第6話 学校デビュー
「おはようございます。今日から皆さんに勉強を教えるヴィヴィアンです。よろしく、お願いします」
迎えの馬車に揺られること、およそ三十分。
村の外れにある神殿学校へと無事に辿り着き、講堂での入学式を終えて教室へと案内された俺は、教壇でこのクラスの担任になる巫女が挨拶するのを聴いていた。
彼女はこれから皆が九年間、この学校へと通って読み書きや計算、歴史等を学び、それが終了したら神殿の奥にある召喚の間で儀式を行って、自分の
こんな綺麗な人が結婚もせずに巫女で一生を終えるのか、もったいないなと思いながら、彼女の巫女服に収まりきらない豊満な胸や細い腰、流れるような金髪に肉付きのよい尻等をじろじろと眺めていると、やがて彼女は俺にとって死刑宣告にも等しい言葉を口にした。
「それでは、今度は皆さんにも自己紹介をしてもらいますね」
ああ、ついに、この時が来たか。
子ども達は前の席から順に立ち上げり、元気よく名前や出身地、好きな食べ物等を上げていく。
そして、とうとう自分の番となった。
俺は覚悟を決め、口を開いた。
「どうも、てお、です。よろしく、おねが―」
教室は爆笑の渦に包まれた。
うわあ、子どもって残酷だなあ。
「こら、笑っちゃいけません! 失礼でしょ!」
彼女は子ども達を叱った後、俺を気の毒そうな眼で見つめた。
それから初めての授業。
ヴィヴィアン先生が黒板に簡単な計算式を書き込むと、子ども達は元気よく手を上げ、次々と答えていった。
先程から俺も、そのなかに混じって手を上げているのだが、一向に先生は指そうとしなかった。
「この子に当てたら可哀想」等と思っているのが見え見えだった。
ところが、答えが二桁になる計算式になると、手を上げているのが俺だけになった。
「そ、それでは、テオくん」
先生は渋々といった様子で、こちらを指し示した。
俺は真っ直ぐに黒板へと向かい、さっさと答えを書き込んで席に戻った。
「……せ、正解です」
彼女は唖然とした面持ちで、俺と黒板を見比べていた。
次の授業は読み書きの練習。
巫女先生が黒板に書いた文字を、子ども達が読み上げていく。
俺も読めはするのだが、発音はままならず、一人だけ浮いてしまう。
しかし、筆記になると立場が逆転した。
文字だけでなく、俺は簡単な単語や文章も書くことができ、
「とても綺麗な字ですね、スペルも合ってますし」
と感心された。
次は歴史の授業。
ソロモン王の建国神話を先生は読み聞かせ、いくつかの質問を生徒達にした。
こんなのは、楽勝だ。
俺が真剣に聞き入るのを面白がって、親父はこの話を何度も読み聞かせてくれたんだからな。
と言っても、上手く口に出せないので困っていると、先生が気を使って黒板に答えを書き込ませてくれた。
そうして、あらゆる教科で他の子を引き離し――
まあ、つまり結論を言うと。
やり過ぎた。
後で気付いたことだが、ザーラは我が儘一杯に育てられたせいか何でも自分が一番でないと気がすまないらしく、彼女から目を付けられた俺は、クラスから孤立した。
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