第62話
俺はミックにテネブリアンで拾われた後、真っ直ぐホランドの店へ向かって貰う。
特に大きな問題も無く店へ辿り着き、中に入ると妹に作業台を占領された可哀そうな兄の姿が有った。デカい背中を丸めてスツールに
「よう、ホランド。仕事は完了したぜ。」
「ジョン、妹を助け出してくれて助かったよ。大分と厄介な相手が出て来たんだってな。アイツから聞いた。」
俺の入室に気付いたホランドが、哀愁漂う背筋を伸ばして立ち上がり此方へ振り向いた。
「ああ。だが、その相手とも話が着いた。彼女には、この件でこれ以上の手出しはしないとさ。」
「驚いたよ。まさか戦闘したのに穏便に話を付けてくれるとはな。これで俺も安心だし、アイツも今後は端末をしかっりと携帯するだろ。」
俺はホランドに返事しながら彼の隣のスツールへ腰を下ろし、背中の武器を外した。
ホランドは酒をグラスに注ぎながら、カウンターに置かれた箱を滑らせて来た。
「これは?」
「アンタの為に用意した物だ貰って欲しい。」
促されるままに箱を開けると中には、アーマーよりもマットな黒色をした大型のレールピストルが入っていた。
箱から取り出してリボルバー機構の円形マガジンに弾が無い事を確認後、店の壁に向かって構えてみると、スキルのサポートで問題無く狙いを付ける事が出来る。
「良いな、コレ。奴等と戦う時に持って無くて良かったかもな。」
「なんでだ?」
スキャンしてピストル内臓の制御装置とデータリンクした事により、思考操作で弾頭の加速度を調節する事が出来る様に成っている。
「これだけ有効そうな武器が手元に有ったら、話し合いなんてせずに撃ちたく成るからな。もし、そんな事に成っていたら、流石に死んでいたかもしれない。」
「なら、間に合わなくて良かったのかもな。」
あの時はこっちに対した攻撃手段が無いから、あっちも声を掛けて来た節が有る。
コレを手にして居たらそうは成らなかったかもしれない。
俺は手にしたそれを腰の裏へマウントし、箱はミックへ運ぶ様に指示を出して脇に退けた。
「それで、妹さんは何をムキに成って作業してるんだ?あれ、俺が貰う予定なんだけど?」
「最低限の機能しか修復して無いから、出来るだけ万全にするとよ。帰ってくるなり、作業を始めやがった。」
カウンター越しに妹の作業を眺めるホランドへ何が有ったのか尋ねると、彼にしては珍しくボソッと言った。
「直ぐに彼女が必要って訳じゃ無いから、俺は良いけど。ホランドの仕事はどうするんだ?」
「まあ、身の安全が保障されたそうだし。その内、自分の作業場に帰るだろ。」
溜息や諦めと共に吐き出された言葉は、希望的観測に基づいた物なのか自信は感じられ無い。
「そう言えば、俺が作ったアーマーを随分と活躍させたそうだな。広い物もくっつけやがって。調子を見るから、脱いでこっちに寄こしな。」
「分かったよ。ちょっと待っててくれ。」
ホランドから告げられた要求を聞いた俺は、ミックに代わりの衣服を持って来る様に命じた後、素直にスツールから立ち上がった。
誰も俺に注目して居ないのでミックが来る前にアーマーを解除し、カウンターへパーツを乗せて行く。
「じゃあ、後は任せた。俺はそろそろ倉庫で休ませて貰うよ。」
「ああ、好きに使ってくれ。」
アーマーから只の服へ着替えた俺は、ホランドへ声を掛けて今日は与えられたスペースに引っ込んだ。
扉を開けて昨日の寝床へ向かうと、資材とテネブリアンしか無かった部屋に椅子やテーブル等の家具が増えている上、瓶入り飲料やスナック菓子や包装された食事も用意されている。
「ミック、これは?」
「急遽、現金と時間が手に入りましたので購入しておきました。」
後に続いて来たミックへ尋ねると、彼は複数の硬貨が入った巾着袋を片手に淡々とした様子で答える。
中身入りの巾着袋をもう一つ取り出して此方に渡そうとするので、閉まっておく様に手を振って拒否した。
「それはミックが自発的に稼いだ分だから取っておきなよ。好きな武器や工具にパーツを買うのに使いな。」
「分かりました。ありがとう御座います。」
俺の言葉を聞いた彼は、それを何時の間にか装備していたポーチに仕舞い込み側を離れて行く。
俺はそれを尻目に食料品や飲料の封を開け、早めの晩御飯に洒落込む。
どれも地球に有りそうな雰囲気を放つ代替肉を使用した食料品に、日本の自販機でもギリギリ売ってそうな色のジュースをチョイスしたが、味を確かめると俺の目利きに間違いが無かったと感じる。
食事を手早く済ませた後はスマホを取り出してメニュー画面を開き、今日の戦果を確認して行く。
・戦闘により関連の戦闘チャレンジを複数達成。
・武器や道具をクラフトした事により関連のサバイバルチャレンジを複数達成。
・ホランドの依頼を果たした事によりクエストを達成。
報酬は主にクレジットとSPだったが、クエストの達成により新しく戦闘評価機能が追加されていた。
これは俺が倒した敵に関する情報を纏めた物らしく、賞金の有無や生死判定の確認に使える様だ。
この情報はギルド等の書式に則った物らしく、本人の身柄が必要の無い賞金を受け取るのに使えるらしい。
未獲得の賞金額などの気に成る情報が多いので、それらを見ながらゆったりと1日を終えた。
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