第24話 勉強中のオッサン

 野営の事はツバイのパーティメンバーである女冒険者のタニスが教えてくれた。


「基本的には魔物に見つかり難い場所が無難ね、夜に火をたくのも夜の魔物が寄ってくる危険があるから一人で旅するなら避けた方がいいわ」


 成る程、普通の獣なら火を怖がる。しかし人を食べた事のあるクマとかはその明かりの方に人間がいる事を知ると逆に寄ってくるとか。


 魔物は基本的に人間をご飯と考えてるから火をたくと寄ってくるのか。

 ここら辺はまだ夜も温暖だ、けど寒い季節になると大変だな。


「どうしても火をたいて暖を取りたい時は?」

「その時は他に仲間がいれば見張りを交代でするしかないわ」


 むしろそれが出来ないからソロでの旅は夜に微をたくなって話になってるんだろうな。

 後は野営をするなら最低三人は欲しいとか洞窟とかないなら身を隠せる場所を探せ細かな話を聞いた。


 そしてタニスからのレクチャーを受けながら野営の準備をしていく、そしてテントの設置やら焚き火のが完了したら野営料理である。


 ツバイ達が持ってきていた食材、お肉やら根野菜やら香辛料やらを鉄鍋で調理する。

 一応スープよりの料理だ、イメージとしてはポトフに近い。


 味も美味い、少なくともこの世界ではまともな料理だと思えた。

 そして温かくて美味い料理を食べると自然と会話も弾む、俺は新人冒険者の三人と話をしていた。


 見張りはツバイ達がしてくれている、もう少ししたら寝る人間と起きてる人間を決めてローテーションで仮眠を取るらしい。


「へぇ、じゃあレックスは調合師なのか」

「ああっ」


 と言ってもなって数日のド素人だけどな、別に資格制って訳でもないので適当に名乗る事にした。


 ジョブが無職もままってのもあれだし、この世界で冒険者って犯罪者が隠れ蓑にしてる事もあるらしいのであくまでも副業で冒険者と言う事にしたいんだよな。


 ちなみに新人冒険者の四人の男はダルとウィル。女子二人はムインとパニエと言う名前だ。

 最初に集まった時に名前だけは聞いていた。


 装備は男子共はショートソードで女子達はダガー、防具までは用意出来ていないようだ、流石は新人冒険者である。


 良くそれで冒険しようって思えるよな。俺は武器すらないけどな、棍棒売っても安かったから金がねぇんだよ。

 会話は主に男子だけとした、本当は女子と話したいが残念ながらオッサンは女子に警戒されるのだ。


 それも問答無用でな、小汚いオッサンが紳士的に見られる事はない。

 会話の内容は何で冒険者になったとか故郷はどこだとかって言う特に実のない会話だ、適当に嘘を並べる事にした。


 クソガキ神の導きで異世界から来ました! とか阿呆かと思われるだけだからな。


 そうこうしてる内にローテーションが始まる、ツバイ達のパーティーの残り二人、マゴットとザイルが見張りの時に注意する事を教えてくれた。


「夜は異変を感じたら直ぐに仲間を起こせ、下手に自分達だけで対処しようとするなよ」


「後、冒険する場所によっては特殊能力で殆ど察知できない魔物が現れる場所もあるわ、そう言う手合いは魔法の結界を使える仲間が居ないなら日帰り出来る依頼以外は受けちゃ駄目よ」


「そっそんな魔物までいるなんて……」

「しかもそう言う姑息な魔物なのに限ってやたらと強いんだ」

「「怖~~い!」」


「「「………………」」」

 ちなみにザイルと元気に喋ってるのは俺とは一切会話をしなかった新人冒険者の女子二人な。

 ザイルは、金髪のイケメンである。


 素直なのは多いに結構……くたばれ。

 二人の新人冒険者の男子共々モヤモヤしたものを抱えながら仮眠を取ったり見張りをしたりして夜を明かした。


 そして翌日、遂に俺達は魔物と遭遇した。

 出会った魔物は大きなワニに近い生物だ、手足が俺が知るワニよりもムキムキしてる。


 恐らく陸上生活に適応したヤツなんだろう、あの大きな口でガブリとやられたら死ぬな。

「よしっ先ずは俺達があのダイルを…」


「あっすんません、少し良いですか?」

「ん? どうしたんだレックス」

「あの魔物に俺が調合したアイテムを試したいんですが、駄目ですか?」


「お前は調合が出来るのか、別に毒薬とかじゃなければ良いぞ?」

「それなら大丈夫だと思います、丸薬で単純に死ぬほど苦いってだけの物ですから」


 ツバイパーティのタニアに『そんなの何の意味があるの?』って言われた。

 まあ俺も本当に苦いだけの丸薬で魔物に効果なんてあるのかを確認したいから使って見たいんだと説明した。


 ちなみにこのクソ苦い丸薬、少し俺流に手を加えてある。獣脂を薄く塗って木の実を潰した粉でコーティングしたのだ。


 これで木の実を食べる魔物や動物も食べてくれる……と思われる。

 俺はダイルと言うあの魔物の傍に数個の丸薬を投げつけた。


 魔物と言ってもあのクマ公みたいにやたらとアクティブに喧嘩を売ってくる手合いはばかりではなく、あくまでも自分のテリトリーに入って来ない限り襲って来ない魔物もいる。


 あのワニはそう言う魔物なのだそうだ。

 そのテリトリーに入った丸薬を見た目には想像も出来ない速さで食べた。地面の土ごととか……流石は魔物なワニである。


 さてっ俺のお手製丸薬の効果はあるのか?

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