第64話
……屋敷の奥の広間で金髪の女がアンリ達を待ち構えていた。
「ようこそ……わたしの屋敷へ」
「さっきと様子が違うな……」
先程襲ってきた時と違い、女の意識は明瞭のようだった。
「この村で傭兵達がいなくなったのはアンタの仕業なのか?」
「ええ、そうよ……わたしが誘い込んだの……井戸の水は飲んだ?」
「……アンタ、人間じゃないよな?リゾーム感応値からみるとシェイマか?魔力波長が歪だが……どうしたんだ?」
「この身体にちょっとした細工をした……」
「細工?」
「……貴女達も彼らと同じようにわたしのコレクションの一部になって?隔離障壁構成……」
金髪の女が右手を掲げると、広間の出入り口と窓にアンリ達の脱出を防ぐための隔離障壁が構成される。更に広間の床の石材がせり上がり、成人男性の二倍程の背丈の石像へと姿を変える。
「ストーンゴーレムか!?」
「ラプスニードル」
金髪の女が床を足で叩くと、彼女の周囲の床から鉛筆大の石の針が無数に現れ、ディアスに襲いかかった。
「くっ!」
ディアスは放たれた石の針の躱し、砲弾を女に向けて放った。女の身体が爆炎に包まれる。
「……そう簡単にはいかねぇか」
女の衣服の一部が焼け焦げ、白い肌が覗いているが、魔法障壁によってディアスの攻撃は防がれ、女の身体に大きなダメージはないようだ。
「オクタヴィア気をつけろ!くるぞ!」
ストーンゴーレムがオクタヴィアへ巨体任せの無骨なタックルを仕掛ける。
オクタヴィアはタックルを回避し、ゴーレムの背後に回りこむ……ゴーレムの背中から腰にかけて刻まれた赤い輝く紋章が彼女の目についた。
「あそこか!?」
オクタヴィアは大型拳銃を抜き、赤い紋章に向け銃弾を放った。大きな鉛玉が紋章に直撃し石片が飛び散る。
攻撃を受けたストーンゴーレムはオクタヴィアへ向き直り、両腕を回転させ彼女に殴りかかる。
「動力や制御用の紋章じゃないのか……もしかしてダミーや飾り?」
オクタヴィアはハルバードでゴーレムの両腕を防ぎつつ、両腕の関節部分を狙い、攻撃を当てていく。
……突然、ゴーレムの足元から太い氷柱が出現し、ゴーレムの脚部を凍り付かせ動きを鈍らせる。
「よし!」
オクタヴィアは動きが鈍った隙にゴーレムの右手首を狙ってハルバードの鋭い一撃を放ち、ゴーレムの右手首を切り落とす。
「次は左!」
更にゴーレムの左肘にハルバードの攻撃を何発も叩き込み、ゴーレムの左前腕を切り落とした。
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