第29話 噂話は嘘が多い

何が誰の地雷になるかわからないこともあり、あまりうちの情報は

うちから出さないようにしている。


出身地がやや街というだけで憎まれているそうだから。


離婚でもしない限り田舎から出ていけないんだから

帰省先が街なんて憎まれて当然なのだそうだ。

私はこちらの人にそう言われた。

出ていこうと思えば出ていけると思うのだが

面倒なのでつっこんでいない。


名前も顔もこちらはわからないような人たちに

私たち夫婦の出身地や出身大学を言いまわっている人がいる。

私が大学を出ている妻ということで、教育熱心過ぎる母親という

勝手なイメージをつけられて、かなり迷惑したのだった。

実際のところは、子どもにつきっきりで勉強を教えてるみたいなこともなく

ゲームをして遊んでいるような母親なのだが。


「ねえねえ、お母さん厳しいんでしょ?」

子どもたちは外に出るとそう訊かれたらしい。

フラットに見てないなあと思ったけれど、否定しても思い込んでいる時点で

無駄だろうと思ったし、教育的にヒステリックママという方が

話としては面白くあちら的には嬉しいんだろうから放置した。

友達じゃない人にどう思われても実害はないしね。


出身大学も実は噂されているのとは違うのだ。

友達が訂正してくれて、正しい情報に上書きされているとは思うが

最初噂されていた大学だと、ヒステリックママに私を仕立てるのには

ちょうど良かったんだろう。

だいたいそんなことを言い出す人というのは特定されるのだけれど

恥ずかしくもなさそうで、私が一人でいる時にニコニコと

挨拶してきたりするから、心の中で(すごいタマだな)と思っている。


よくよく考えればわかること。

そんなに仲良くもない相手に、出身地はともかく突然出身校なんて言わない。

こちらの人はマウントをとろうとしているのか、出身高校を言ってくることが

わりとあるのだが、それも高卒の人の高校名を教えてもらったところで

何になるのだろうと。大卒でもほとんど何もないと思うし。


落ち着いて考える前に、面白そうな話に飛びついてしまうのだろう。

そして話を膨らませていくのだろう。


自分に関する噂話を自分で検証するのが、わりと楽しかったりする。

誰が言い出したのか、どのあたりでどう膨らんでいったのか。

ちょっと探偵気分で夫婦で考えてみたりする。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る