2年ぶりに元カノから電話が来た。「今、貴方の葬式にいるの」と。

ぐらにゅー島

プロローグ

 「もしもし、類?久しぶりだね。」

 あるカーディガンを羽織りたくなるような日に僕が電話に出ると、突然にそう話しかけられた。温かく、優しいその声に胸がキュッとなる。二年振りに聞く声だった。

「元気にしてた?…なんて言うのも野暮だけどさ。」

 アハハ、と乾いた笑い声が携帯から流れる。僕は突然のことに驚いてしまって、ただ、どうして彼女が?という疑問が頭を駆け巡った。何も言えずにただ、驚くばかりだった。

「私、本当は君のこと好きだったんだ。最期にそれだけ言いたかったの…ごめん。」

 そう言うや否や、彼女は泣き始めてしまった。嗚咽を漏らす彼女の声だけが響く。僕はどうすればいいんだろう?どうするのだろう?

「まさか、類が死んじゃうなんて思わなかったの…!」

 そんなことを考えていたから、彼女のその言葉を理解するのが遅れたしまった。

「…僕が死んだ?」

 『死ぬ』なんてドラマや小説の中でこそよく耳にするが、日常生活で聞くことはない。だから、自分が死んでいるなんて冗談でも言われたら気持ちが悪い。

「…え、類?」

 僕の呟きは電波を伝って彼女に届いていたようだ。驚いたような、縋っているような、そんな声で僕の名前を口にする。

「ああ、類は僕だ。二年振りに急に電話をかけてくるなりそんな冗談はよしてくれよ。タチが悪いぞ。」

 だから僕は思わず少し棘のある言い方をしてしまった。それなのに…

「本当に…本当の本当に類なの⁉︎」

 彼女は、気にした素振りも見せずに僕が僕であることを尋ねてくるのだ。

「ああ、そうだって言ってるだろ?心愛、急にどうしたんだよ。」

 心愛。この名前を音にするのも二年ぶりだ。ザワザワと心がざわめく。

「だって、だって類…、…今どこにいるの?」

「何処って…家だけど。心愛こそ何処にいるんだよ?なんでまた僕が死んだなんて嘘をついてるんだ?」

 全く心愛がしたいことが理解できない。今も、二年前も。

「類、落ち着いて聞いて…。」

すうっと息を吸う音がして、その後心愛はこう言った。


「私は今、類の葬式に出ているの。」

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