第九章 生徒会長兼風紀委員長!!!

変異者予備軍

時刻は15時30分。水野流はいつものアンニュイな表情で、教壇に寄りかかって頬杖をつきながら、ギリギリ聞こえる程度の声量でボソボソと喋る担任のかったるい話を聞いていた。

その隣では吉見由香里が、頬を赤くさせて発情しながら、彼の横顔をうっとりと眺めている。

「ここで皆さんに残念なお知らせです。この学校で山ざ…ゴホンッ!あ〜特定の生徒に対して、『変異者予備軍』などと呼ぶイジメが流行しています。そう言った言葉はね、時に物理的な暴力よりも深く、心にキズを残します。分かったら皆さんも、山崎君にそう言った言葉を使わないように」




「酷いですね〜!変異者予備軍だなんて…!」

帰りがけに、由香里は流の後ろを例のごとくつきまといながらそう言った。

「どこにでもいるもんさ、そういう低俗なことをする奴は…」

流はイヤホンを詰め直しながら、我関せずといった感じの涼し気な顔で答えた。

「この学校以外でも流行ってるみたいですよ〜!『アニメオタクは変異者予備軍』だとか、『ワンピース読んで泣かないヤツは変異者予備軍』だとか…」

「フン、まるでデビルマンの世界だな」

「…おい、待ちやがれテメエら」

何者かの声に足を止めると、目の前の曲がり角から、ガラも悪けりゃ頭も悪そうな4人組が現れた。手前の3人は、わずかだが見覚えがあった。

「君は…誰だっけ?カス…カスなんとか」

流の言葉に、金髪の男は血管を浮き上がらせて唾を飛ばしながら激昂した。

「春日だボケェ!今日はこの前の借りを返しに来たぜ。ただし戦うのは俺達じゃねぇ、このお方だ!」

春日がそう言うと、3人の後ろから黒のタンクトップ姿の、サイドに剃り込みが入ったいかつい顔つきの男が先頭に立った。

「フッフッフ…お前ら俺の名を言ってみろ〜!」

「知るかよ」

突然、流の隣で由香里が『叫び』を彷彿とさせるポーズで悲鳴を上げた。

「ヒィッ!?確かこの人…前に校内をハーレーで暴走して骨折して入院した挙句、〇〇校を退学になった人ですよ!何でも最近まで少年院にいたとか…!」

彼女が解説すると、男は得意げに笑みを浮かべた。

「よく知ってるじゃねーか姉ちゃん、それじゃ俺のかわいい舎弟達の仇をとらせてもらうぜ?流とやら」

「やっちゃってください!毒島さん!」

由香里は泣きべそをかきながら流の腕にひっつくと、まるで世界の終わりの如く喚き散らした。

「ギェ〜〜!!どうしましょう流さん!私達ボッコボコにされてズッコンバッコンされてバッラバラにされちゃいますよぉ〜!」

「仕方ないな…相手してやるよ」

流が由香里を雑に引き剥がして一歩踏み出した途端、彼の背後から高らかな声が響き渡った。

「おい!何をしている!」

振り返ると、少し先に学生服に身を包んだ、センター分けのガタイのいい少年が、腕を組んで威風堂々とした様子で佇んでいた。由香里は彼を見るや否や、驚きの声を上げた。

「あっ!生徒会長!」

「違う!生徒会長兼風紀委員長の永木道徳ながきみちのりだ!!」

男は誇らしげにそう名乗った。


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