第62話 廃村

 ……物語の視点はアンリ達に戻る。


「さっきより瘴気が濃くなってきたな……アンリどうした?腹でも痛いのか?」


 瘴気計を確認していたディアスがアンリに声をかける。アンリは下腹部を押さえながら落ち着かない様子で太腿を動かしている。


「今、オレが履いてる下着……クロッチに仕掛けがあるみたいだ」


 アンリは廃屋にもたれかかかる……首元を大粒の汗が流れ落ちていく。


「うっ、股がムズムズする……多分、これは簡易の淵術刻印のようなもので瘴気を魔力に変換し、身体に魔力を送り込んで肉体を刺激して強化する機能がついてるんだと思う」


「アンリ大丈夫?顔が赤いよ」


 オクタヴィアがアンリの背中をさする。


「なんとか……うっ!」


 複合術式の刻まれたショーツが魔力をアンリの体内に注ぎ込む……アンリの骨盤が広がり腰回りの形状がより女性的なものに変異していく。


「はあはあ……くっ、ルーネの奴!……確かに身体能力と魔力は強化されるが……これは……元の身体に戻れなくなったらどうすんだ……」


 アンリの胸がより大きく膨らんでいく。


「わたしの予備の下着があるけど使う?」


「いや大丈夫だ、オクタヴィア……ちょっと落ち着いた」


 アンリは水筒の水を飲んだ後、汗を拭った。


「女の身体に変異したせいでリゾーム感応値が上がって、リゾームと魔力に身体が反応しやすくなってるんだ……何だか少し悔しいが、この下着をつけてれば大気中の瘴気が濃くてもある程度耐えられる……より感覚が強化されて、さっきよりリゾームや魔力の流れが良くわかるようになってきた」


 アンリは奥の屋敷に視線を向ける。


「なあ、ディアス……あの屋敷から何か感じないか?」


「いや、俺は何も……何かあるのか?」


「あそこに何か居るぞ、恐らく探知妨害をかけている……が少し魔力が漏れている……わざと少しだけ漏らして術者を誘ってるのか?」


「罠か?どうする?」


 ディアスが問いかける。


「わたしはいつでもいいけど?」


 オクタヴィアが大型拳銃の弾薬をチェックしながら応える。


「行くしかないだろ」

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