第53話 ヴィットーリオ
丸眼鏡をかけた男ヴィットーリオが書斎の机に置かれた幾枚の羊皮紙に目を通している。
「部屋に居るときはその仮面外したらどうですか?」
ヴィットーリオは書斎の整理をしている金髪の仮面の女に語りかける。
「いえ、これは……」
「……しかし、貴女とこうしていると帝都で学んでいた頃を思い出しますね……先生の書斎で……あの部屋もこんな匂いでしたね……あれからもう10年以上経ちますか、何故だか帝都の冬が懐かしい、書生の時分はあの冬が嫌だった筈なのにね」
「そうですね……」
「人材も順調に集まっています……貴女の……おや?」
赤毛の女騎士がヴィットーリオの前に現れた。
「失礼しますヴィットーリオ殿」
「サニアさんどうされましたか?」
ヴィットーリオは顔をあげ、羊皮紙から赤髪の女騎士サニアへ視線を移した。
「お邪魔でしたか?お時間よろしいでしょうか?」
「ああ、構いませんよ、そうそう、カサンドラさんの調子はどうでしょうか?」
「素晴らしいです、彼女は筋がいい、才能がありますね、吸血鬼の身体にも馴染んだようで使いこなしています……魔術の資質もありますね教え甲斐があります」
「そうですか、それは良かった、短期間で肉体が壊れてしまうこともないでしょう」
ヴィットーリオは机の上の書類へ目を落とした。
「我々の動向を嗅ぎ回っている者がいるようです」
「そうですか……急がなければいけませんね」
「ラディナのエレオノーラ大公の件ですが」
「あの大公殿も困った方だ……まあ、問題ありませんよ」
「わかりました」
「ああそうだ、サニアさん、先日貴女の入手したアムブロシアの魔女の魔導具なんですが、なかなか興味深いものでした……少々時間はかかりますが複製も可能ですよ」
「進捗は順調のようですね」
「貴女のお陰ですよ……そういえば、貴女はマリエスブールの廃坑の奥に何があるか知っていますか?」
「いえ」
「あそこにはですね……アムブロシアの魔女の遺体が封印されているんですよ」
「初耳です、聖都の地下施設に封印されていると思っていました」
「……マリエスブールの廃坑は古代の遺跡と繋がっていて複雑ですからね、何かを隠すには最適な場所ですよ」
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