第30話 遺跡の探索
昨日はマイルの鼻をあかしてやったわ。俺が料理すら出来ないと舐めていた赤髪が結構驚いていた、ざまぁ見ろ。
気分良くその日は寝ることが出来た。夜の見張りは他の冒険者がしてくれる事になったのも地味に助かった。
そして翌朝、俺達はサボン遺跡へと足を踏み入れる。
サボン遺跡、見た感じは確かに遺跡だ。
人工物と思われる石の柱やら建物の残骸に苔が生えている。
アンコールワットをかなり廃墟よりにした雰囲気とでも言えばいいだろうか、確かに宝の一つや二つありそうな雰囲気だ。
但し遺跡の規模はそこまで大きくない、と言うのもマルコの話だとこの遺跡は地下があるらしくそっちの方がかなり広いんだとさ。
他の冒険者達が武器を手にしている、俺も金属の棒を手にした。マイルは相変わらず素手のままだ。その腰の剣って本当に飾りなのか? なら俺にくれよ。
そんな事を考えながらサボン遺跡に侵入した。
建物の内部も結構荒れてるな、部屋の中央には大きな階段がある、あそこから直ぐに地下へ行けるらしい。
他の冒険者が我先にと進む中マイルは少し遅めのペースで歩いている。俺もそれに合わせた、やっぱり発見されて間もない遺跡って事だし罠とかを警戒してるのか?
「マイル、やっぱりこの遺跡にも罠とかあるんだよな?」
「多分あると考えた方が無難よ。後は遺跡に巣くった魔物とかだね、地下の空間って暗いから不意打ちとか受けやすいから」
「成る程、だから先に冒険者を行かせてる訳か相変わらずやる事がセコいな」
「………怒るよ?」
怒られたら嫌なので黙る事にした。
しかしやっぱり地下は暗いのか、考えると当たり前だよな、光が届きそうもない場所だし魔物や罠を考えると油断出来ない。
と言うか真っ暗闇闇の中を人間はまともに歩けないよ。
しかし! そうっここはファンタジーで冒険とかする世界なのであのアイテムがあるのだ。
俺は鞄をゴソゴソした。
俺はランタンを取り出した! テッテレ~~。
「へぇっ少しは準備して来たんだ」
「そりゃするさ、マイルはランタンくらい持ってきてないのか?」
「当然持ってきてるわよ」
マイルも鞄からランタンを取り出した。
お互いにランタンに火をつけると片手に持って地下への階段を下りる。
俺達みたいにランタンを持っている冒険者以外にも松明に火をつけるヤツや魔法で光る玉を出してるヤツもいた、それぞれ自分流で視界を確保しているな。
無論、光は仲間に任せて武器を手に周囲を警戒してる冒険者もいる。それぞれのスタイルが見れて俺はいい気分である。
「けどこれだけの人数がいれば、地上みたいに魔物も逃げていくんじゃないか?」
「魔物にも色々いるわ、自分のテリトリーに入ってきたらどんなヤツにも容赦しない魔物もいるから気をつけて」
「成る程ね、そう言うヤツに限ってこんな陰湿な場所に居そうだもんな」
適当な会話をしながらランタンの明かりを頼りに回りを見る、やはり遺跡な感じなのは会話を下りた後も変わらない。
壁や床、は石造りで天井は洞窟みたいに土の天井になっている。規模を考えるとよく地下にこんな空間を作れたな、流石にファンタジーって感じだ。
但し遺跡って聞いてイメージしてたヤツよりもかなり内装がシンプルなのでそこまでデタラメなファンタジー感はなかった。
まだ入ったばかりなので罠とかもないし、このまま安全に探索を進めたいのだが。
そこで最後尾のマルコが余計な事を言い出す。
「よしっここからは各々のパーティで自由に探索してもらって構わない、とにかく効率よく仕事を進めて成果を持ち帰ってくれ」
言うだけ言って階段近くで連れて来た侍従にイスやら丸テーブルやらを準備させて休憩タイムを開始するマルコ。
金を出す側は言うだけだから羨ましいよな、労働契約ってあくまでも対等であるってさ、本当に言葉だけだよな。この格差は何だよって話だ。
「マイル、ここからの探索はどうする?」
「マルコが何を言っても身の安全を優先して、はした金で命を賭けるなんて馬鹿のする事よ」
「わかった」
ウチのパーティメンバーが馬鹿じゃなくて助かった。基本的に無茶しか言わない会社の人間には適当に返事だけして現場の方で臨機応変にするのが仕事を続けるコツだ。
何でもかんでも要求に応えていたら身が保たんし、何よりそこまでしてやる給料なんて貰ってない。転職の手間が面倒だから居るだけの職場ってヤツだな。
他の冒険者が進んだ後を様子見しながらの探索だ。効率なんてのは言わせたい阿呆に言わせておけ~って話である。
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