┣術技・烏京【二幕】


🔳その他の能力

■カード投げ

・烏京は道具を問わず、自在に投擲が可能。

 《鮫貝》特化の洋が絶賛する腕前。


 指をはなれた紙札カードが、宙を舞った。

 何の変哲もないトランプである。プラスティックですらない。

 舞い上がったそれが、廃スタンドの天蓋キャノピー付近で宙返りし、テーブル上の収納ケースへと滑り込む。

 おお、と声を揃えたのは、傍に立つ洋と青沼だ。

 トランプを投げた烏京からテーブルまで10メートル。普通に投げても容易に届かない距離を、当然のように届かせ、命中させる。ケースのサイズはトランプにほぼ等しい。バスケの遠距離3ポイントシュートが児戯に見える離れ技である。

 烏京の指が、次のトランプを引いた。

 無造作に放たれた紙札は、今度は高速回転し、鋭く大気を切り裂く。突き刺さらん勢いで壁に跳ね返り、落葉のように翻然ほんぜんと泳いだ末、またしてもケースに収まる。まるで魔法だ。


「洋くんの《鮫貝》だって、精確じゃないですか」

「さすがにここまでじゃねーよ。

 それにオレのは《鮫貝》に特化したやつだ。

 こいつみたく、何を投げても精確ってのは頭がおかしい。

 勉強にゃなるが、参考になるかは怪しいくらいだぜ」

                     ──【前幕】畔 蓮葉 VS 八百万 浪馬


■投げの専門家

・洋のクリアできなかった課題を鮮やかに解いてみせる


 上昇するボールを見定めた後、黒衣の若者はおもむろに目を閉じた。

 頭上に迫る剛球をおそれる素振りもなく、長い腕を背に回す。

 あわや頭に命中するというタイミングで、一歩前へ。

 わずかに身を捻り、膝をたわめる。

 両目を開いた刹那、戻された右腕は、鮮やかに黒球を掴んでいた。

 三つの穴は対応する指で塞がれている。こちらも注文通りだ。

「……いや、さすがとしか」

 思わず拍手する青沼をよそに、洋は真剣な表情だ。

「そうか……螺旋なんだな」

「フン──気付いたか」

「えっ、どういうことです?」

 話の見えない青沼を挟んだまま、烏京が洋を見やる。

「──回転する三つの穴を、点で追うから至難になる。

 点ではなく、線として捉える──

 回転が安定する限り、穴の軌道は正確な螺旋を描く。

 その螺旋を指でなぞり続ければ──穴の方から、指にはまってくる」

                     ──【前幕】畔 蓮葉 VS 八百万 浪馬


■投げの要諦

「──状況を把握し、適切な角度と力を与えれば、狙い通りに飛ぶ。

 至極単純な話だ──この程度の技に驚ける貴様らに、逆に驚く」

「単純じゃねえから、スポーツてのが存在してんだろ」

「──静物の標的を、外す方がどうかしている。

 動きに反応する獣を狙えて、ようやく松羽の初級だ。

 万物の動きを見極める──投げの要諦はそこにある」

                     ──【前幕】畔 蓮葉 VS 八百万 浪馬


■心眼

「《神眼》持ちのおまえなら余裕ってか?」

「俺に錯視の類は通用しない──

 残像がなければ、小刻みな突きというだけだ」

「おまえ、アニメ見ても面白くねーだろ」

「──生憎、見るつもりはない」

                 ──【二幕】畔 蓮葉 VS 八百万 浪馬 其の二

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