1/1 木矢部 悟(きやべ さとる)

 殺す。

 殺す。

 絶対に殺す。

 そう決めたんだから、やるんだ。


「絶対に」だから、失敗しちゃいけない。だから今日は、どうやって殺してやろうかを決めることにした。

 俺は馬鹿で知識なんて全然ないから、本屋に行くことにした。馬鹿な俺でも、本屋に行けば欲しい知識が手に入ることくらいはわかる。


 外は寒い。

 冬だから当たり前か。

 俺は馬鹿だけど人並みに風邪をひくから、ズボンの下にステテコ穿いて腹巻きをして、コートの上からぐるぐるマフラーを巻いて靴を履いた。

 意気揚々と外に出ようとして、財布を忘れていることに気付いた。ポケットに財布を入れる前に、そういやいくら入ってたっけな、と中を見てみた。


 52円とコンビニのレシートが入ってた。


 本屋は止めて、図書館に行くことにした。

 危うく本屋のレジで恥をかくところだった。








 図書館は閉まってた。

 元日なんだからそりゃそうだ。

 俺は本当に馬鹿だ。


 馬鹿だけど、絶対に殺してやるんだからな。

 アイツのために。

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