fake boyfriend 私の彼氏になって
Joker
第1話
可愛い彼女。
それは男の夢だ。
可愛くてスタイルが良くて性格の良い彼女なんて妄想の世界にだけ存在する幻想。
俺はそう思っている。
そんなパーフェクト美人はこの世には存在しない。
皆、どこかしらに欠点がある。
それが人間だとも思う。
だが、俺の彼女は性格以外は全てが当てハマる美少女だ。
スタイルはかなり良く、顔も良い。
もちろんモテるので、街を歩けば男に声をかけられまくる。
そんな俺の彼女だが、付き合っている俺はイケメンではない。
普通も普通、顔も普通だしスタイルも普通、他よりも秀でた事と言えば少しばかり家庭的な所だろうか?
そんな彼女と俺がなぜ付き合っているのか、その理由はただの彼女の男避け要因だ。
彼氏が居ると言えば男は寄ってこない。
だから彼女は俺を彼氏ということにして他の男を遠ざけた。
そんな関係は中学時代からで俺達は今年で高校二年生。
可愛い女の子とフリとはいえ恋人同士なんて羨ましいと言われそうだが、俺は正直この関係をに嫌気がさしていた。
「ちょっと慶史郎(けいしろう)。早くお茶買ってきてよ」
「自分で買って来いよ」
「私が買ってきてって言ってるの!」
「……はぁ、分かったよ」
俺の名前は榎本慶史郎(えのもと けいしろう)。
俺に顎で指示を出すこの女、美月霞夜(みつき かよ)の彼氏だ。
そうは言っても彼氏のフリをしているだけで実際はただの幼馴染。
昔から霞夜は可愛くて、いろいろな男子に迫られていた。
それを良しと思わなかった霞夜は俺を偽彼氏にすることで男子を遠ざけ、面倒な男子からのアプローチをかいくぐっているのだ。
超絶美少女の霞夜と俺ではもちろん釣り合いが取れない。
周りからは「なんでこんな奴と美月が?」と疑問に思われている。
まぁ、それだけだったら別に良い。
周りの言葉だって気にしなきゃ良いだけだ。
しかし、俺がこの関係に嫌気が指している理由は霞夜の性格にある。
「ほらよ」
「ちょっと! なんで緑茶なのよ! 今日は紅茶の気分なの! もう一回買ってきて!」
「別に良いだろ……折角買ってきてやったのに礼も無しか?」
「私が嫌だって言ってるの! それにアンタは私見たいな可愛い子と一緒にいられるんだから、こんな事は当たり前のことでしょ?」
「……はいはい」
そう、こいつは性格がかなり悪い。
上から目線の女王様気質でフリであっても彼女になってあげた事を感謝しろとまで言って来る。
こいつから彼氏のフリをしろと言ってきたのにだ。
「まったく、アンタは私のいう事を聞いてれば良いのよ。可愛い彼女を持ってるってだけで自慢になるんだから」
「………はぁ」
中学二年の頃から俺達は恋人同士だった。
まぁそうは言ってもフリなわけだが……。
もう俺は四年間もこのふざけた関係を続けている。
最初は男に言寄られて困っている霞夜が可哀想だと思って強力をした。
しかし、今では完全に俺を下僕として扱っている。
正直もう疲れた……。
だから俺は今日霞夜に言った。
「あのさ、もうこの関係やめようぜ」
「え? どういうこと?」
「だから、もうこの偽恋人関係をやめようって言ってるんだよ。正直お前に付き合うのが疲れた……」
「は、はぁ? い、いきなり何よ! い、良いの? 私みたいな可愛い子を恋人にするチャンスなんてもう無いわよ!」
「別に俺は恋人をアクセサリーみたいには考えてないから。お前のイメージに傷がつかないようにお前が俺を振ったことにしていいよ」
「そ、そう……じゃ、じゃぁ良いわよ! アンタが情けなくて私が愛想付かしたことにするから!」
「それで良いよ。とにかく平日も土日もお前に振り回されるのはこりごりだ……じゃあな」
「あ、あっそ! 良いわよアンタなんてただ幼馴染ってだけで選んだだけだし、次はイケメンの本物の彼氏見つけるから!」
「あぁ、頑張ってくれ応援してる」
俺はそう言って、一人で学校を後にした。
これで俺は一人身に戻った。
さらば俺の偽の彼女。
*
「う、うぅ~ん!! さて、今日から俺は自由だ!」
俺は彼女と無事別れることが出来、スッキリした気持ちで下校していた。
今までは放課後も彼女に束縛され、我がままに付き合っていたが、もうそんな事もないのだ。
「あいつの事だ、どうせすぐ新しい偽彼氏を見つけるか、それとも本物の彼氏を見つけるだろうな」
折角自由になった俺は明日からの生活について考えていた。
偽装の為に霞夜と電話する必要もメッセージを送る必要もない。
「帰ったら新作ゲームを思う存分やるぞ!」
そんな事を考えながらわくわくして帰っていた時だった。
「……どうしましょう……困りましたわ……」
公園で挙動不審にしている女の子を見かけた。
おろおろしながら周りをきょろきょろ見ており、明らかに困っている様子だった。
しかもその子はかなり可愛かった。
俺はずっと霞夜と一緒だったので正直美少女という存在は可愛い存在というよりも面倒な存在というイメージで、この子とも関わりたくないと思っていた。
しかし……。
「あ、あの……すみません」
声を掛けられてしまった。
「は、はい? どうかしましたか?」
仕方ない、話を聞いて交番に連れて行こう。
それが一番良いだろう。
「実は道に迷ってしまいまして、スマホの充電も無くなってしまって困ってしまって……」
「あぁ、そうだったんですか。目的地はどこですか?」
「えっと、この近くのカフェで待ち合わせをしているのですが分からなくて」
「どんなカフェですか?」
「青い看板で店名が確か……ミスなんとかと言っていたのですが……」
うーん情報が少ないな。
やっぱりここは警察の出番だな。
近くの交番に連れて行こう、そうすれば電話もあるし知り合いと連絡も取れる。
それに美少女と関わってもどうせ良いことなんてない。
俺はそう思って交番に連れて行こうと彼女を見た。
「は、早くしないと……困るんです……」
「あ、えっと……泣かないで下さい。一緒に探しますから」
そんな泣くのは卑怯だろ……。
俺は彼女の涙を目にして一緒に探すと言ってしまった。
くそっ……折角自由になれたのに。
結局俺は美少女に弱いらしい。
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