失踪

梅福三鶯

第1話

「あなた、お帰りなさい」


 私が帰ってきた夫を玄関まで迎えると、彼は蒼白な顔をしていた。


「どうしたの?」


 私が聞いても夫は答えてくれず、何かに怯えるように震えるばかり。


「今日はもう寝るから」


 と言い残し、ベッドに入ろうとする夫に、


「そういえば今日、変な電話があったの。女の人からみたいであなたに用があったみたい」


 私は昼間きた電話のことを伝えた。


 その途端、夫は顔を強張らせ、


「そ、そ、そうか。あ、じゃあ疲れているから」


 そそくさとベッドに行ってしまう。


 この時、私は彼に聞けばよかったのかもしれない。


 翌朝、仕事に出掛けた夫は、二度と帰って来なかった。


 彼の会社から電話があり、出社していない旨を伝えられる。


 すぐさま夫に連絡を取ろうとした。


 しかし電話もメールも応答なしで、連絡は取れない。


(昨日の怯えようと何か関係があるのかしら……)


 彼の書斎に入り、手掛かりを探す私。


 その視界に入ったのは、くしゃくしゃにして捨てられた紙。


「なにかしら」


 私は拾い上げ紙を広げて見た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る