第26回「誘う」:いざなうものとはらうもの

 今にも遮断機が降り切りそうな踏切の向こう側に、ひらひらと振れる細くて白い腕が見えた。まるで、こちらにおいでと誘うような白い腕。



「あかんなあ」



 僕には効かないけれど、うっかり引っ掛かる人が出かけない。


 ほらみろ、青白い顔をした女子高生が、ふらふらと遮断機のその向こうへ踏み出そうとしていた。



「あかんって」



 彼女のこれまた細くて白い腕を左手で思い切り後ろへ引っ張り、右手で縦に一閃。


 直後に通った特急電車の通過音に紛れて、あの白い腕の持ち主の断末魔が上がったが、聞こえた人はいなかっただろう。



「あかんで、変なもんに引っかかったら」



 も含めて。




 やっと夢から覚めたように顔色を取り戻した少女を見下ろして、僕は笑った。




【了】

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