第454話 失礼な訪問者

夕食後だった。


夫婦で動画を見ていたら、玄関チャイムが鳴ったらしい。

私は動画の中の音かと思っていたが、念のために玄関へ向かう。


玄関の灯りをつけてみると、誰か立っているようだ。

咳き込みながら「何でしょうか?」と訊く。


隣の世帯主の名前を言う。


「それなら隣ですよ。」


「え?どっちの隣?ねえ?」



灯りを消して、知らん顔でひっこもうかと思ったが、こういうふざけた人間は車やバイクに何をするかわからない。


ドアを開けて、隣を指さした。

私はマスクをしていない。


「夜分恐れ入ります」もないし、何で教えてやってるのにため口なのかと。


隣の家、ちゃんと表札出てるんだから、それを探せ。

適当に訪問するな。


まだ私からウイルス排出してるかもしれないのに。


熱が下がってすぐあたりの日に、うちの郵便受けに隣あての請求書が入っていたことを思い出した。

封筒に入っていない、請求書むき出しの状態。


あー、それかな。

請求先を間違えてるわ、そんな時間だわ、ロクな店じゃないわ。

郵便受けにぺろーんと入っていて、パッと覗いたら覚えのない店でそこそこの金額で詐欺かと思ったのだったわ。

名前を見たら、「なんだ、隣だわ」ということで。


咳き込みながら、隣に請求書を入れに行ったわ、私。

絶対何かあっても、そこの店は利用しないぞと記憶もした。

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