第106話 マティス王子

 アランは、自分の子供時代を思い出していた。


 生意気だった自分は、ただの生意気じゃなかった。ありとあらゆることに興味を示し勉強した、本当に生意気な子供だった。

 かたや、王子様という子供は、何でも揃っているのに、有り過ぎるがために、中途半端な生意気だった。


 本当に、いっぱいあるなー。

 アランは、王宮内の図書室にいた。


 果さて、王子様という子供は、何に興味があるのか。

 数冊、本を持って王子様という子供の部屋に向かった。


 侍女から、家庭教師が勉強を教えているので、お待ちくださいと言われて待つことにした。


 隣から聞こえる声の大きな家庭教師から、国の歴史を勉強中なことが分かる。


 みんな、声デカくねー。

 これじゃ、王子様という子供も、頑張って大声て主張する訳だ。


 しかし、これでは、さぞお疲れだろうな……。

 アランは、一冊を除いて本を図書室に戻す事にした。





 アランの前を、王子様という子供が歩いている。

 結局、アランは、王宮の庭の案内を頼んだ。


 ……驚いたな。


 王子様という子供は、植物については、良く知っていた。

 母親が、植物が好きでこの庭は、母親の自慢らしい。

 王子様という子供は、森で会った時とは別人のように、子供らしい笑顔を見せ、アランに、丁寧な説明をしていく。

 庭師の老人と会った時など、敬語を使っていた。


 なんだ、ちゃんと話せるじゃん。


 無理をしている王子様という子供に聞いてみる。


 なぜ、魔法を使わないのか?


「何で知っているの?」


「魔法使いは、だいたい分かるもんだよ。」

 アランが、優しく答えると、おずおずと話し始める。


「母上が魔法使いだから、僕も魔法が使えるのかもしれない。……でも、上手く使えないんだ。だから、使うのを止めたんだよ。向き不向きがあるんだ。きっと、魔法を教えていた先生が言ってた。」

 少し悲しげに下を向きながら、話す。


「あの、枯れかかっている花を見てごらん。」

 アランは、枯れかけた花に薬草を使った。

 花は、また美しくしゃんと太陽に向かって顔を上げた。


「……凄い、どうやったの?」

 王子様という子供は、膝をついて、花を見た後、アランに興味深そうな顔を見せた。


「ただ、薬草とちょっとした魔法を足しただけですよ。マティス王子も出来ますよ。勉強すればね。」

 アランは、マティス王子の頭を撫でた。


「教えてくれる?」

 マティス王子が、立ち上がりアランにすがるような顔を向けている。


「先生として、雇ったのでは?」

 マティス王子は、喜んで庭師のもとに走って行く。


 アランにも、子供の頃にあったはず、学べるという喜び。

 正しく導く大人がいれば、何の問題も無い事だ。


 アランは、手を振るマティス王子に、悲しげな表情のまま手を振った。


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