第4話 な、ふ、太るわけないでしょ?

「あーん、美味しいわ!あんこ餅!!きな粉餅も美味しいけど、もちろんお雑煮も捨て難くてよ」

 ともっちゃもっちゃと餅を頬張る私。近所で新年の祭りがあり、お餅投げでたくさん魚住と拾ってきた!


「お、お嬢様…。いや、豚?随分と肥えて嘆かわしい。正月太り草」

 と魚住が言い、私は何言ってんのこいつ?

 と思ったが、魚住が鏡と体重計を出してきた。


 鏡の中に頰が膨らみ、二重顎の女がいる。因みに下を見たら大きな風船腹がある。誰かしらこの女。



「美玖お嬢様…。現実を受け止めてください」

 と魚住が言う。体重計にそろそろ乗ってみると…



「!?針?」

 グイーーーーンと針はどんどん動いて止まる。70……。


「ぎゃあああああああああああ」

 と絶叫すると、隣からドンと壁を叩かれ、魚住が私の口を押さえた。


「うるっせえよ!!バカッ!!」

 と隣の住人が怒る。


「す、すみませーん」

 と魚住が言う。


「お嬢様のせいですよ」


「ふごふごっ!」

 まだ手をどけてもらえないから息が苦しい。


「あ、豚そっくり。面白ぇ」

 殺意湧く。


 私は考え込んだ。


「困ったわ。このままお正月が明けたら、この身体で登校しなきゃだわ。


 今年はお祖父様により、貧乏暮らしをさせられてる為、高級ジムでイケメンガチムチトレーナーに指導して貰えないわ」


「普通に自力で痩せるしか無いでしょうね草」

 と魚住は私を見て笑いを堪えている。


「自力って、一体どうするの?」


「そりゃもう飲まず食わずで」


「死ぬし!」


「じゃあ水だけとか」


「それも死ぬし!」


「2週間くらいは大丈夫かと」


「死ぬ手前だし!!」


「精神的に追い詰めるためにも、なんか洞窟とかに閉じ込めておくとか」


「いや、死ぬし!!」

 と言うと魚住は


「じゃあもう1ヶ月くらい学校休んでしまえ!」


「うん、そうするー」

 と言う事で私は冬休みから痩せるまで休むことにした。


 *

「マジでアホですね。お嬢様」

 と魚住が自分で提案しといて言う。


 学校で魚住が上手く誤魔化してくれてるみたいだけど


「お嬢様…。学校では、お嬢様が事故に遭い、ひと月入院ということになってます」

 と言う。


「ふーん、そうなの」


 ボリボリムシャムシャバクバクズルズル。


 と煎餅と肉まんとドーナッツとカップ麺を啜る私に魚住は虫ケラを見る様な目で


「お前…何食ってんの?ふざけんなよこの肥えた豚がっ!


 どうやって食料を調達しやがったんだよ!!?金は置いてってないのに!?」


「え?その辺歩いてたら、親切なお爺さん夫婦の荷物とか持ってあげたり、家の中掃除してあげたら、お礼にたくさん貰ったの。これも私が可愛いからね」

 と見せびらかすと全部没収された!


「わ、私の食料に何すんのよ!!」


「うるせえ!!このデブ!ブス!アホが!!

 お前のことを思い、心配してるクラスメイトに土下座してこいや!!


 お前今日からこれな」

 とお皿に煮干をちょこんと置かれた。


「!!?はあああああ!?

 これだけ!?ふざけんじゃないわよ!死ぬわよ?」


「はあ、死んでいいですよ?もうほんと死ねばいい」


「あんた最低ね!主人の私に死ねばいいとか言う執事いないわよ!?」


「はあ、もうなんか疲れたんで死ねばいいと思います!


 お嬢様、本気で痩せないと、このアパートからも追い出すからな!!いいな?このデブ!」

 と言われ、私は魚住が本気で追い出そうとしているのに気付く。酷い!私にホームレスになれって言うの?


「わ、わかったわよ…。や、痩せればいいんでしょ痩せれば…」

 と渋々ダイエットを始めた。


 そして私の厳しいダイエット生活が始まった。食料は最初、煮干と水で頑張ってフラフラとランニングしたら、煮干を増やされたので私は頑張って、来る日も来る日もランニングや腹筋を鍛えまくり、ついに元のスレンダーな美少女女子高生へと体型が戻った。


「お嬢様…。やりましたね…。俺は嬉しいです。今月もお嬢様の食費を削り、俺の魔法少女ミミたんのフィギュアが買えたこと!


 もう一生ダイエットしててくれていいんですよ?」

 と魚住が新品の魔法少女ミミたんフィギュアに頰ずりしている。キモ。


「マジ死ねばいいのにあんた」


 とりあえず私は次の日から登校したら、机に花が飾ってあった。1ヶ月も登校してなかったので、もはや死んだ奴扱い。ていうか、この花飾った奴、後で見つけ出してぶち殺すからな!!



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