第676話 十二月十三日一回目のリハーサルを終えて 振り返り(一)
リハーサルを終えて第一幕からダメ出しが始まる。
最初に登場する唯たちの家族。唯、千春、本田の三人の演技について、もう一度、真理子と
唯の子どもらしい可愛らしい演技は特に手直しするようなことはなかった。千春と本田の演技に対して、真理子と青葉が、更に細やかなアドバイスをする。
続く、真由たちの家族も、今回は主に松田紀子と木田陽一の大人二人の演技に焦点を当てたアドバイスとなった。
そして、
この家族は、最初、
真理子や青葉だけでなく、すみれや
瑠々の演技は他の子どもたちと比べても非常にレベルが高い。自然で子どもらしい。恵子と明坂も、花村バレエの大人クラスのダンサーとして舞台経験は豊富だ。
しかし、何か知里の時とは違うやりにくさのようなものを恵子と明坂が感じているように思える。
演技の上手な瑠々が一人で暴走している様な感じはない。
園香や真美ばかりでなく、真理子たちも、その理由が定かにつかめない様子だった。首を傾げる様にしながら真理子が呟く。
「なんでしょう。瑠々ちゃんの演技は上手だし、恵子さんや明坂さんの演技も自然だと思うのだけど……」
青葉も首を傾げるようにして三人を見つめて言う、
「どこかやりにくいところはありますか?」
恵子と明坂が顔を見合わせて、
「うーん、普通にやってるつもりなんですけど……」
「今まで通りの演技をしているつもりですけど」
と言う。
真理子も二人を見て、少し困った様な表情で呟く。
「そうね。私にもそう見えるわ。瑠々ちゃんが一人で恵子さんと明坂さんを無視して演技している
「いや、瑠々ちゃんは僕たちに語り掛ける様に上手に演技をしてくれています。僕たちもそれに合わせるようにしているつもりですが……」
明坂と恵子が顔を見合わせて頷きながら言う。
「合わせとるから不自然やねん」
横で聞いていた
全員が葉月の方に振り向いた。
「合わせとるから不自然や言うとんねん。親役のあんたら二人が子ども役の瑠々に気いつこうて合わせとるからギクシャクした演技になんねん。この場面では、瑠々は、あんたら二人の子どもやろ……どっか、よその子みたいやで」
葉月の言葉に皆がハッとさせられた。
瑠々がにこにこしながら葉月に言う。
「葉月ちゃん、ええとこ突いてくるなあ」
「葉月先生や」
「まあ、瑠々は上手やからな」
と言う瑠々を、葉月が睨むようにして
「え、葉月ちゃんも扇子持っとるん?」
「葉月先生や。扇子は、普通、持ってるやろ」
「いや、普通は持ってないやろ」
瑠々が目を丸くして葉月を見て、隣にいる美香を見た。美香が笑いながら、
「瑠々は今まで通りでええ。いろいろ気にせず演技したらええ。山野さんと明坂さんも瑠々に対して、あまり特別な意識を持たずに普通に演技したらいいと思いますよ」
「はい」
戸惑うように明坂が返事をする。
「まあ、練習の時からいろいろ見てたら、周りのバレエ関係者の人たちの反応からも、瑠々が特別な子に見えるかもしれんけど……瑠々自身はそんなに思うてないから、普通の子どもと思うて接したらいいと思いますよ」
と美香が言うと、瑠々が微笑んで、
「まあ、そうは言うても瑠々は上手やからな」
と言って、美香に
その後、もう一度、恵子と明坂、瑠々の家族の演技をした。美香や葉月の言葉にリラックスできたようで、恵子と明坂は瑠々との気持ちの距離が近付いた様に見えた。
三人の演技はアドバイスを受ける前より格段に良くなった。温かい家族を見事に表現している。
そして、最後の四組目の家族。
特別目立つところはないが、とにかく自然に見える。演技をしているのではなく普通にいそうな家族というのが皆の印象だった。
そのあと、ドロッセルマイヤーの優一の演技は、
園香や真美だけでなく葉月や朱里たちもディディエ、ラクロワたちの演技に見入ってしまった。
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