白夜の糖花


「白夜の糖花を売っているところを探しています」


 午後3時を少し過ぎた頃、研究所を訪れた少年二人は出迎えた所長へ問いかけた。雪がちらつく中を此処まで歩いて来たのか、少年達の頬や鼻先は赤らんでしまっている。白夜の糖花とうか。あまり聞き馴染みのないもので私も所長の答えに耳を傾けた。

「この研究所を出て左側の道を行った先にある菓子屋で取り扱っている。宵月よいづき菓子店と言う名だ」

 はて、そんな場所に菓子店なんてあったか。考えているうちに少年達は所長へ礼を言って去って行った。少年たちを見送ってこちらへ戻って来た所長へと問いかける。

「白夜の糖花ってどんな菓子なんだ」

「白夜の日に月は姿を隠してしまう。そんな日に月の光を必要とする者達が食べる糖花……金平糖だ」

 詳しく聞けば月の光を星屑を原料とした糖晶とうしょうを混ぜて作った金平糖らしい。私にも食べられるだろうかと言えば店頭で見かけたら買っておくと良い答えが返って来た。ひっそり期待しておこう。

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