第48話 離島の戦い
米中が全面戦争に突入したことで、日本がその矢面に立つことは必然だった。広島県呉を母港とする第1潜水隊群第3潜水隊所属の潜水艦けんりゅうは尖閣列島の防衛任務に当たっていた。中国人民解放軍の071型揚陸艦と玉庭型揚陸艦合計5隻が兵員等を魚釣島に上陸させようと準備をしていた。もし、上陸を許せば戦車100両、兵員3千名以上の規模になる。
けんりゅう艦長の牧田二等海佐は決断を下した。
「1番から6番まで魚雷戦用意」「1番装填完了、2番装填完了・・・」
「1番注水完了、2番注水完了・・・」「全魚雷発射」牧田艦長は潜望鏡で89式魚雷の6本の航跡が真っ直ぐ揚陸艦に向かって進んで行くのを確認すると急速潜航を命令した。狩る側から次は狩られる番になるからだった。
その頃、与那国島の陸上自衛隊駐屯地は中国人民解放軍の激しい攻撃を受けていた。駐屯している150名ほどの隊員は急造で設営された防空壕に退避していた。数十機からなるJ-16(殲撃十六型) 戦闘爆撃機の爆撃により島の西側久部良の近くにある与那国駐屯地は完全に破壊された。対空戦闘を行う前に島の中央部にあるレーダー施設を真っ先につぶされたのが致命的だった。
「皆んな聞いてくれ。尖閣列島に上陸しようとしていた中国人民解放軍の揚陸艦は5隻のうち、4隻は海上自衛隊の潜水艦による魚雷攻撃により大破沈没したそうだ」隊長の言葉に防空壕の隊員たちから一斉に歓声が上がった。
「隊長、航空自衛隊は与那国に応援に来てくれないのですか」「敵の物量は圧倒的だ。離島にまで手が回らないのだろう。日米が航空優勢を確保するまでは我々だけで持ちこたえなくてはならない」与那国沿岸監視隊長の梶原二等陸佐は空爆に耐えうる防空壕と上陸してくる敵を向かい撃つための防御陣地の強化を赴任すると同時に始めていた。その成果がまさに試されることになった。
防空壕から防御陣地に移動した梶原隊長が目にしたのは青空を埋め尽くすほどの白い傘だった。それはパラシュートで降下する中国人民解放軍の特殊部隊だった。「敵がやってくるぞ。出来るだけ引きつけるんだ」梶原は隊員に攻撃準備を命令した。
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