第32話 アラサーの活躍

 サボン遺跡の探索を開始してから三日が過ぎた。

 俺とマイルはまだ何の宝も見つけていないが、他の冒険者の話によると少しずつ遺跡のお宝が出土しているらしい。


 依頼人のマルコも上機嫌だそうだ。

 その日の夜、俺達冒険者はサボン遺跡の入口に陣取った幾つものテント、ベースキャンプにて休む。


 風呂もないので桶に少なめの水を用意して布で身体を拭くことしか出来ないがな、カルカトには大衆浴場があったので風呂は何とかなっていたんだが…。


 もう帰りたくなってきた、マイルはそんなの全く気にしない鋼のメンタルを持っているから平気らしいがな。

 テントの中で薄い布団を敷いて横になる、他の冒険者との雑魚寝だ。


 本音は一人で寝たい、しかし金もなければ大して活躍もしてないアラサーにはこんな扱いが妥当なんだろうな……世知辛いな~。


 さてっ遺跡探索の愚痴はここまでにして、何故に俺達が他の冒険心と違って録に成果を出せないのか。その理由を説明する。


 それはマイルのせいである。

 何故か分からないがアイツは他の冒険者が居ない所(つまりはお宝の気配がまったく無い所)を選んで探索しているフシがあるのだ。


 まあ俺はマイルは半分俺の依頼人みたいなもんだから好きにさせているが正直大丈夫かよコイツと思っている。


「まっ言っててもしょうがねぇか…」


 取り敢えず寝るとしよう、明日もシンドイ肉体労働だからな。あ~あ本当に身体が資本の文明レベル低めの世界はヤだわリモートワークとかオッサンもしてみたいよ。


 そして翌日、遺跡探索中にて。

「新しい部屋を発見した、しかし部屋の中央に魔物が巣くっている。恐らくピデオンだ」


「…ピデオン?」


「頭が羊、身体は人間っぽい悪魔みたいな魔物、魔法とかは使わないし頭もあんまり良くないけど力が強い。決まったテリトリーの中に入ってきた敵は人間でも魔物でも容赦なく襲うの」


「は~そんな魔物もいるのか」


「それと魔法は使わないけど特殊能力はある、ヤツは自身のテリトリー内では戦闘力が倍加する。テリトリーから出せば簡単に倒せるけど滅多に出る事はないの、どうするのかしら?」


 コイツ完全に他人ごとだな。もう少し一緒の依頼を受けてる人間に心を開いても良いだろうに。


「俺少し行ってくる」

「………え?」

「あれなら多分どうにかなると思うんだよ」


 マイルは何か言いたげだが無視する。

 俺は部屋の前に陣取っている冒険者達と合流した。


「お前も遺跡探索の依頼受けた冒険者か?」

「そうだ、俺の名はレックス。その部屋の中を見せてもらってもいいか?」


「構わんが中に入るなよ? ピデオンはバカだが強い、何とかして部屋の外に出さないとな…」

「まっ見てみないと何とも言えないが、何とかなるかも知れないんだよ」


 どれどれ、石造りのこじんまりした部屋だな、本当に部屋の真ん中に腕を組んで偉そうにしてる悪魔みたいなヤツがいた、小さなコウモリみたいな羽を生やしてたぞ、アレで飛べたりするのか?。

 イヤッ無理だろ。


 まあそれは良いとして、部屋に換気扇なんてもんはなさそうだな、これならいけるか。

 俺は青い丸薬を取りだした。


「ん? ソイツはなんだ?」


「火で炙ると大量の臭い煙を出す丸薬だよ、コイツを中に放り込めば多分あのピデオン部屋から出て来るから部屋から出て来たらこの場の冒険者でボコればいけるだろう?」


 周りの冒険者の誰かが『臭いだけの煙でピデオンを引きずり出すとか出来るかよ』と言った。

 だから物は試しだって言ってんじゃん。


 俺は木の棒に丸薬を突き刺してランタンの炎で炙る。煙がうっすら出始めたのでそれをピデオンのいる部屋に放り込んで部屋のドアを閉めた。


 そして数分後、中からもの凄い不快な雄叫びをあげたピデオンが鼻を押さえながら部屋から飛び出して来たんだなこれが!


 後は少し困惑顔の冒険者達が武器を手にピデオンをボコカスに殴って倒してくれた。

「……あの丸薬、どんだけ臭いんだよ」

「魔物が無理ってなるくらいかな?」


 激にが丸薬の時に学んだ事だが、自分を使って丸薬の効果を試す事は二度としない。俺のカラダが保たんからだ。


 部屋に入ろうとするともの凄い匂いが部屋から離れてもしてのでしばらくドアを開けっ放しにして放置する事になった。


「余計な事に時間を使った」

「困った時はお互い様って言わないか? 少しは依頼に貢献しても良いだろうに」


 少し不機嫌になったマイルを宥めながら遺跡探索を再開する。


「けどマイル、お前は何を探してるんだ? 目的の物が分からないと探しようがないぞ」

「………別に、そんな物はない」


 まっまだ別の目的なんてないと言い張るつもりかコイツ……ハァッまあいいか。

 そしてまた他の冒険者が居ない場所を探索する、すると足下が少し揺れた。


「ん……なっなんだ!?」


 落とし穴か! 俺は下に落ちた。

 しかしそこまで深くはなく石造りの地下の更に下は柔らかい土だったので大丈夫だった。


「これは、落とし穴じゃないのか?」

 なんか今度は洞窟がみたいな感じのが続いていた、まるで隠し通路を見つけた気分だ。


 マイルが横に平然とジャンプで下りてくる。

「良くやったわレックス、ここよ」


 ほうっ何やらマイルの目的地への道を発見したっぽいぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る