オーク王の黒奥さん〜全肯定王様は不吉な私を“ちゅき”だという。ならば私は、白を、世界を“ちゅき”になる〜
冥沈導
第1章 “ちゅき”って……、素敵だな。
第1話 ……何でー!?
「我が家は終わりだぁ!」
私が産まれた時、家族はそう叫んだらしい。
髪と瞳が黒かった、それだけ。
癒しの力はなかった、それだけ。
黒は、災いを呼ぶとされていた。
それだけ。
たったの、それだけ。
●●●
「それだけで、売り飛ばすって、酷すぎるよー……。しかも、奴隷としてなんて」
私は
「何、奴隷だからボロ服って、しかも、下着なしって。そんなの性奴隷確定じゃんかーっ……」
私はトボトボ歩きボロボロ泣いた。
この世界の
聖なる力で、癒しの力で怪我や病を治す。この世界では、ある意味、神様より尊いとされている。
そして、
姉も典型的な
両親は、次もこんな子が生まれると、夜の営みを頑張った。でも、生まれたのは真っ黒な私だった。
絶望したと、両親は言っていた。私の方が絶望したよ! と思ったけれど、この歳までそれでも育ててくれた。
だから、怖いけれど、これからオークの王様の所に行きます。奴隷として。
「確か、この辺だったと思うけど……」
荒地でエルフと戦ってるオークが野営しているって聞いたんだけど。……いた。
焚き火を囲んでいる、緑色の肌に豚のような鼻、口から出ている下からの牙。周りは斧や
……ひいぃ、怖いよー。
あうあー、一人が私に気づき近づいてきたー!
「お前!
「はひぃっ、
「でも黒じゃねーか!」
「何だ黒かよ!」
「王が金をしこたま出したのに!」
「しかも髪型ダセー!」
「欲情すらしねぇ!」
「…………」
次々と文句を言われ、歓迎されてないみたい。
うわぁーん! 帰りたいよー! でも、帰る場所ないよー!
「あ、あの……。
「王がエルフにやられたんだ!」
「エルフに?」
「呪いみてぇのをかけられた!」
「だから、癒してほしかったのに!」
「い、一応、見せていただいても、よろしいでしょうか」
「少しは役に立てんのか!?」
「ひいぃー、わかりませーん! 見てみないとー!」
「じゃあ試しに見ろ! 治せなかったら殺す!」
「ひえぇー……」
それってもう、死ぬ確定ですよねー? と思いつつ、焚き火の奥に行くと。体が大きく背も高い半裸のオークさんがうなされていた。白い布を顔にかけられて。
「……もうお亡くなりに?」
「生きてる! 殺すぞ!」
「すいませーん!」
何でもかんでも殺すと言わないでくださーい! 迫力あって怖いんですー!
「女や子供、そうじゃなくても、人間やエルフたちは、オレたちの顔を見ると怖がるだろ! だから、隠してんだ!」
「はひぃー! すいませんー!」
「で!? どうだ!? 治せるのか!?」
「これは……、治せません」
「何だとー!?」
だってこれは、呪詛だ。王様の体中に気持ち悪い模様が、
「やっぱり
「いいえ」
これは、お姉ちゃんでは、治せない。だって、
「王様が元通りになれば、解放してくれますか?」
「王が高い金払ったが仕方ねー! 黒なんかいらねーからな! 解放してやるよ!」
「はひぃー、ありがとうございますー。では」
王様の体に両手をかざした。
「黒も生、刻め生まれしものよ。我の糧とならん。
王様の体にあった呪いが浮かび上がり、私の体に吸い込まれていった。体が一気に重くなり、脂汗が出た。でも、少し目を瞑り、深呼吸を繰り返すと落ち着いた。
そう、私は体に呪いを溜め込む事ができる、特殊な体質なんだ。
「あ! 王!」
王様ががばっと起き上がり、白い布が顔から落ちた。あ、豚さんみたいな顔じゃない、肌は赤に近い肌色だけど、人間っぽい顔立ちだ。……かっこいい。って、ダメダメ! これで、解放されるんだから! ……帰る場所、ないけれど。
「あのー……、これで、帰っていいですよね?」
「おー! 帰——」
「いや、ダメだ」
王様の声、初めて聞いた。でも、何でー!?
「お前は奴隷ではなく、俺の妻にする。だから、帰さん」
「……何でー!?」
「お前をちゅきになったからだ!」
「もっと何でー!?」
●●●●
あとがき。
どうぞ、笑ってください(笑)
そして、よければフォローなどポチしてくださると、「ちゅき」がパワーアップします(笑)
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