第92話 幼馴染

「ジャーン、どうよ。我が診療所にようこそ。」

 タイラーは、アランに向かって手を広げた。


「立派だなー。良く揃えたもんだよなー。」

 アランは、室内を見回した。

 小さいながらも設備の整った清潔感のある診療所だった。



「ラリーが居なければ、こんなに綺麗な診療所とは行かなかっただろう。」

 アランが感心しながら、診療に使う魔導具を見てる。


「おいー、俺だって自分の身なり以外は気をつけてるんだぜ。」

 タイラーは、さも不満気に腕を組んだ。


「誰だ、僕を褒めちぎっているのは。」

 いつの間にか、扉を開けて短い金髪の青年が立っていて、直ぐ様アランを抱きしめ、背中をポンポン叩いた。

「久しぶりだなー、アラン。」


「久しぶり、ラリー、元気そうで何よりだよ。」

 アランも、ラリーの背中をポンポン叩いた。



「もうひとりの幼馴染のラリーだよ。こっちは、新人ハンターのポールとニーナだ。」

 アランが、ポールとニーナを紹介する。


「しかし、よく俺が南に来たこと、分かったな?」

 アランは、ふたりに連絡せずに来たので、なぜ浜辺にタイラーが来たのか不思議だった。


「密偵だよ、密偵。」

 タイラーは、顎で扉を示すような仕草をした。


「密偵?誰だよ、」

 アランが振り返ると扉には、ポールとニーナが立っている。

 ヒョイっとポールとニーナの間に、見たことのある顔が現れた。


 いつの間にか、馬車酔い魔法使いくんがいた。



「……コッ、コイツには偶然会ったんだよ、密偵なんかしてない。じいちゃんから、ちょっと話しを聞いてたから、あんたらに伝えただけだよ。」

 馬車酔い魔法使いくんは、不貞腐れたように、唇を尖らせた。


 コイツって……、お前とかあんたとか、最近のお子様達は、何なんだよ。

 アランは、呆れながらもそれはスルーした。

「じいちゃん?」


「魔法協会会長様のお孫さんだよ、礼儀がなって無くても、我慢しろよ、アラン。」

 タイラーが、面白そうにアランを見ていた。


「あぁ、色々と我慢するよ。」

 アランは、面倒くさそうに返事をした。


「お利口、お利口。」

 ラリーが、アランの頭を撫でると、向こうで一杯やろうぜとタイラーの一言で、診療所に併設しているタイラーとラリーの家に向かった。



 ふたりの家は、完全にラリーの趣味の良い落ち着いた家になっていた。


 お互いの近況を話しながら、ラリーの作った食事を堪能して、ほろ酔い気分になった時には、ポール達お子様を先に宿屋に返した。



 懐かしい話しを3人はほろ酔い気分で話した。



 ソファに深く腰かけ、3人は上を向きながら、気持ちの良い睡魔に誘われ、タイラーが呟く。

「……なぁ、アラン、もうアレは忘れただろう?」



「……俺は、天才だから忘れないんだよ。」

 アランは、少しだけ微笑んだ。


「あー、忘れてた、お前嫌な奴だった……。」タイラーが悲しそうに笑う。



「……なぁ、忘れたって言えよ。」

 ラリーが、悲しそうに呟く。



「……残念、忘れたって言っても魔法協会は、許さないさ。」

 アランも、悲しそうに笑った。



「アイツさえ、街に来なければなぁ……。」

 タイラーが呟く。



「俺が天才でなければ……。」

 アランは、くすりと笑う。



「アランが馬鹿だったら、……否、馬鹿だから読んだのか?」

 タイラーは悲しそうに笑った。



「……馬鹿に乾杯。」

 ラリーが、呟く。



 アランは、幼馴染達の心地良いお節介を聞きながら、微睡まどろんだ。



 3人は、悲しげな表情で酒の入ったグラスを掲げ、揺れる酒を見ながら、ゆっくりと酒を飲み干した。



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