第12話 先頭争い

 ラシフィコ州の州都がある街への道中、狼のような姿のニゲル種の子、ボッサは、意気揚々と前を歩いている。途中振り向いたり、猫のような姿のヘナ種のスタンに絡んで、追いかけっこしたりしている。


 ……テンション高いな、お子さんは。


「あいつ、スタさんのこと出来の悪い兄貴だと思ってるんじゃないか?」

 アランの一言で、スタンは、体を大きくしてボッサより前に出た。

 そうすると、今度は、ボッサが前に出る。

 これを繰り返すうちに、2匹とも走り出して、アランを置いていく。


「おい、おい、俺を忘れるなー……。」


 アランは、呆れながらも気分良く歩いて行く。

 のどかな風景に、優しい風、気持ちいいな。


 もうすぐ現れる町で、州都行きの馬車に乗れば夕方には、州都に着ける。

 かなり大きな街だから、楽しみだな。


 ラシフィコ州は、酪農に力を入れていて、チーズと牛乳、ヨーグルト、乳製品の他、小麦粉の生産も多い。

 美味しい料理にもありつけそう。

 アランは、思わず笑顔になる。



 スタンとボッサが凄い勢いで戻って来る。

 やっぱり最後は、俺のところだよね。

 ……って、また空飛ぶ魔獣に低空飛行で、追われてんのかよ。


 アランは、呆れながら魔法の杖を出して、空飛ぶ魔獣を消しさった。


「……魔獣が多くないか?しかも州都に近いし。」

 アランは、首を傾げた。


 ラシフィコ州は、ニゲル種の出生が多いことから、多くのハンターが生まれ、集う場所だ。ギルドも多く、依頼も多方面から来る。

 それなのに、あんな小物の魔獣が州都の近くにいるなんて。


「スタさん、ボッサ、なるべく離れるなよ。」

 言われなくても、分かっているようだ。


 スタンは、子猫サイズでアランの肩に乗っており、ボッサもしつけ中の犬みたいに足にぴったり引っ付いている。

 早く州都に着きたいけど、これじゃあ、馬車がでるかな。しかも護衛付きなら高そう。


「やれやれだな。」

 アランは、辺りを確認しながら呟いた。



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