第124話 渋谷ギルドへ
カエデちゃんと実験をした後は2人で冬物の服を買いに出かけた。
カエデちゃんが可愛らしい服を買っていたので俺も服を買った。
俺用ではなく、エレノアさん用だけどね。
例によって、カエデちゃんが選んでくれた。
エレノアさんは秋物の服しか持ってないので冬物も買ったのだが、正直、俺の部屋のクローゼットは沖田君用の服よりエレノアさん用の服の方が多くなってしまっている。
男は服をそこまでの量を持たないものだと思うが、女は本当に色んなものがいるっぽい。
実にめんどくさいと思った。
少々、疲れた買い物を終えたこの日は買い物から帰った後、2人でまったりと過ごした。
そして、翌日、この日は渋谷支部に行かないといけない日である。
俺はさすがに黒ローブはマズいかもと思い、昨日買った白のセーターと茶色のロングスカート履くことにした。
別に俺が謝罪をするわけではないが、さすがに黒ローブはふざけている気がするし、ちゃんとした格好で行った方が良いと思ったのだ。
俺は髪を結び、早めの昼食を食べ終えると、昼すぎには家を出発した。
そして、練馬駅でタクシーに乗り込むと、渋谷のギルドに向かう。
タクシーに乗り込み、3、40分程度が経過すると、目的地である渋谷ギルドに到着した。
俺はタクシーから降りると、渋谷ギルドを見る。
ギルドは池袋のギルドと同様にでかでかと【冒険者ギルド 渋谷支部】という看板があるビルだった。
だが、入口には警備員が2人ほど立っている。
池袋の警備員は裏にしかいない事を考えると、それだけ渋谷支部は人が多いんだろうと思った。
俺は警備員に会釈をしながら渋谷支部に入っていく。
ギルドに入ると、そこは池袋支部と同様に受付があるロビーだった。
ただし、池袋よりも広いうえ、受付の数も多い。
また、受付を見る限り、女性しかいない。
あの子達が元グラビアアイドルやらなんやらのきれいどころってやつかね?
しかし、人が多いなー……
ロビーには池袋では考えられないくらいに人がおり、皆、受付に並ばずに座ったり、立って待っていた。
俺はその光景を見て、入口近くにある機械を見る。
機械には張り紙がされており、『御用の方は順番にお呼びしますので、ボタンを押して番号札をお取りください』と書いてあった。
人が多いからこういうシステムなわけか……
いや、これが普通なんだ。
池袋ギルドで感覚がマヒしてるわ。
俺は機械のボタンを押し、番号が書かれた紙を取ると、どこか座れるところはないだろうかと空のソファーを探す。
だが、空いているところはなかった。
しゃーない……
立って待とう。
俺は空いている壁の方に行き、呼び出しを待つことにした。
そして、その間にスマホを見ながら周囲の冒険者を観察する。
皆、俺と同様に順番を待つ者だろう。
これから冒険をするのか、冒険を終え、清算待ちなのかはわからない。
特出すべき点は人が多いのだが、女性が1人もいない事だ。
この場にいるのは俺と受付嬢を除けば、若い冒険者もベテランっぽい冒険者も全員が男である。
マジで男ばっかだな……
俺がスマホを見ながら周囲を見ていると、何人かと目が合った。
多分、向こうもこっちを気にしているのだろう。
まあ、自分で言うのもなんだが、紅一点だし、有名な魔女がギルドにいれば、注目もする。
とはいえ、声をかけてくる様子はない。
それは俺が不人気というわけでも怖いというわけでもなく、きっと渋谷支部長が通達をしているからだ。
きっとそうだろう。
別に声をかけられることを期待していたわけではないし、これで問題はない。
ただ、不自然にスマホを取り出すのはやめてほしい。
盗撮はさすがにしないだろうが、多分、ネットに書き込んでるだろう。
だって、さっきより明らかにスマホを弄っている人間が増えているんだもん。
俺は帰りに人が多くなってたら嫌だなーと思いながらスマホに目を落とし、命の結晶について、再度、調べ始めた。
そのまましばらく待っていると、俺の番号が呼ばれたため、スマホをカバンにしまい、呼ばれた受付に向かう。
「46番のお客様でしょうか?」
受付で座っている女性にそう聞かれたため、俺は番号が書かれた紙を提出する。
その際、受付嬢を見たが、確かにきれいな子だった。
胸も大きいうえに、胸元のボタンが外れている。
これだと、かがんだ時に見えそうだ。
さすがは噂の渋谷支部だわ。
どれが元グラビアアイドルなのかはわからないが、すげー。
「はい、確かに……どういったご用件でしょうか?」
受付の番号を確認した受付嬢は俺を見上げてくる。
「エレノアと言います。本日、ここで人と会う約束をしていますので支部長さんに取り次いでください」
「かしこまりました。少々、お待ちください」
受付嬢はそう言って、立ち上がると、奥に行ってしまった。
俺はそんな受付嬢の後ろ姿を見る。
スカートがすげー短いし……
ここ、やべーな。
もし、俺が冒険者を始める際、ここの存在を知っていたらここ一択だっただろう。
だが、その場合、カエデちゃんとは再会していない。
あの受付嬢レベルの子と俺が付き合えるとは思えないし、カエデちゃんで正解だろうな。
カエデちゃんもかわいいし、レベルはめちゃくちゃ高いのだが、そこは大学の先輩後輩という大きなアドバンテージがあるから上手くいった。
やはり池袋ギルドを選んだ俺は正しかったのだ。
俺が内心でうんうんと頷いていると、さっきの受付嬢が受付を抜け、ロビーに出てきた。
そして、俺のもとにやってくる。
「お待たせしました。先方は応接室でお待ちしておりますので2階の応接室に案内させていただきます。こちらです」
俺はそう言われたので受付嬢についていくと、受付嬢が近くの階段を昇り始める
……………………パンツ見えてるし。
「その格好で階段はやめた方が良いわよ」
俺も今は女なので思わず、苦言を呈してしまった。
「これも給料に含まれております。エレノア様は女性ですので言いますが、見せても良いやつですので問題ありません」
いや、見せてもいいやつだろうが、ダメなやつだろうが、男から見たら価値は一緒だ。
まあ、本人がいいなからいいのだろう。
多分、給料も相当、もらっていると思うし。
「女性冒険者っている?」
「1割にも届きません、入ってもすぐに移籍されますね」
だろうね。
誰かが渋谷支部は下品と言っていた理由がわかった。
ここはわかりやすい男の世界なのだ。
俺が男の状態で来たかったなーと思っていると、階段を昇り終えた。
すると、受付嬢がすぐ近くの扉の前に立つ。
「エレノア様、こちらになります、中には支部長と長岡様がお待ちです」
長岡?
ああ、あの子の苗字ね。
そういえば、名前すら聞いてなかったわ。
まあいいか。
「わかった。ありがとうね」
「いえ」
受付嬢は首を振ると、扉の方を向く。
すると、扉をノックした。
「支部長、エレノア様をお連れしました」
「おう! 入ってくれ!」
中から野太い声が聞こえる。
まあ、支部長さんだろう。
「どうぞ。私はここで失礼します」
「どうも」
俺は受付嬢に別れを告げると、扉を開け、中に入る。
部屋の中は大きな窓ガラスから光が差し込む部屋だった。
観葉植物も置いてあり、清潔な部屋である。
中央にはテーブルを囲むように2人掛けソファーが4脚ほど置いてあり、ガタイの良いおっさんとスーツ姿でピシッと決めたおっさんが座っていた。
2人は俺が入ると、同時に立ち上がる。
そして、スーツのおっさんが俺に向かって深く頭を下げ、ガタイの良いおっさんが俺のもとにやってきた。
「エレノアだな?」
ガタイの良いおっさんは俺のもとにやってくると、俺を見下ろしながら聞いてくる。
でかいな、こいつ……
2メートルはあるんじゃね?
「そうね。エレノア・オーシャンよ」
「うむ! 俺がここの支部長だ!」
まあ、そうだろうとは思っていた。
もし、こいつがあの子のお父さんだったらやべーわ。
謝罪する気ゼロ。
「よろしく」
「ああ。まあ、座れ」
俺は支部長に勧められるがまま、ソファーのもとにいく。
「長岡さんもとりあえずは座ってくれ」
「はい」
ずっと立って頭を下げていた長岡さんというスーツのおっさんは支部長に言われ、頭を上げると、ソファーに腰かけた。
俺もその長岡さんの対面に腰かける。
支部長もまた、俺と長岡さんの斜め前に腰かけた。
ちょうど俺と長岡さんの間になる形だ。
「早速だが、紹介しよう。エレノア、こちらがウチに所属している長岡ユウカの父親だ」
あの子の名前はユウカちゃんだったのか……
「長岡ソウイチロウと言います。この度は私の娘が大変ご迷惑をおかけしました。また、危ないところを助けていただき、ありがとうございます」
長岡さんが深々と頭を下げ、謝罪とお礼を言ってくる。
「いえいえ、私が勝手にやったことですので気になさらないでください」
「いえ、本当に申し訳ありませんでした」
やだなー。
頭を上げてほしい。
というか、あの子には特に悪いことされたわけではないし、謝られても何を謝っているのかがわからない。
いや、迷惑をかけたっていう意味なんだろうけども、それはあのクソガキだし。
俺はいつまでも頭を下げる長岡さんに困り、支部長を見ると、支部長が1つ頷いた。
「長岡さん、あなたの謝罪と礼はわかりましたので頭を上げてください」
「はい」
長岡さんが頭を上げる。
「まずだが、この場は謝罪や礼をする場でもあるが、再度、状況を整理し、お互いにあとくされがないようにする和解の場でもある。一応、言っておくが、お互い熱くならないように」
熱くなることはないだろ……
いや、そういうケースもあるってことね。
知らないけど、裁判みたいだ。
これは長くなりそうだなー。
『ごめんね!』、『いいよ!』で終わっていいのに……
あー、帰りて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます