File3 新里秀作

 俺は九鬼泰照。裏で蔓延る秘密を世に照らす、暴露屋代表の情報屋だ。

 さて、今宵も暴露屋には依頼者がやってくる。

 今回の依頼者は風見篤かざみあつし

 どうやら中小企業で働くアラサーのサラリーマンなのだとか。

 「伝手を頼ってここまで来ました。貴方は、私のお願いを聞いてもらえるのでしょうか」

 「よろしいでしょう」

 「では、話します。それは、私が中学生の頃でした」




 当時13歳であった風見は、賢いわけでもなく、ましてや頭が悪いわけではなく、ごく普通の中学生1年生であった。

 しかし、友達や教師の仲は良く、所謂、愛されキャラだった。

 そんなある日、風見氏のクラスである1の3に、とある若手の教師がやって来た。

 「どうも皆さん、1の3を担当する、新里秀作にいざとひでさくと申します。これから、よろしくおねがいします」

 その新里というのは、前任の教師が他校に行った事によって新しく来た新任の男だった。

 実は、この新里という男、自分より年下の者をイジる、サディストな一面を持っていた。

 しかし、そのイジりは、やがて過激な物になっていった。

 特にそのターゲットは依頼者である風見になることが多かった。

 ものを隠し、後ろから殴り、何故か尾行したり………まるで罪悪感の無い子供のようだった。

 実際、新里には罪悪感なんてものは無かった。何故なら、父親が当時風見が通っていた仁室にむろ中学校の校長だったからだ。

 新里が何かを起こすたびに、父親がそれを揉み消していたのだ。

 これを聞いただけで、胸糞悪くなったが、この話には続きがあった。

 それから数年後、仁室中の同窓会にて、風見は最悪な存在に出会うことになる。

 その存在というのが、新里秀作だった。しかも、校長となって。

 その瞬間、風見の中で何かが爆発した。しかし、殺しをしてしまうと、自分は数年間を棒に振ってしまう。なので、ここに来たのだという。




 「お願いします。新里を堕としてください」

 力強く握る手には怒りがこもっていた。

 「わかりました。この暴露屋。新里を堕としてみせましょう」

 風見を帰らせると、俺は新里の情報を詳しく調べた。

 新里秀作。40歳。現在仁室中学校の校長をしている。

 性格に難アリだが、そんなのはどうでもよく、本人も笑ってごまかしている。

 圧倒的サディストで、彼曰く『やられる方が悪い』という下衆な考え方を持っている。

 俺はまず教育委員会にこれらをリークした。

 そして、この事はテレビで報道。そして、坂道を下る鞠のように新里は崩れていった。




 ある夜。ボディーガードの比嘉と歩いていると一つの倒れた何かとその近くに人がいた。

 何かと思って近づくと、そこには、ナイフを持ち、返り血を浴びた風見と、奴に刺されたであろう新里がいた。

 「アンタ……」

 「俺は……………ここの底からコイツを憎んでいた。失脚程度でオレの心は満足出来なかった。だから………だからこそ……死で………死でェェェェェェェェ!」

 その瞬間、雨が降り、風見は笑い、泣いた。

 「ウワァァァァァァ!アーハッハッハッハッ!…………………アァァァァァァァ!」

 その雨は、風見の心を表しているようだった。

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