第34話 エルゾアとポテフ

「なっなな!? 言うに事欠いてブタ小屋じゃと!? 我を封ずるこの堅牢を豚小屋とはなんつー言い草じゃっまさか中の我をブタ扱いしてると言うのか!?」


「いやっ単に牢屋を俺達がいた国じゃ豚小屋呼ばわりしていただけだが?」


 無言で偽マイルが剣を向けて来たので一応は弁明しておこう、ハッキリ言って戦っても勝ち目なんてないので何とかこの場を逃れたいのだ。


「フンッ本当に訳の分からん文化を持っている世界じゃのお前の故郷は!」

「…………まるで俺の故郷に心当たりがあるみたいな言い方だな」


「フンッあるに決まっておるわ、お前はこことは異なる世界から来た者じゃ、あの忌まわしい存在によってな!」

「!」


 コイツ……まさかここまで言い切られるとは思わなかった。

 確かに顔の掘りが浅いだとか体格だとかでこの国の人間じゃないと判断されるのは分かる、しかし違う世界の人間だなんて言葉、なんかのボケか余程の確信がなければ口に出来ない筈だ。


「あの忌まわしい存在? ソイツは誰だよ、それといきなり違う世界とか言われてもな」

「あ~そう言うやり取りは面倒くさいからよいよい、我は貴様をこの世界に寄こしたあの見た目クソガキなヤツを知っておるんじゃ」


 どうやらあのクソガキ神を知っているらしい、ヤツがクソガキなのは流石に普通に会ってないと分からない筈だ。


 やはり本当に知り合いなのか? しかしヤツはクソガキ神、普通に恨みとか持たれてそうなので知り合いですとか認めたらまた戦闘再開とかって話になりそうで怖い。


「なら聞くが。アンタはそのクソガキ神に敵対する存在とかなのか? まさかここに幽閉したのがクソガキ神だなんて言わないよな」


「もしそうならポテフ、そこの我が従者が貴様を速効で消している。ヤツとはかつて利害関係が一致してな、しばらく共に行動をしておったのじゃよ。だからヤツの適当さとか録でなさならよく知っておる」


「………どうやら本当に恨みとか持ってるヤツじゃないみたいだな」

「なんじゃそんな事を気にしていたのか?」


「ああっヤツはクソだからな、俺にチートを寄こすどころか最低限の強化要素すら与えなかったタコ野郎だ、あらゆる存在に嫌われていても不思議じゃない」


「あ~~まあの、我も普通にヤツは嫌いじゃし言いたい事は分かる」

 少し話してもみた結果、まあ少し信用しても良いかなと思った。クソガキ神をクソみたいに言えるヤツに悪人はいない可能性が高い。


 何故なら俺がそうだからである。

「それで、こんな回りくどい事をして俺をここに来させたのには理由があるのか?」


「あるのじゃ、お主にはこの堅牢と我の呪縛の封印を解いてほしい」

「そんなん出来るか、俺魔法なんて使えないんだぞ」


 ホント異世界に来て魔法の一つも使えないとかどうなってんだよ、ゲームバランスクソ過ぎるぞこの世界は。


「いやっ出来る、我の封印はこの世界とは違う世界の人間にのみ解ける封印なのじゃ。お主がこの堅牢の触れて封印の消滅を望めば封印は消える」


「そんなお手軽に消えそうな封印あるか? 解いたら俺にデメリットとかないだろうな」

「良いからやって」


 偽マイルが剣をこっちに近付けてくる。

「ちょっ! 武器で脅すとか辞めろよ、従者の教育がなってねぇぞ豚小屋の魔女さんよ!」


「ぶっぶぶ豚小屋の魔女!?数多の名で呼ばれし我でもそんな不遜な名前で呼ばれたのは初めてじゃぞ!?」


「主の名はエルゾア! その豚小屋なんて名前でまた呼んだら切るぞ」

「あ~はいはい、わるうございました~」


 このままじゃ拉致があかん、仕方ないので俺はエルゾアとやが入ってる牢屋に向かって歩く。


「なあっエルゾア……さん? アンタはなんか凄い存在みたいな感じだが、何でこんなカルカト近くの遺跡のそれもショボい洞窟の奥なんて場所に封印されてんだ? 普通ならもっとこう、物凄くヤバそうなダンジョンの奥とかじゃないのか?」


「なんじゃ気付いておらんかったのか?」

「?」


「この遺跡はお主がカルカトに現れてから発見されたじゃろ? それとお主が通って来た洞窟、ただの洞窟じゃと思っとたのか? あれは魔法によって進もうとする者が強ければ強い程、複雑怪奇な魔法空間を構築し、多くの守護者を召喚すると言う魔法が仕掛けられていたんじゃよ」


「なら俺が強かったらむしろここに来るのに手間がかかったのか?」


「むしろほぼどんな能力を持とうが踏破するのは不可能に近い、なんの力もないお主だからこそ無事にここまでこれたのじゃ、本当にあの存在にしてはよく働いたもんじゃよ」


 俺はエルゾアの言葉を聞いてまさかと思った。

「オイッまさか俺が強化要素なしでこの世界に来させられたのって…」


「うむ、我をこの封印から解き放つ為じゃろうな」


 豚小屋の魔女の言葉に、俺は驚愕した。

 そして何やら久しぶりに聞いた音が鞄からした、それはあのスマホからの着信音であった。


 電話番号は表示されてない。

 しかし今このタイミングで電話してくるヤツなんて、俺には一人しか心当たりがなかった。

 俺はスマホに出る。


「……………もしもし?」

『やあっ! 僕だよ僕僕、皆大好き無能な凡人を異世界に送り出してあげる神様だよ~~!』


 クソガキ神から電話がきた!

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