第8話 ラズバーの暴挙


「あのう?ラズバーの大行列というのは??」


「ラズバーはどこにいくにもすごい数のお供を連れて移動するのです。さながらサカースですよ。」


俺は窓から外を伺ったのだった。


すると確かに長い行列がこの市庁舎の近くにやってきており、この建物へと近づきつつあった。


するとラズバーの大声が響き渡ったのだった。


「ほら下民共!!!さっさと家のから出てこい!!目をしっかり開けて見てろ!!この大賢者ラズバー様のお出ましだぞ!!!」


すると閑散としていた大通りに人がたくさん出てきたのだった。


「ラズバーの声はするけど、姿は見えない。記録水晶に録音した声を流してるのか?」


「はい、ラズバーはいつもこの記録水晶の音声を自分が到着する前に流して強制的に人々を集めて無理矢理歓迎させているのです。」


俺の中には怒りはもちろんあったが呆れてもいた。


「本当に何考えてやがるんだ?あの野郎は。」


そして市庁舎の前に凄い数の人だかりができた。


市庁舎の前に急ピッチで簡易のステージが用意されると、何やら劇のようなものを始められたのだった。


ステージにはラズバーの部下らしき二人が立っていた。


「この大陸で二番目に偉い人を知ってる??」


「大賢者ラズバー様。」


「魔王を倒した大勇者クレシー様の次に偉いんだよね?」


「そうよ、大賢者ラズバー様はとても偉い人なのよ。大勇者クレシー様の次に偉い大賢者ラズバー様!!!」


「大賢者ラズバー様はなんと言っても魔王を倒した勇者様のパティー一行なんだよ。それってつまり私達の英雄ってことよ!!」


「僕らの大賢者ラズバー様なんだ!!!」


「大賢者ラズバー様のためならなんだってできちゃうわ。」


「大賢者ラズバー様に全財産を献上するのって幸せな事だよね。」


「すごい幸せ者よ。だってラズバー様に全財産を使ってもらえるのよ!!これほど幸せな事はないわ。」


「よし俺もラズバー様に全財産を献上して大賢者ラズバー様の役に立つぞ!!」


「そうしなさい。私も大賢者ラズバー様に全財産を献上して今とっても幸せよ!!」


そして寸劇はフィナーレを迎えた。


「さあなんと偉大な英雄大賢者ラズバー様があの馬車に乗っておられます。さあラズバー様が馬車から降りてくるこの世紀の瞬間を見逃すな!!!」


「絶対に見逃せないわ!!」


そして劇が終わった。


俺はため息をついてリール副市長に尋ねた。


「なあラズバーの野郎はいつもこれをやってやがるのか??」


「はいラズバーいわく英雄は喝采の中馬車の中から登場するものらしいので、価値のない連中がラズバー様の為に集合するのは当然の事だと言っていました。」


ようやくラズバーが馬車の中から降りてきた。


「さあ下民共!!!この誉れ高き大賢者ラズバー様に拝見するがいい!!そして全財産を献上するがいい!!!私こそが大勇者クレシー様の次に偉い大賢者ラズバー様だ!!」


強制的に集められた人々が渋々拍手をしていた。


「うーむ、これはまずいのう?ラズバーの奴ここに来るつもりじゃな。」


「まさか俺たちが密入国したのがバレたんでしょうか?」


「わからんな。」


「団長どうします?ラズバーの野郎をここでぶっ飛ばしてやりますか?」


「ここは隠れて様子を見るのが得策じゃろうな。ラズバーの部下達もたくさんいるようじゃしの。」


「分かりました。」


俺達はラズバーに見つからないように市長室の奥の部屋に隠れる事にした。


それからしばらくしてラズバーの部下が市長室にやってきた。


「ラズバー様のご来場!!!ラズバー様のご来場!!!」


ラズバーの部下が大きな声で叫び回った。


リール副市長が床に頭をつけて待っているとラズバーが現れた。


ラズバーは市長席に乱暴に座った。


ラズバーは悪態をつきながらリール副市長に言った。


「全く安っぽい机と椅子だな。このラズバー様が座るのに相応しいのを次来るまでに用意しておけ!!分かったかリール??」


リール副市長が慌ててラズバーに答えた。


「はい、もちろんでございます。大賢者ラズバー様。」


「大賢者ラズバー様?今日はどのようなご用件でしょうか??ホルキス王国にしばらくご滞在と伺っていたのですが?」


「ああ、リール??お前にとても大事な用事があってな。それで大慌てで戻ってきたんだ。」


リール副市長は平静を装っていたが、内心ヒヤヒヤしていた。


「大賢者ラズバー様?その大事な用事というのはなんの事でございましょうか?」


「これだ!!」


そう言うとラズバーは黒いマントを取り出したのだった。


そのマントを見せびらかしながらリール副市長に言った。


「どうだ?」


「このマントは??確か福音のマントでしたでしょうか?」


「うむ、魔王討伐の時に手に入れた福音のマントだ。お前が見たがると思ってホルキス王国の宝物庫からわざわざ持ってきてやったのだ!!!」


「そのために予定を切り上げて戻ってきたのですか??」


「そうだそのために戻ってきたのだ!!!見ろ!!!福音のマント鮮やかな黒色を。これがあれば状態異常を防ぐ事できる至宝の中の至宝だ!!!お前ら下民ごときでは一生触る事すらできないしろものだ。どうだ??うらやましいだろう!!自分の不幸をなげきたくなってきただろう!!!」


「はい、自分の不幸を嘆きたくなってきました。」


ラズバーはご満悦な様子で話を続けた。


「そうだろう!!そうだろう!!!このグリンダムにいるすべての人間なぜ自分はこの大賢者ラズバー様のお供ができなかったのか嘆いているだろうからな!!!まあ仕方ないな、お前ら下民とこの大賢者ラズバー様では生まれ持った才能が違いすぎるのだ。まあこれからもこの大賢者ラズバー様をうらやんで卑しく生きていくがいい!!!はっはっはっ!!!」


ラズバーが部下の冒険者に指示を出した。


「おいもういい!!!福音のマントをしまっておけ!!!」


「おおそうだ!!忘れるところであった!!リール!!ゼルス商会に魔法石販売を独占させる!!グリンダムにある他の魔法石市場は全て閉鎖しろ!!!いいな!!」


「とおっしゃいますと??」


「ゼルスが魔法石販売を独占できれば大儲けができるというからな。ゼルスの商会に独占させてやる事にしたのだ。」


リール副市長はラズバーに文句を言おうとしたがすぐに止めるのだった。


ラズバーの目が血走っていることに気が付いたからだ。


「おい!!貴様!!何をしている!!!」


ラズバーは突然自分の部下である冒険者を怒鳴りつけたのだった。


「えっ!!ラズバー様の指示通り福音のマントを衣で包もうとしているのですが?」


ラズバーが大声で怒鳴り散らす。


「アホか!!!貴様!!!しまっておけっていうのは見せびらかすためにそのままにしておけの意味に決まっているだろうが!!!そんな当たり前の事すら分からないのか貴様は!!」


その冒険者が土下座して謝っていた。


「申し訳ありません。ラズバー様。」


だがラズバーの怒りは全く収まらなかったのだった。


「そうか分かったぞ!!!お前魔物に魂を売り渡したな!!!この大賢者ラズバー様に逆らうなんて魔物に魂を売らない限りありえないものな!!!」


その冒険者が必死でラズバーに許しをこうていた。


「福音のマントの事は本当に申し訳ありませんでした。ですが魔物に魂など売っておりません。大賢者ラズバー様、誤解でございます。」


だがラズバーはその冒険者の言う事に一切耳を貸さなかった。


「おのれ魔物の手先め!!!」


ラズバーはそういうと電撃魔法のスパークを詠唱したのだった。


ラズバーが唱えた電撃魔法が冒険者を貫いた。


「うぎゃあああ!!!!お許しください!!」


その冒険者が電撃魔法に撃たれてその場に倒れてしまった。


「誰が許すものか!!」


だがラズバーは再びスパークの詠唱を行い、その冒険者を再び電撃魔法のスパークが貫いてその冒険者は絶命してしまった。


冒険者の遺体が転がってしまった。


ラズバーの部下達が唖然としているなか、ラズバーが大声で怒鳴りつけた。


「おい!!なにつ立ってやがる??はやくこの汚物を片付けろ!!!」


ラズバーの部下である冒険者達が慌てて殺された冒険者の遺体を運び出していった。


そしてラズバーは再び笑顔となった。


「正義の鉄槌が下されて気持ちがいいな!!!みなも楽しいだろう!!!なにせこのラズバー様の魔法をじかで見る事ができたのだからな。」


最も満面の笑顔のラズバーとは違って他の全員が顔をひきつらせていたが。


「そうだ、リール!!!」


「はい、大賢者ラズバー様なんでしょうか??」


「見物料を支払え!!」


リール副市長は言葉の意味が分からずにラズバーに聞き返した。


「見物料というのは?」


「この大賢者ラズバー様の魔法スパークによって魔物に魂を売った奴が始末されたんだ。つまりお前は大賢者ラズバー様を魔法をじかで見る事もできたんだ。これほど光栄な事はないだろう。だからその見物料を払えと言っているのだ。」


リール副市長は全く納得できなかったがとりあえずラズバーに合わせておくのだった。


「なるほど。」


「よし来週までに10億ティルをこのラズバー様の宮殿まで持ってこい!!わすれるなよ!!!」


「わかりました!!!大変おもしろいものをみせて頂きありがとうございました!!」


「そうだろう!!そうだろう!!大賢者ラズバー様はまた善行を積んでしまったな!!!よし帰るぞ!!!」


ラズバーの部下の冒険者達が叫んだ。


「ラズバー様のご退場!!!ラズバー様のご退場!!!」


こうしてラズバーは市長室から去り、そしてラズバーが建物の外に出て行った。


ラズバーは大行列を引き連れていずこかに消えていった。


俺達はようやく奥の部屋から出る事ができた。


「やっと帰ったようじゃな。」


「大丈夫だったのか??なんか悲鳴が聞こえてきたが。」


「私は大丈夫です。」


リール副市長はラズバーが意味不明な理由で部下の冒険者を殺した事を俺達にに教えてくれた。


「なんじゃと、あやつまた殺しおったのか?」


「はい、ラズバーが自分で部下の冒険者を殺しておいて我々にこの殺人の見物料を払えと言ってきました。」


「本当に何考えてやがるんだ??ラズバーの野郎は!!!」


「どうかラズバーを打倒してミリアを助けては頂けては頂けぬでしょうか??もちろん竜騎士の方々の身分の保証、そしてドラゴン達の安全をご提供いたします。必要な物資や資金ももちろん提供させていただきます。いかがでしょうか?」


「団長!!ミリアさんを助けに行きましょう。あのラズバーの野郎にお返しをするチャンスが巡ってきたんです。ラズバーの野郎をぶっ倒してやりましょう!!」


「ありがとうジャン。」


「そうじゃな。あい分かった。リール副市長必ずラズバーを打倒してミリアを助けると約束しよう!!」


「ありがとうございます。」


「レティシア様??このまますぐにラズバーの所に??」


「いやちゃんと作戦を練ってから動いた方がいいじゃろうな。」

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