ついに、伏せ字すら入れなくなった
みなさんこんにちは、長谷川理玖です。どこまで話しましたっけ。そうですね、流れでBL同好会に入会した所まででしたね。
あの日からオレは放課後になると部室棟に赴いて、BL同好会の部室に顔を出している…。どうせ、野球部の連中と顔を合わせたくもなければ他に用事もありませんからね。
雪兎くんは、市内の男子校に推薦入学するのがほぼ確定らしい。だから三年生なのに特に勉強もせず、いつも「デジタルメモ」とやらでいかがわしい小説を書いています。
あやかりたいもんだ。オレだって、腕の骨折さえなければスポーツ推薦の可能性があったものを…。まぁ、それは置いておこう。言うて、普段から特に勉強している訳でもないらしいですよ。また、塾や予備校に行っている訳でもない。
それじゃ、家庭教師?金持ちの家だしね。と思ったら、これも即座に否定された。
「ないない。大昔、桜兄さんの時代に一度だけ雇った事があるらしいけどね。俺が生まれる前の話だよ。うちの人間たち、どうにも相性が良くなかったみたいで…」
それでも、三人のお兄さん達は医者を目指すので塾か予備校くらいには通っていたとか。雪兎くんはBL小説とか書きながら遊び呆けて、どうしてこんな優秀な成績を収めているんだろう。やっぱり、地で頭がいいからかなぁ。
「俺なんて、そんなに頭良くもないけど…。そうだなぁ、でも授業はちゃんと聞いてる。あとさぁ、新学期に教科書もらうじゃん」
「うん」
「新しい本の匂いって、何かすごい興奮してくるじゃん?」
「うん?」
「教科書もらった日に、勢いでざっと読み込んだら…。何となく、だいたいの内容が頭に入るかなぁって。ない?そう言う事って」
うん、カケラもないです。要は、やっぱりあなたの頭がいいって事でしょう。実際、オレに勉強教えてくれる時もクッソ分かりやすいしね。だけど謙遜抜きで、それほど頭が良くないと思っているのは本当らしい。三人の兄たちは、いずれも死にもの狂いの猛勉強をして化け物みたいな偏差値だったってさ。どんな家だよ、伊勢嶋家…。
「そういや、いつも勉強教えてくれるのは有り難いけどさ。監督相手に、『髪の色についてもしっかり言っとく』とか言ってなかった?アレは?」
「なぁに?言ってほしかった訳?それじゃ、しっかりと言うね。『めっ!ちゃんと染め直さないと、駄目だぞっ☆』」
うわ、何だこいつ。多少イラッとしたが、可愛かったから良しとしよう。自分と言うものの価値をよく分かっているのか、いないのか。そう言うとこやぞ、そう言うとこ。
「まぁ俺的には、金髪萌えー♡だし。似合ってるから、どうでもいいと思うけど」
「…好きなんだ、金髪」
「うん。まぁ、体育会系らしい黒髪も捨てがたいけどねー。ってか、地毛は茶髪なんだっけ?」
「そうだよ。だから、黒に染めろとか意味分かんねぇ事言ってきやがってさ…」
「そうなんだ。本当にあるんだね、そう言うのって…。うちの楓兄貴も地毛で茶髪だから、公立行ってたら言われてたのかな」
「その人は、私立行ってたんだ。ってか、伊勢嶋家の威光で許されたと思うけど。ってか、『桜』さんは兄さんで『楓』さんは兄貴?」
「うん、まぁちょっとしたクソ兄貴って言うか…。実際に、会えば分かるよ。やめよう、この話は。それ(ギブス)、本当に不便そうだねぇ。利き腕でしょう?完治まで時間がかかるって、ソウスケさんが言ってた…。あ、接骨院のお爺さんね」
何だか急に、えらい早口で話題を変えてきた。飄々としてるようで、結構テンパる時もあるんだな。そう考えるとオレは、何だかついムラムラと意地悪をしたくなって…。
「うん。だから、オ○ニーとかしづらくてしょうがない」
「へえっ!?ホ、ホナニーですかぁ!?」
ほら、さっきまで勉強を教えていた時とはえらい違いだ。何だこの、面白い生き物。面白いから、もうちょっと揺さぶりをかけてみようか。
「雪兎くんは、オナニーとかすんの」
「ついに、伏せ字すら入れなくなったね!?こんな事もあろうかと、年齢制限はかけてるんだけど…。ま、まぁ俺だって年頃の男子ですから?それは、人並みにね」
「そうなんだ。人並みって、一週間で言うと何回?」
「な、ななかい…?よりは、もうちょい少ないです…。って、いいじゃない俺の事はぁ!」
「そうだね、オレの話だったね。言ったように、利き腕使えないからオナニーしづらくて仕方ない。雪兎くん、代わりに抜いてくれない?」
そう言って、カチャカチャとベルトを外す振りをしてやると…。雪みたいだった顔が、面白いくらいに真っ赤になった。初対面から予想しなくはなかったが、やっぱホモだなこいつは。
「だっ…駄目だよ。こんな所でさぁ…。って、場所を変えればいいって訳でもないけど」
と言いつつも、その顔には「やりたいです」「やりたいよぉ」と書いてある。あー面白かった。面白かったけど、流石に今日はこれくらいにしとくか。まだ、出逢って二週間も経っていない訳だしね。お楽しみは、これから…。
「バーカ、冗談に決まってんじゃん。何、本気にしてんスか。先輩」
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