全部サンドドラゴンです」


 えーっと…………


「10匹はいるわね」


 多くね?


「正確には11匹です。数えました」


 マジか……


「一匹ずつ倒していけるかしら?」

「一匹と戦闘になったら他も起きるのでは?」


 確かに……

 俺とクレアだけならともかく、ナナポンとリディアちゃんがいるから乱戦は避けたい。


「どうしよう……イチかバチかそーっと行ってみる?」

「昔、何かの漫画で見ましたけど、そういう場合、大抵は広間のど真ん中で一斉に起きるんですよ」


 うーん、俺も何の漫画かは覚えていないが、そういうシーンを見たことがある気がする。


「エレノア、別に広間で戦わなくてもここまで誘導すればいいのよ。通路は狭いから一匹ずつしか来れないし、一本道だから囲まれることもないわ」


 なるほど。

 クレア、賢い。


「よし、リディアちゃん、あの岩に向かって撃ちなさい」

「えーっと、こうですかね?」


 リディアちゃんがマシンガンを構える。


「知らない。適当でいいわよ」

「あのー、エアガンって使えるんですか? 銃は使えませんよね?」


 俺が即答すると、ナナポンが首を傾げた。

 フロンティアはバカな錬金術師のせいで重火器が使えない。

 でも、エアガンって重火器か?

 おもちゃじゃない?


「まあ、やってみなさい」

「えーっと……こうかな?」


 リディアちゃんがマシンガンを構え、巨石を狙う。


「ちょっと待ちなさい」


 クレアがそう言うと、リディアちゃんに近づいた。


「……こうよ。あと脇は閉める……そう、そんな感じ」


 元軍人のクレアが指導をすると、迷彩服を着ているリディアちゃんがそれっぽく見えてきた。


「いけます?」

「ええ。撃っていいわ」


 クレアが頷くと、リディアちゃんが引き金を引く。

 すると、乾いた連続音が響き、BB弾が飛び出してきた。

 リディアちゃんが放った銃弾は何発か巨石に当たり、跳ね返る。


「当たった!」


 リディアちゃんは嬉しそうに巨石を指差した。

 すると、巨石がわずかに動く。


「良かったわね。下がりなさい」


 そう言うと、リディアちゃんが俺の後ろに下がり、それと同時にわずかに動いて巨石が大きく開き、トカゲへと姿を変えた。

 どうやらトカゲはアルマジロやダンゴムシのように丸まっていたようだ。


「確かに大きいわ。コモドオオトカゲってあんなのかしら?」


 トカゲは嫌いではないが、こいつは一つもかわいくない。


「エレノア、動きは遅いけど、噛みつきは強力だから気を付けて」


 クレアがアドバイスをくれる。


「他は? 魔法を使ってくるとか、特殊な技術はない?」

「ないわ。擬態以外はトロいトカゲよ」


 じゃあ、問題ない。

 俺の敵ではないだろう。


「エレノアさん、良くないお知らせが……」


 今度はナナポンが声をかけてきた。


「どうしたの?」

「他の擬態しているトカゲも目を開けました」


 寝ていたのが起きたか……


「クレア、2人を頼んだわよ」

「あんたはどうするの?」

「全部、片付ける」


 そう言いながらフードから剣を取り出す。


「一人?」

「久しぶりに運動がしたいの。最近、暑くて外に出られないし」

「どっちみち、出てないじゃないの」


 沖田君は出られるんだなー。

 もちろん、そんなことは言わないけど。


「あ、師匠、他の岩も動き出し始めましたよ」


 リディアちゃんが言うように岩がもぞもぞと動いている。

 完全にこっちを認識し、襲いにくる気だ。


「待つのも面倒だし、片付けてあげましょう」


 そう言って、この場をクレアに任せ、駆けだした。





――――――――――――

明日も投稿します。

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