ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし

 みなさんこんにちは、長谷川理玖です。ってな訳で、やって参りましたよ伊勢嶋邸。地元では有名ですが、実際に訪れるのは初めて…。まぁ、漫画やアニメに出てくるベタな大豪邸を想像すればいいでしょう。うぅ、このデカさに、圧倒されないようにせねば。


 雪兎くんは未だ体調不良なので、お母様が出迎えに来て下さいました。確か、沙都子さんて言ったっけ。雪兎くんに、し○むらで2枚980円くらいのペラいパンツ買ってる人ね。

 稼いでるんだから、もうちょい高いパンツ買ってあげればと思うけど…。この人に限らず、お金使う所と使わない所をハッキリ分けてるっぽい。本当のお金持ちって、そんなもんかね。雪兎くんの通学用自転車も、何年使ってるねんってボロいママチャリだったしな…。

 ってかお義母さま、クッソお若いですね!?息子ばかり四人も産んだとは、とても思えない。長男の桜さんが確か26だから、少なく見積もっても50に片足突っ込んでるんだよね?化け物だわ、この人。

 また見た目の若さだけでなく、お美しさも半端ない。女優さんとかにいそうだわ、こう言う人。緑なす黒髪に雪のような柔肌に、そして八重歯。他のお兄さんを知らないけど、多分雪兎くんが一番この母親似なんじゃないかと思う。

 雪兎くんと言えば、お兄さんがみんなイケメンでコンプレックスだとか言ってたけど…。大丈夫、可愛さでは勝ってる(二回目)!って、本人を前にして言ってあげないとな。

 紅茶と、手作りとか言うガトーショコラをご馳走になったよ。これまた、クッソ美味だな!こないだご馳走になったトオイのクッキーに、勝るとも劣らない。ってかガトーショコラって、手作り出来るんだ…。

 「雪兎のお友達が来てくれるなんて、珍しい。どうか、これからも仲良くしてあげてね」

 お義母さんが言った。別に、雪兎くんに友達が少ないって訳でもないけど…。家が豪華過ぎて、逆に招待しにくいってさ。気持ちは、分からんでもない。うちがこんな豪邸って意味じゃないけど、実際あのタクシーのメーターが上がりそうな広さの庭とか見たらね。

 さぁ、食うもん食ったしいざ会わん雪兎くんへ!そして、思いの丈をぶちまけるんだ!っとその前に、トイレトイレ…。つい調子に乗って、紅茶ご馳走になり過ぎたからね。二階に上がって一番近いトイレとやらを、お義母さんに教えてもらった。各階につきトイレが何個あるのか、敢えてもう問わないよ…。

 トイレの中での行為を詳細に記述する程、このオレは悪趣味じゃないよ。もし雪兎くんと多目的(意味深)トイレに入る機会でもあれば、その際はつぶさに語らせてもらうけどさ。

 さて用を足して雪兎くんの部屋に向かおうとしたけど、困ったな。完全に、迷ったぽい。トイレからの行き方も、お義母さんには聞いていたんだけど…。部屋、いくつあるんだよこの家。そして、どの部屋が雪兎くんのなんだよ…。分かりやすく、ドアに「ゆきと♡」とでも手書き文字のプレートを吊るして頂きたい所だ。

 いったん一階に戻るにも、その階段がどこ…?と思って途方に暮れていると。目を疑った。足元を、光るうさぎさんみたいな物体がぴょんぴょん跳ねていた。これは、いつかの日に雨の日本庭園で見たやつ?何度瞬きしても消える事はなく、どうも目の錯覚ではなかったぽい。

 うさぎさんは、オレの道案内をしてくれてるようだ。迷いなく廊下を跳ねて、オレを一定の方向に導いている。ドアの一つに、溶け込むようにして消えて行ったけど…。多分、あれが雪兎くんの部屋だろう。よく分かんないけど、ここは感謝する所かな。

 さて、ノックして雪兎くんの部屋に入ろうとしたら…。ふと、ある部屋の様子が遠巻きに目に入ってきた。何で見えたかって言うと、ドアは開けっ放しだったから。中に高齢の女性がいて、ベッドに横たわっている。おそらくは、雪兎くんのお婆ちゃんかひい婆ちゃんだろう。

 そして、あのベッドはおそらく介護用…。ドアを開けているのは、いつ何が起こっても大丈夫なようにと思われる。女性はオレの方を見て、にっこりと上品そうに微笑んだ。オレも、それに返して会釈する。

 さっきのうさぎさん、もしかしてこの人の能力だとか召喚獣みたいなもんだったりして。まさかね。そんな、ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし…。

 ってか、いい加減決心もついたので雪兎くんに会わないと。ノックして許しを得たオレは、勢いよく部屋の扉を開けた。

 「邪魔するぜ!」

 関西人なら、ここで「邪魔するんやったら帰ってー」とでも返しが入る所だな。すごいどうでもいいけど、さっき会ったお義母さんが関西出身で伊勢嶋家には嫁入りしたらしいよ…。

 雪兎くん自体は、いたよ。ただ、これまたオレの方を見て大きな目をパチクリと(可愛い)するだけだった。何か、この状況もデジャヴだな。

 「あ…あ…」


 さて、字数がかさんできたのでここらでまた頁を跨ぎます。ごめんね、小刻みで。ちょっと、伊勢嶋家のエピソードだけで凄い文字数になりそうやねん…。

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