暴露屋〜社会的に殺す情報屋〜

蔵品大樹

第一部 藤絵戦争

File1 東澤雅夫

 俺は九鬼泰照くきやすてる苑頭えんとう町という繁華街で店を構える情報屋だ。

 俺は、とある店を経営している。それは、『暴露屋』だ。

 暴露屋とはなにか?それは単純明快。ただ単に秘密をマスコミやネットにリークするだけの仕事だ。要は対象者を社会的に殺すのだ。

 勿論、この仕事は楽じゃない。勿論、危険もある。なので、俺はとある暴力団から中堅組員を2人位貰っている。

 その暴力団というのは、苑頭町をシマにする、藤松会である。

 そう、彼らは、情報屋と暴露屋という仕事を与えてくれた、恩人であった。

 なので、俺は恩を返すために一生懸命働いている。




 今日も暴露屋に依頼者は訪れる。

 依頼者は、70代の女性で、名を岩野美智代いわのみちよといった。

 「では、依頼内容をどうぞ」

 「はい。息子にパワハラを働いたのに、堂々としている社長を堕としてください」

 依頼の内容はこうだった。

 岩野の息子、岩野翔哉しょうやは、とある大企業の社員の一人だった。

 その大企業の名は『東澤ホールディングス』。そして、その社長である東澤雅夫ひがしざわまさおは、ある社員を虐めるという癖の強い性格だった。

 そして、虐めていた社員というのが、岩野翔哉というのだ。

 暴力や精神攻撃を行い、最終的に彼を自殺に至らせた。

 しかし、この事は世間に晒されず、今でも東澤は、有名社長として、名を馳せているという。

 この事を、なんと社長本人から言われたのだとか。

 「アイツは、誇るように私に言いました。お願いします。アイツを堕としてください!」

 「わかりました。では、今の情報を元に、アイツを堕としてみせます」

 岩野氏を帰らせると、俺は東澤について詳しく調べ上げた。

 東澤雅夫。50歳。先程言った通り、東澤ホールディングスの社長である。彼には幼き頃から『何かを虐めたい』という衝動にかられていて、何かを虐めないと、蕁麻疹ができるほどの性格である。被害者は大勢いて、その中に岩野翔哉がいる。さらに、被害者が死んだあとも用意周到で、警察に金を払い、この事を無かった事にしている。

 俺は早速、マスコミにそれらをリークした。

 すると、早々にマスコミの奴らはそれらを報道してくれた。まぁ、少し脚色されていたが。

 それから、東澤はというと、この事を世間に暴露されたおかげで、失脚したという。まぁ、今までいい思いをしてきたんだから、自業自得だ。




 次の日、夜道をボディーガードである藤松会の中堅組員、比嘉哲巳ひかてつみ伊波章いなみあきらを連れて、歩いていた。

 すると、目の前からボロボロの衣服を着た東澤がやって来た。

 「テメェが、テメェがマスコミにリークしやがったな!そのせいで失脚して、俺を気に入っていた女は離れていった!キシャーーー!」

 懐からナイフを出すと、こちらに特攻してきた。しかし、比嘉と伊波は、こんなナイフでは怯えない。

 「何やっとんじゃぁ!」

 比嘉が東澤のナイフの持っている方の腕を掴むと、膝蹴りでそれを折った。

 「ぐぎゃぁ!」

 次に伊波が顔を殴った。

 「オメェが悪いんだろうが!」

 そして、東澤は倒れた。

 「全く、自分が悪いのに、逆恨みで襲ってくる奴もよくいますよね」

 比嘉がため息をつくと、組に電話をした。

 「取り敢えず、九鬼さんを襲ったやつなんで、親父に言っておきます」

 俺は二人に言った。

 「この世には明かされていない悪の秘密がある。それを暴露するのが、俺達、暴露屋の仕事だ」

 「わかりました。では、俺達は事務所の方に帰りますので、お先にどうぞ」

 「じゃあ」

 俺は月夜を照らす、夜道を歩いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る