【完結】クラスの天使と呼ばれる正統派美少女は俺だけに小悪魔な顔を見せる~彼女がヒロインのラブコメ小説を拾われたら、同じ事をしたいと言われました~
むらくも航
第1話 あれを拾われたら高校生活が終わるー!
「
「なっ……」
俺と目の前の美少女以外には、誰もいない屋上。
目の前の美少女は、天使と言われる憧れのクラスメイトだ。
いつも笑顔で、可愛くて、
だけど今はちょっと雰囲気が違った、初めて見るいたずらっぽい表情の彼女。
そんな彼女が、
「ふふっ」
この日、俺にしか見せない小悪魔な顔でこんなことを言ってくるとは、思いもしなかった。
★
退屈な授業中、真剣に聞くでもなくただぼーっと板書をする。
ちらっと校庭を横目に入れれば、桜も完全に散り、本格的に学校が始まったのだと思わされる。
「……はぁ」
そんな中で、誰にも聞こえないようにため息をついた。
俺は『
高校二年になってもうすぐ一か月が経とうというのに、未だに友達が一人としていない、寂しい高校生活を送る「ぼっち」だ。
趣味と言える趣味は……こっそり小説を書くことぐらい。
小さい時から友達を作る方法が分からなかった俺は、本を読んでいる時間だけが早く感じて、いつしか自分でも小説を書くようになっていた。
「……」
でもやっぱり、俺だって友達がほしい、さらに欲を言えば彼女がほしい。
今まで何度もそう思ったけど、何かに誘われることもなければ、自分から一歩踏み出すこともできない。
そうして結局、この年までずっと一人でいるようになっているのだ。
周りはあんなに楽しそうな高校生活を送っているというのに。
だが、俺がそんな寂しい事を考えている間も、無情にも授業は進む。
「この問題は難しいな。
「はい。3です」
「おお、さすが姫野だ」
先生から当てられた難問に対しても易々と答える彼女は、クラスの天使と言われる『姫野さん』。
「「「おお……!」」」
彼女の回答に、先生に続いてクラス中がどよめいた。
ちなみに俺には難問が多すぎるので、少し出遅れた。
姫野さん、フルネームは『
綺麗でサラサラな黒髪ストレートをセミロングに伸ばして、全体的にとても清楚な姿。
スカートも特別短くなく、成績優秀で生徒先生問わず信頼もされている。
そんな真面目さはありつつも、くりんとした瞳や眩しい笑顔が魅力の美少女で、可愛らしいクラスの人気者だ。
彼女はまさに才色兼備。
ギャルっぽさとは正反対に位置する正統派美人の、天使と言われる存在だ。
キンコン、カンコン。
なんて姫野さんに感心していると、ちょうど授業が終わる。
「じゃあ復習しておけよー」
授業終わりの
それとほぼ同時に、姫野さんの周りには人が集まった。
「姫野さんすごいね、最後の問題!」
「私ちんぷんかんぷんだよ~」
「あーあ、私も姫野みたいに頭良かったらなー」
人だかりに対しても冷静に、
「ううん、昨日たまたま勉強してたところだったから」
そうしてにっこりと笑う笑顔に、教室のみんなも日々和んでいる。
「それでもすごいよねー」
「やっぱりいいところ狙ってる人は違うよね~」
「ねー、もしかして東大志望だったり?」
ただ、周りの持ち上げ方にはいつも少し困っているよう。
「あはは、それはどうかな~」
勉強が出来て可愛くて、性格も良い姫野さん。
きっと根っからの真面目で、普段から心が綺麗だからこそ、あんな笑顔が出来るんだろう。
ああいう人って本当にいるんだなあ。
まあ、ぼっちの俺には関わることのない人だろうな。
放課後。
「あはは~」
「きゃはは」
家に帰るべく校舎から外に出ると、当然のように笑い合ったり、楽しく話したりする声が聞こえる。
「……」
周りの連中はやっぱり羨ましい。
けど、俺が会話に入る事で輪を乱したくない、そう考えると勇気は出ない。
まあいいか。
じゃあ今日も、家に帰って小説を書くとしよう。
「って、んん?」
歩きながら
俺どこかで落としたっけ?
そう考えると、心臓の鼓動が急に速くなり、うるさくなるのを感じる。
「……ッ!」
俺は来た道を急いで戻る。
周りには奇異な目で見られるけど、そんなのは関係ない!
あれとは、俺の趣味である小説が書かれたノート。
普通の小説ならまだ最悪見つかってもいい。
けど、あれは違う!
「はっ! はっ!」
あれは“クラスの天使をヒロインにした”『妄想ラブコメ小説』なんだよ!
特徴的な笑顔や口調、スタイルなんかも、全て彼女に寄せて書いてる!
なんなら、ラッキースケベが大いにアリのちょっとエッチなラブコメだ。
もはや、その子との妄想を描いたただのエロラブコメと言っていい!
これは一刻も早く回収しなければ!
ガラッ!
すでに誰もいなくなっていた教室の扉を勢いよく開く。
一番校庭側、一番後ろの席まで大股で歩き、その俺の席を急いで覗く。
しかし、
「ない……!」
その姿は一切見当たらない。
まずい、まずいぞ、一体どこに……って。
「なんだこれ」
ふと、机の上に
『屋上に来たら小説を返してあげるよ 姫野天音』
「……!」
その瞬間、全身からさーっと血の気が引いていくが分かった。
おい、まてまて、嘘だろ。
よりにもよって、この小説のヒロイン。
「姫野さんじゃねえかよ……」
俺が書いていたちょっとえっちな『妄想ラブコメ小説』。
まさにそのヒロイン、姫野天音ちゃんだった。
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